■人気車以外にもテコ入れは活発なホンダ
●ホンダ
以前のホンダはスポーツカーの印象が強かったが、今は「小さなクルマのメーカー」だ。国内で新車として売られるホンダ車の50%以上が軽自動車で、2021年4月に限れば57%に達した。そこにフィットとフリードの登録台数を加えると約80%になる。つまりほかの車種は、すべてを合計しても、国内販売比率は20%以下だ。
売れ行きが下がった車種のテコ入れは入念とはいえないが、ステップワゴンは、エアロパーツを装着したスパーダに特化してハイブリッドのe:HEVを加えた。オデッセイも最近の売れ行きは1か月に1000台弱だが、2013年の発売以降、2~3年に一度の割合で改良を実施している。特別仕様車もある。
つまりホンダの国内販売は、軽自動車+フィット+フリードに特化されてほかの車種は低調だが、その割にはテコ入れを比較的順調に行う。従って販売に積極的になれば、登録車の比率を高められる。
■少数精鋭ゆえ独自のテコ入れ策を採るマツダとスバル
●マツダ
2012年に発売された先代CX-5以降のマツダ車(OEMを除く)は、すべて魂動デザインとSKYACTIV技術に基づいて開発される。プラットフォームはボディサイズや車両重量、駆動方式の違いに基づいて複数のタイプを用意するが、基本的な考え方は共通だ。
従って1車種が新しい機能を採用すると、それをほかの車種にも展開できる。このメリットを生かしてマツダ車はテコ入れを頻繁におこなう。
例えばCX-5は、2016年12月に発表された後、2017年、2018年(2月と10月)、2019年、2020年に改良を実施した。2018年2月には、発売から約1年後なのに、クリーンディーゼルターボの動力性能を向上させる規模の大きな改良を行った。
こうなると先に購入していたユーザーは不満を持ち「マツダ車はいつ買えば良いのか分からない」という話にもなる。
それでも改善を頻繁に施すのは、ユーザーにとって大きなメリットだ。理想をいえば、CX-5は7月頃という具合に、テコ入れの時期をスケジュール化するとわかりやすい。後述するスバルでは、そのようなパターンになっている。
●スバル
ほかのメーカーに比べてスバルは規模が小さく、国内の販売台数は、乗用車メーカー8社の中で7位だ。OEM車を除くとエンジンはすべて水平対向4気筒で、プラットフォームの種類も少ない。
そのためにマツダと同様、新しいメカニズムが開発されると、ほかの車種にも採用しやすい。改良も頻繁に実施される。
例えばインプレッサは、2016年10月に現行型を発表した後、2017年9月、2018年10月、2019年10月、2020年10月に改良を実施してきた。上記のとおり改良時期が10月でほぼ決まっているから、ユーザーや販売店もわかりやすい。「いつ買えば良いのか分からない」という不満が生じにくい。
ちなみにスバルは以前から、大半の車種において、生産を終える直前まで改良を実施していた。マイナーチェンジでエンジンを載せ換えることも多い。この背景には、フルモデルチェンジの時にエンジンまで変更すると開発費用が高騰する事情もあるが、改良を頻繁におこなうから時間を経過しても売れ行きをあまり下げない。
この綿密な商品改良は、車種の少ないスバルが生き残るための大切な戦略で、なおかつ車種が少ないからこそ成り立つ戦い方でもある。
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