■現行の7割超がPHEVでの登録 新型はPHEVのみの設定になる!?
気になるのはエンジンだ。2021年2月に北米で発売された新型アウトランダーは、新開発された2.5Lノーマルガソリンエンジンを搭載する。このエンジンは、同じく海外ですでに発売されたローグ(エクストレイルの姉妹車)と共通だ。
ただし販売店が述べたとおり、2.5Lノーマルエンジンは日本仕様の新型アウトランダーには搭載されず、PHEVのみになる可能性も高い。
予想を裏付けるのは、アウトランダーの国内販売状況だ。2020年に国内で登録されたアウドランダーの内、75%をPHEVが占めた。ノートも先代型のe-POWER比率は75%で、新型になってノーマルエンジンを廃止した経緯がある。
また三菱の場合、国内の販売店舗数は約600箇所だ。業務提携を結ぶ日産の約2100箇所に比べると30%弱の規模だから、エクストレイルに比べて登録台数も少ない。PHEVのみの設定にして、効率を高める可能性も高い。
販売店でも「アウトランダーは三菱の上級車種だから、PHEV専用車にして、イメージリーダーにする方法もある」と述べている。
■車種ごとに狙いを明確にする効果も
三菱にはSUVの車種数が多い。アウトランダーに加えて、従来型アウトランダーと共通のプラットフォームを使うエクリプスクロス、発売から11年を経過したもののコンパクトSUVのRVRもある。ラインナップの重複を避ける意味でも、アウトランダーをPHEV専用車にする方法が考えられるだろう。
また新型アウトランダーのボディサイズは、全長4710mm×全幅1860mm×全高1750mmだ。このサイズには、RAV4、CX-5、フォレスター、共通のプラットフォームを使う次期エクストレイルも含めて競争相手が多い。
そうなると販売店舗数の少ないアウトランダーとしては、車種の個性化を図る必要があり、PHEVに特化したほうがユーザーから見てもわかりやすい。
その代わりアウトランダーPHEVは価格帯が高い。現行型でも440万~530万円だから、装備の充実によってさらに価格は高まる可能性もある。
そこで重要になるのが、下側の価格帯を受け持つエクリプスクロスだ。1.5Lターボのラインナップを強化して、アウトランダーとは違う割安感を強めたい。そうなれば車種の個性も明確になり、ユーザーも選びやすい。
つまり新型アウトランダーとエクリプスクロスを別々の存在と考えるのではなく、ユーザーが用途、好み、予算によって選べる「三菱SUVシリーズ」として連携させるわけだ。RVR、デリカD:5、eKクロス、eKクロススペースもそこに含められる。
■電気自動車で培ったノウハウは4WDとも相性が良い
以上のようにPHEV専用車となる新型アウトランダーの登場と併せて、三菱SUVラインナップの訴求方法も見直せば、三菱車全体で売れゆきを伸ばす余地も生じる。
特に今後は電動化に向けたユーザーの関心とニーズが高まる。三菱は以前から、プラグインハイブリッドとi-MiEVにより、電気自動車を商品化してきた。
その一方で三菱には、かつてのジープ、パジェロに始まった4WD(4輪駆動)技術でも長い実績がある。
モーターは駆動力の綿密な制御が行いやすく、4WDを組み合わせると、エンジン駆動の車両以上に優れた走行安定性を得ることもできる。電動化と4WDは親和性の高い技術で、その成果を満喫できる象徴的な車種が新型アウトランダーだ。
PHEVに特化される新型アウトランダーの売れゆきは未知数だが、エクリプスクロスを筆頭に特別仕様車の設定なども含めて三菱車全体のラインナップを効果的に見直せば、業績を高めることは可能だ。
逆に新型アウトランダーだけが優れたクルマにフルモデルチェンジされても、ほかの車種との相乗効果が得られないと、目覚しい効果は期待できない。三菱の総合力が試されている。
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