“2強”エブリイとハイゼットの違いは?
まず、現行エブリイは2015年2月に発売され、その後に小規模の改良を受けてきた。対する現行ハイゼットカーゴは2004年12月発売と古いが、2017年11月に大規模マイナーチェンジを行った。
なかでも最も注目されたのは安全装備で、2個のカメラをセンサーに使うスマートアシストIIIを採用。衝突不可避の時は緊急自動ブレーキを作動させる。作動速度の上限は車両に対しては80km/h(警報は100km/h)、歩行者は50km/hだ。
エブリイも緊急自動ブレーキを装着できるが、赤外線レーザーだけをセンサーとして使う簡易型。そのために歩行者を検知できず、車両のみとなって作動速度の上限は30km/hと低い。安全装備はハイゼットカーゴが勝る。
エンジンは両車ともに自然吸気とターボを用意する。トランスミッションは、ハイゼットカーゴが4速ATと5速MT。エブリイはこの2種類に加えて1組のクラッチを使う有段式ATの5速AGS(オートギヤシフト)も選べる。
エブリイの5速AGSは燃費が良く、JC08モードは19.4km/L。4速ATの17km/Lよりも優れている。
そして、5速AGSはスズキの自社開発でもあるからコストが安く、車両価格はハイルーフ「PA」、「GA」の場合で4速ATは104万7600円、5速AGSなら103万1400円だ。
5速AGSは4速ATに比べると運転の仕方によっては変速時のショックは大きいが、価格が1万6200円安く燃費も良い。
ハイゼットカーゴのJC08モード燃費も2017年に改良され、ノーマルエンジンの2WDが4速AT、5速MTともに17.8km/Lとなる。エブリイとハイゼットカーゴの価格は激しい競争を展開するだけあって拮抗している。
スズキ、ダイハツが軽バン市場を独占する訳
そして、耐久性の高いシャシーやボディを備えながら、両車ともに価格が安い。装備がシンプルとはいえ、先に触れたように100万円少々の価格設定だ。
車両コストは、シャシー、ボディ、エンジンといった基本的なメカニズムに占める割合が大きい。
パワーウインドウやオーディオのような装備は大幅に安く、装備の充実する上級グレードほど、メーカーは1台当たりの粗利を多く取れる。
ユーザーから見れば、上級グレードは、中級や下級に比べると装備が充実する割に価格が安く思えるが、メーカーの製造コストではさらに安く装着されているので、上級グレードは買い得感を演出しやすい。
ところが、シンプルな軽商用バンでは、それができない。1台当たりの粗利は最小限度に抑えられ、販売店もディーラーオプション、諸費用などで稼いでいる。
そのため軽商用バンは、エブリイのグループと、ハイゼットカーゴのグループに分かれてしまう。スズキやダイハツのような販売規模がないと開発や製造が行えず、三菱も自社製造の軽商用バンはミニキャブミーブのみ。ミニキャブバンはエブリイのOEM車になった。
なぜホンダはN-VANを開発したのか
ホンダが専用の後輪駆動プラットフォームを備えたアクティバンを終了して、N-BOXベースのN-VANに切り換える理由も同じだ。開発と製造コストが見合わず、N-BOXと共通化した。
ただし、軽商用バンをN-BOXをベースに開発して、ユーザーから高い評価を得るのは難しい。ダイハツのウェイクをベースにした商用車ハイゼットキャディも、2017年度で1ヵ月平均104台しか売れていない。
そこでN-VANは渾身の開発を行った。ボンネットの内部にエンジンを収める方式だから、荷室長は販売店の情報によると1510mmにとどまる。
エンジンを前席の下に搭載するアクティバンが1725mm、エブリイとハイゼットカーゴが1900mm前後に達するのに比べると、短くなるのは避けられない。これは専用設計をやめて、乗用車と共通化させた決定的な欠点だ。
その代わり助手席まで含めて、運転席以外を真っ平らな荷室として使えるシートアレンジを採用。畳んだ助手席部分まで含めた荷室長は、ロールーフ仕様が2560mm、ハイルーフ仕様が2635mmときわめて長い。大人1名ならば体を伸ばして就寝できる。
さらにボディの左側はピラー(柱)レス構造とした。助手席のフロントドア後方と、リヤスライドドアの前方にピラーの役割を持たせ、前後のドアを両方ともに開くと開口幅が1580mmに達する。タントも同様の機能を備えるが1490mmだ。
コメント
コメントの使い方