■メルセデス・ベンツSクラス(W140)
バブル期は、Sクラスが大きく変貌を遂げた時代でもあった。
いぶし銀的な魅力で支持された2代目Sクラス(W126)からバトンを受け継いだ3代目Sクラス(W140)は、ボディサイズの拡大と押出の強いスタイリングによる新しい高級車像を描いたが、意外にも欧州では不評で短命に終わったモデルであった。
しかし、バブルに沸く日本では、その豪華さが支持され、歴代Sクラス同様に高い人気を誇った。特にV12搭載を意味する600SELのバッチは、贅の極みを意味し、Sクラスの中でも特別な存在であった。
現在、流通量は少なく、ネオクラシックの割に価格も安め。ここは、Sクラスらしいパワフルさを誇るV8やV12のエンジン車が狙い目と言いたいところだが、大排気量エンジンのため、維持費や修理費の負担も大きめとなる。そこでW140の狙いは、直6エンジン搭載の「300SE」、「S280」、「S320」だ。
これはエントリーグレードのため、実用性重視で購入したケースも多く、比較的大切に乗られてきたクルマが見られるからだ。こちらも、時々、低走行やワンオーナー車が出現することもある。但し、直6モデルは、右ハンドルが多いため、市場価値が上がることは、あまり期待しない方が良いだろう。
初代セルシオと3代目Sクラスの2台を挙げた理由は、いずれも世界の頂点にあったクルマにも関わらず、市場価格が手ごろなこと。そして、いずれも当時メーカーが惜しみなくコストをつぎ込んで開発したため、基本となる部分が比較的頑丈である点が挙げられる。
他の国内外の高級車は、現存数の少なさを考えると、維持はより困難となるだろう。ただし、いずれも30年選手であるため、大きな出費のリスクが付きまとう。車両価格同等、それ以上の修理費が係ることもあるだろう。
そのため、車両選びと信頼できるメンテナンス先の確保も重要。そのクルマへの情熱無くして、オーナーになることはできないだろう。しかし、乗り込めば、まさに愛車はバブルへのタイムマシンだ。良いクルマを見つけ、その雰囲気を味わってほしいと思う。
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