■人馬一体を実現したマツダ ロードスター
そのなかで誰もが魅力的だと絶賛するのがマツダのロードスターである。
キュートなデザインに、スポーツカーのアイコンでもあるリトラクタブル・ヘッドライトを組み合わせた初代のNA型ロードスターは、1989年夏に登場した。そのデビューは衝撃を持って迎えられている。当時の自動車界のファッションリーダーだったし、メカニズムも一流だったからだ。
アメリカを中心に安全基準が大幅に強化されていた時期に、フルオープンのロードスターが発売されたのだから驚かされた。しかもFF方式が主流となっている時代に、走りが楽しいFR方式を採用している。
ユーノスブランドの大役を任されたロードスターは、さまざまな工夫によって「人馬一体」の気持ちいい走りを実現していた。
その概要について、ちょっとおさらいしてみよう。ロードスターは多くのクルマと同じようにモノコック構造を採用しているが、駆動系の周囲にはパワープラントフレームを採用してオープンカーのウイークポイントだった剛性をアップした。
また、軽快なハンドリングを実現するために4輪にダブルウイッシュボーンのサスペンションを採用している。
それだけではない。50対50の前後重量バランスと慣性モーメントの低減も図った。ブレーキはフロントにベンチレーテッドディスクを採用した4輪ディスクだ。
940kgの軽量ボディだから、ワインディングロードではヒラリと向きを変え、意のままの楽しい走りを存分に楽しめる。これは中古車しか買えない30年後の今でも変わらないだろう。
エンジンはB6型と呼ぶ1597ccの直列4気筒DOHCでスタートした。嬉しいのはレギュラーガソリン仕様だったことだ。トランスミッションは5速MTだけの設定だったが、90年2月に4速ATが加わっている。
そして93年夏のマイナーチェンジで1839ccのBP-ZE型DOHCエンジンに換装した。なお次期型のNBでは再び1600シリーズが復活し、好みによってエンジンを選べるようになった。
NA型ロードスターは、廉価グレードが170万円からのスタートだった。買いやすい価格設定だったこともあり、スポーツカーを敬遠した人も食指を伸ばしている。
当然、スポーツカー王国のアメリカを中心に、海外でも大ヒットを飛ばした。NA型ロードスターは8年間に43万台以上の生産台数を記録し、ギネス記録を塗り替えている。だから中古車は探しやすいはずだ。
ボディや内装などの新品パーツはすでに底をついているから程度のいいクルマを探したほうがいいだろう。だが、専門ショップなどが中心になって中古品を再生したり、自作したりしてユーザーの期待に応えている。エンジンなどのパーツはまだ手に入るようだ。
また、マツダも熱狂的なファンとオーナーのために復刻パーツを再生産するようになり、レストア事業も開始した。最近は新車と見紛うばかりのピカピカに輝いているNA型ロードスターも珍しくない。
■親子二代でロードスターライフを楽しむオーナーも
最近のクルマは個性が薄いといって、古いロードスターに乗る若いオーナーも増えてきた。親子でロードスターライフを楽しんでいるオーナーも多いようだ。
ロードスターミーティングには1000台以上のロードスターが全国から集まってくる。こういったクラブミーティングに参加できるのも、ロードスターのいいところだ。マニア同士でロードスター談義に花を咲かせることができるし、パーツなどの情報も得やすくなる。
ロードスターは温かみがあり、設計者の熱い思いが感じられるスポーツカーだ。デザインは個性的でキュートだし、扱いやすいボディサイズも魅力と感じる。
流石にM2からリリースされたコンプリートカーのM2 1001とM2 1002、M2 1028は限定発売だから手に入れるのは難しい。が、カタログモデルなら、それほど苦労しないで手に入れることができるだろう。
ただし、改造されて荒れたクルマも多いから、購入するときは時間をかけて程度のいいロードスターを探したほうがいい。
また、最近は80年代の旧車がブームになり、買いたい人が増えているから販売価格は値上がり傾向だ。ホンダS660も、生産終了を発表した途端、中古車が値上がりした。買う時期や買うタイミングを知ることは難しいが、いいクルマを見つけられれば、人生のよきパートナーになってくれるはずだ。
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