バスやトラックの後退時音も「自主的なもの」
また、バスやトラックが後退する際に、車外で聞こえる「バックブザー」についても、実は明確に定められているものではなく、安全のためメーカーが自主的に備えているものです。
しかしながら近年は、音量が小さくなっていたり、そもそも鳴らない車両も増えてきているようです。その理由は「近隣への騒音対策」。早朝や夜間に作業を行うこともあるトラックでは、近隣から苦情が寄せられることもあるそうです。しかし、この動きに待ったをかけた自治体があります。徳島県です。
徳島県で、「車両後退時の警報音、使用義務付け」条例が成立
「バックブザーの使用義務化」条例が徳島県で成立したのは2015年12月のこと。きっかけとなったのは、徳島県内で起きた悲惨な事故でした。
全盲の男性と盲導犬が、後退してきた2トントラックにはねられ、男性は死亡。一緒にいた盲導犬も犠牲になりました。トラックは警報装置のスイッチを切っていたため、バックブザーが鳴らなかったようです。
この死亡事故を受け、県議会本会議にて全会一致で可決し成立。条例の名は「障がいのある人もない人も暮らしやすい徳島づくり条例」として、2016年(平成28年)4月より施行されました。当時の徳島県による説明では、車両後退時の警報音の使用義務付けは全国初とのこと。
この中では、「県民及び事業者は、障がいのある人の通行・歩行の安全を確保するため、自動車にその存在や接近を歩行者等に知らせる音を発する装置(自動車の後退時に音を発する装置を含む)が搭載されているときは、その装置を使用してください」とされています。
ハイブリッド車(EV走行中)やEVは、走行音が静かなため、周囲に車両接近を知らせるため、走行時に「フィーーン」という音を発生させていますが、この条例では、バックブザーの他にも、このような電動車が近づくのを知らせる「車両接近通報装置」も想定されています。ただし、装置の設置義務化ではなく、「装置が付いているクルマのみ」が対象となります。罰則規定もありません。
徳島県によると、警報装置は多くのトラックに設置されていますが、夜間には騒音になるとして、駐車場に面した住民からクレームを受けることも多くあるようで、やむなくバックブザーをカットするケースがあったそうです。
しかも、カー用品店では、後退時に音をカットするアイテムも販売されており、容易に手に入れることができてしまうのです。
安全対策には必要
乗用車のリバース音は、「ヒューマンエラー対策」、トラックやバスなどのバックブザーは、「車両の周囲への安全対策」と、目的は違いますが、どちらも安全を考えての装備です。
乗用車の場合、MT車やちょっと前の輸入車に乗っていた方だと、リバース音は「うるさくて煩わしい」とか、「かっこわるい」と感じるかもしれません。
しかし、いつどんなミスを起こすかわからないのが人間です。リバース音には「事故を1件でも減らしたい」という自動車メーカーの思いが込められていることを覚えておいていただきたいです。
【画像ギャラリー】事故ゼロの社会が見えてきた!! 世界初で初めて レベル3の自動運転を実現した「ホンダセンシングエリート」をクイックチェック!!
コメント
コメントの使い方マンションなどで鳴らされると非常に迷惑です。
安全対策という言い訳で迷惑行為が許容されるわけではありません。