まさかの「インフィニティエンブレム」
記憶に新しい出来事が(といっても6年も前のことだが)、2015年のマイナーチェンジでエクステリアデザインを大幅刷新、そのタイミングでINFINITI(インフィニティ)エンブレムとなったことだ。
前年にデビューしたV37型スカイラインと合わせてのことだったが、2019年12月の改良により、再び日産エンブレムへと戻された。ごく一部の日産ファンが憧れていた、「インフィニティ」のエンブレムにすることで、販売台数の向上を図ったものと思われるが、そんな日産の思惑はあえなく撃沈、逆に「迷走」と揶揄される出来事となってしまった。
ライフ途中で2度のビッグマイナーチェンジを行いつつ、国内では12年目に突入しているY51フーガだが、北米で販売されているフーガのインフィニティ版「Q70」は、2019年末に、とうとう販売終了となってしまった。Eセグメントの高級セダンが10年もモデルチェンジをせずに並べられていると、ブランド価値に悪影響を及ぼす、との判断からであろう。
日産は「苦い思い出」に縛られている
同じFRプラットフォームを使い、7~8年スパンでモデルチェンジをしていたスカイラインに続いて、フーガも2017年ごろには新型がデビューしていてもおかしくはなかった。なぜ日産は次期型フーガを出さないのか。
その一番の理由はやはり、「新車開発の投資に見合う利益が見込めない」と日産が判断していることにあろう。日産には「倒産すれすれ」となった苦い思い出がある(いまもピンチだが)。そのため、「絶対に損をしないビジネスをする」という思いが強い。
しかも、「売れていない」過去から「売れ高」を予測するので、ポジティブなビジネスモデルなど出てくるはずもなく、細々とでも売れ続けるのならば、そのまま放置しておこう、となるのだ。フーガやエルグランド、マーチなど、主力でないクルマのモデルライフが異様に長いのは、そういうことである。
日産で開発担当の一人だった筆者は、こうした実情をまさに身をもって経験してきた。「次期型を作りたい」という志を持ったエンジニアは社内に沢山いるし、開発する能力もある。でも、「リスクを背負ってでもチャレンジする勇気」が、日産社内には湧き起らない。それこそが課題だった。
しかし日産は、昨年5月に「事業構造改革計画/NISSAN NEXT」を発表以降、新型車やその情報を続々と発表している。再び崖っぷちに立たされ、いまは社内の雰囲気も変わっているのであろう。しかし、フーガにとっては「時すでに遅し」という状況だ。
ラグジュアリーEVセダンを目指してはどうか
セド・グロの系譜を継いだフーガは、「大排気量のマルチシリンダーエンジンを積んで、なおかつ、後輪駆動セダンでないとダメ」、と考える方もいるだろう。
しかし、どんな素晴らしいクルマをつくったとしても、そもそも「セダン」というボディ様式が世間受けしなくなっている。次期型フーガが今のまま「大排気量のマルチシリンダーエンジンの後輪駆動セダン」で登場する可能性はないに等しい。
ここはひとつ、フーガには日産が大事に磨いているEV「アリア」をベースにした「ラグジュアリーEVセダン」を目指してほしい。電動技術を駆使して、古典的な後輪駆動のフィーリングのEVを生み出すのだ。
これとて大ヒットは見込めないが、日産の名門「フーガ」の最後の花道を飾ることくらいは、できるかもしれない。
編集部註/フーガを全グレードEVにするなら、ぜひとも大容量バッテリーを搭載したグレードを設定し、「グランツーリスモアルティマ」と名付けてテスラよりも速くて長距離走行可能なバリバリのスポーツサルーンを作ってほしい。
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