■ウェットコンディションの中着々と順位を上げる角田選手
そして、いよいよ決勝日。前日から予報があったとおり、サーキットには冷たい雨が降り注いでいます。2戦目して初のウェットコンディションになったエミリア・ロマーニャGP。しとしとと降る雨に打たれる20台のマシンは、荒れたレースを予感させる気配が漂っています。
赤く点灯したシグナルがブラックアウトすると、各マシンの後方から一気にウォータースクリーンが立ち上がり、レースがスタート。
水のベールから真っ先に飛び出して来たのは、3ワイドに並びかけた上位3台。その中でも、レッドブルのフェルスタッペンの蹴り出しが良く、早速1周目でハミルトンを押さえ、トップに立ちます。
その際、軽い接触があり、ハミルトンのフロントウィングのパーツが飛んでいきました。現代のF1は空力が繊細なので、こういった小さな損傷でもラップタイムに大きく響きます。その影響もあり、マックスがトップに立つと、あっという間にハミルトンを引き離し、集団をリードする形になりました。
後方では、ウィリアムズのラティフィとハースのマゼピンが接触して、SCが入るなど、混乱が起きています。角田選手はそれらに巻き込まれることなく、着々と順位を上げているようです。
■ドライで勝負か!? 見所たっぷりタイヤ交換の駆け引き
そして、レースが大きく動き始めたのは、レースの3分の1が過ぎた頃。路面が徐々に乾き「ドライタイヤに交換するかどうか」という各チームの駆け引きが始まりました。
まずは、下位チームが逆転を狙って先にドライタイヤを投入。そして、中位〜上位チームで真っ先に動いたのは、角田選手でした。彼も後方からの追い上げになってしまったため、チームが賭けに出たのでしょう。
そして、その直後、先にドライタイヤに交換していたアストンマーティンのベッテルがファステストタイムを記録。
上位チームも、「ここでタイヤ交換を出遅れたら、負ける!」と判断したのか、バタバタとドライタイヤを用意し始めます。
トップだったマックスは無線で「スリックタイヤで走れるのは、一本のラインしかないよ」と伝えていましたが、チームオーダーによりピットイン。それにメルセデスも続き、あっという間に全チームがドライタイヤを装着しました。
全車タイヤ交換を終えた後は、ファステストタイムの奪い合いが続きます。どうやらレコードラインは、十分スリックタイヤで走れる様子。
「どのドライバーも、路面の感触を掴んだのかな」と思った矢先、黒いマシンがグラベルに飛び出して壁に接触!「メルセデス?!ボッタスかな?」と見ると、なんと、それは絶対王者のハミルトンではないですか!
最近では、ハミルトンのスピンする姿すら見たことがないのに、ましてやクラッシュなんて、いつぶりのことでしょう。「ハミルトンですら苦戦するこの路面で、何も起こらないわけがない……」と思った直後、今度はボッタスとラッセルが大クラッシュ!
どうやらラッセルがボッタスに対してオーバーテイクを仕掛けたものの、濡れた路面に追いやられ、グリップを失ってスピンしたよう。マシンの回収とデブリ除去のために赤旗中断となりました。
赤旗により、全車ピットロードに戻ると、角田選手は最下位から10位まで上がっていて、なんとポイント圏内に。
大きなクラッシュにも巻き込まれず、順位を上げた角田選手を見て、「予選で学んだことを活かして、しっかり確実に走っているのだろうな」という印象を受けました。
最下位スタートということを考えると、ポイントが獲得できる位置まで追い上げられたという点で、今回のGPでの役目はほぼ果たせたのではないでしょうか。だからこそ、まさかこれ以上の無茶をするとは、全く予想していませんでした。そう、赤旗明けにまだ波乱が待っていたのです……。
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