EVに寿命があるけれど 急速充電器に寿命はないのか? 自家用の最良の選択は何か!?

■急速充電器を複数設置した充電スタンドが少なすぎる!

 話をEVスタンドに戻そう。現在でもEVスタンドの設備費用には補助金が支給される制度が続けられている。それでも全体として拠点数が減っているのは、設置したもののあまり利用されておらず老朽化してしまったのでは、修理費用を費やして維持するのは自治体などでは難しい。

 またそれなりに使われていたため故障してしまったが、修理費用を捻出できずにそのまま放置され、結果として閉鎖という状況になってしまったのも、残念だが納得できるものだ。これまでは補助金もあったことから、まずは設置して利用状況を確かめるしか、設置する必要性が見つけにくかったのだろう。

 利用者が少ないところにEVスタンドを設置するのは先行投資としても無駄が多いから、これまでのデータを活かしながら必要な地域に資金を集中的に費やすべきだろう。そして日本の充電スタンドでは急速充電器、それも複数のEVを一度に急速充電できる施設があまりにも少ないことが目下の問題点ではないだろうか。

 全国のユーザーで充電スタンドの情報を共有するサイト「GoGoEV」によれば5月17日現在で普通充電は日本国内に1万3802カ所、急速充電は7785カ所あるとされているものの、急速充電器を複数設置している充電スタンドは、わずか598カ所しかないのである。

急速充電スタンドの大半は写真のような単独でポツンと設置されている。 EVが普及すれば、電欠防止のため、複数台が設置される大規模施設の拡充が急務だ(Yoshinori-Okada@Adobe Stock)
急速充電スタンドの大半は写真のような単独でポツンと設置されている。 EVが普及すれば、電欠防止のため、複数台が設置される大規模施設の拡充が急務だ(Yoshinori-Okada@Adobe Stock)

 コインパーキングなどに設置されている普通充電器は、時間が掛かったほうが駐車場側は駐車料金として回収できるから好都合なのだろう。利用者も短時間ではなく2時間程度は止めて充電するつもりであれば、充電と駐車場利用が同時にできるのだからコインパーキングを利用する価値はある。

 しかし、自宅に充電設備を持てないドライバーの場合、近隣に急速充電器がなければ、まずEVを選択することは現実的ではない。自宅敷地内に駐車場を持っているドライバー、あるいはクルマ通勤で勤務先に充電器が設置されているようなドライバーしかEVを選べないような環境はまず改善しなければ、普及は望めないのだ。

 水素ステーションはそう簡単に規制緩和できない(それでも何度か規制は緩和されている)が、充電ステーションは規制緩和や補助金事業により普及を促すことが比較的容易だ。2台目以降の急速充電器は設置費用を100%補助金でカバーする、といったような大胆な施策をブチ上げない限り、EVの普及率を高めることは難しい。自動車メーカーがいくら素晴らしいEVやプラグインハイブリッド車を発売しても、買えないユーザーが続出することになるからだ。

 電源構成や送電網などの問題はあるにしても、急速充電器が足りな過ぎる今の状況では、ハイブリッド車以上の電動化を推進する計画なんて、絵に書いた餅でしかないのである。

■普通充電でも100Vと200Vではまったく利便性が違う

 自宅で充電する環境を確保できるなら、これからはEVも選択肢に入ってくるだろう。一般家庭用の電力は交流100Vだと思われているが、実は配電盤の結線の仕方によって200Vを供給することもできるようになっている。ブレーカーを独立させれば、1つの契約でも単相の100Vと200Vの2種類の電圧が利用可能なのだ。この200V電力は、電力会社に申し込んで簡単な配線工事をしてもらえば利用することができる。

 この200Vを利用することにどんなメリットがあるかと言えば、8畳以上の部屋のエアコンであれば100V電源よりも200V電源のほうが効率がよく、電気代が安くなる。それとEVやプラグインハイブリッド車を自宅で充電する場合、200Vにすると100Vの半分以下の時間で満充電に達する。比較的バッテリー容量の大きい日産『リーフe+』でも7時間程度でほぼ蓄電ゼロ表示から満充電に達する。

 テスラ車の場合、200Vで専用のウォールコネクターを自宅に設置した場合、10時間充電しても満充電にはならないが、そもそも毎日走って使い切れるバッテリー容量ではないから、長距離走行する時には途中で急速充電器を使えばいいだけだ。

テスラ専用の200Vウォールコネクター。テスラのオーナーとなれば、設置は必須。他社のEVに乗り換えたり、老朽化すれば交換となるのだろうが、その費用もEVに乗る為の経費として考慮する必要がある
テスラ専用の200Vウォールコネクター。テスラのオーナーとなれば、設置は必須。他社のEVに乗り換えたり、老朽化すれば交換となるのだろうが、その費用もEVに乗る為の経費として考慮する必要がある

 1時間の充電で40kmを走行できるだけの電力を充電できるのだから、自宅駐車場で保管中に充電するのであれば十分な環境だ。自宅での充電は充電器ではなく単にコンセントとケーブルを使うだけなので、設置費用はそれほど嵩まないし、故障(EV側の故障は別だ)する可能性もほとんどない。

 また大容量バッテリーを搭載したEVを購入したいオーナーの中には、自宅に急速充電器を設置したい、と思う人もいるだろう。しかし急速充電器を自宅に設置するのはちょっと現実的ではない。

 確かに急速充電器を自宅に設置できたら便利だと思うだろうが、デメリットも少なくないからだ。1つは日常的な急速充電の多用は、バッテリーの寿命を縮めることになる。自宅に充電設備を持てないなら仕方ないが、自宅でゆっくり充電できる環境があるのなら、普通充電のほうがバッテリーに優しく長持ちする。

 急速充電器自体は100万円を切るモノも登場しており、設置費用も含めて補助金支給の対象になるが、単相200Vでは富裕充電の200Vより少し速くなる程度で、最低でも三相200Vの契約をする必要がある。 これは基本料金も一般的な従量電灯の契約より高い(その分、従量部分は安いが)ため、契約も二口になって電気料金は高くなる。そして冒頭のとおり、10年程度でクルマだけでなく、急速充電器も買い替えることになってしまうのだ。

【画像ギャラリー】EV時代の到来に逆行? 国内の充電設備減少で見えてきた、充電器にも寿命がある現実

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