最近は各メーカーともに、環境技術や自動運転への対応を迫られている。その結果、新型車の開発に投入できるコストが以前に比べると相対的に下がった。車種数を抑えて、フルモデルチェンジをおこなう周期も延びている。デザインの進化は以前に比べて安定期に入り、外観の変化が乏しくなったことも影響している。
そこで大切になるのがマイナーチェンジや特別仕様車の設定など、商品力を保つテコ入れだ。改善などを加えずに放置すれば、時間の経過に伴って魅力が下がり、売れ行きも低下していく。
逆に効果的なテコ入れを行うと、売れ行きを大幅に増やすことは無理でも、下降を抑えたり、若干のプラスに転じさせることは可能だ。
定期的な改良で衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備、運転支援機能、燃費などを向上させれば、フルモデルチェンジをしなくても売れ行きを保てる。このテコ入れ方法について、各メーカーの特徴を探りたい。
文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUBARU、MITSUBISHI、SUZUKI、DAIHATSU
【画像ギャラリー】特徴やコンセプトも見え隠れ!? テコ入れで探る各社の方向性
■多くの車種に改良施すトヨタと人気車集中の日産
●トヨタ
以前はテコ入れを行わない設計の古い車種も見られたが、最近の数年間で、ポルテ&スペイド、プレミオ&アリオン、マークX、エスティマ、プリウスαなどを廃止した。
従って今では、もともとフルモデルチェンジの周期が長い悪路向けSUVのランドクルーザーや同プラド、商用車を除くと、発売から10年を超える車種はほとんど見られない。設計の古い車種を廃止して、新しい車種に専念することも、最近のトヨタのテコ入れ方法といえるだろう。
それでもアクアは、2021年末に発売から10年を迎える。運転支援機能は装着されないが、衝突被害軽減ブレーキは追加された。残されたクルマには、相応の改良を行って商品力を維持している。
●日産
最近は全般的に設計の古い車種が増えた。特に2008年に発生したリーマンショックによる世界的な不況を受けて、2011年以降は新型車が減っている。
その結果、設計の比較的新しい登録車のノート、セレナ、キックス、軽自動車のデイズとルークスの新車販売台数を合計すると、直近の2021年1~3月に国内で売られた日産車全体の73%に達する。実質的にこの5車が日産の国内販売を支えているわけだ。
そのために残りの27%に含まれるほかの車種は、あまりテコ入れを受けていない。フーガの登録台数は月平均で約70台、シーマは10台くらいまで落ち込んだ。マーチは2010年の発売だが、衝突被害軽減ブレーキを装着したのは2020年だ。
この安全装備は2015年頃には軽自動車やコンパクトカーまで普及していたから、マーチは対応が遅く売れ行きを下げた。今の登録台数は1000台弱だ。
エルグランドは2010年に発売され、2016年頃までは比較的頻繁に改良を行って特別仕様車も設定したが、近年は滞りがちだ。それでも2020年になり、フロントマスクを変える改良を実施した。
以上のように売れていない車種では改良も滞るが、販売の好調なデイズやルークスは、安全装備なども先進的だ。セレナも2016年の発売後、頻繁に改良を受けている。ノートとキックスは新型車になる。
つまり売れ筋の5車はフルモデルチェンジを含めてテコ入れを活発に行うが、ほかの車種は冷淡に扱う。例外はGT-Rで、性能を常に高める必要があるスーパースポーツカーから、登録台数が少ない割には改良を頻繁に実施する。
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