■技術プラス運転者の体力向上も
急アクセル時加速抑制機能は、運転支援技術として軽自動車まで広く搭載されている踏み間違い事故抑制制御システムがベースです。
アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いにより発生の確率が高まる事故を、自動運転技術を構成するビッグデータによって抑制するもので、不必要に踏まれた(≒踏み間違えられた)アクセルペダルの操作をキャンセル、車両はゆっくりと進みます。
これまでの踏み間違い加速抑制システムでは物理的に不可能だった、対象物が直近にない場合であっても、急アクセル時加速抑制機能は働きます。
具体的には、サーバー上に蓄積された走行データ(ビッグデータ)をもとに、踏み間違い推定アルゴリズムに基づいた不必要な急アクセル操作を検知し、被害の大きくなる暴走事故の抑制効果を狙います。
車載センサーとビッグデータの両面からシステムを働かせることができるため、精度が高く保たれる優位性があり、さらに新車装着だけでなく、既販売車種にも後付けが可能であることから、優れた汎用性が期待できます。後付け可能車種は現時点、限定的ですが、トヨタではこの先、搭載可能車種を増やすとしています。
こうした技術と共に、加齢による反応遅れや間違った操作を正すには、紹介した自動運転の要素技術をベースにした運転支援技術のサポートだけでなく、身体的な能力低下を緩やかにする筋力トレーニングが良いと言われています。なかでも、大きな筋肉がある足を鍛えることが効果的です。
運転操作は身体を使うことからスポーツに似ています。その意味で、心と身体の両面が健康であることが事故を遠ざける運転につながります。
■「自動運転」に対する誤解をとく活動も重要
ところで、統計データによると、日本は2007年に高齢化率が21%を上回り「超高齢社会」となりました。また75歳以上の後期高齢者のうち、定期的な更新を行っている高齢ドライバーの数は約600万人にのぼります。
現在、70~74歳までの高齢者が運転免許証を更新する際には、高齢者講習を受ける必要があります。75歳以上の方になると、高齢者講習のほかに認知機能検査が追加されます。
この認知機能検査では3段階の結果が示され、「記憶力・判断力が低くなっています」という判定結果が出た際には、専門医の診断が必要です。仮に認知症と診断された場合には運転免許の停止や取り消しとなります。
しかし、運転免許証の更新ができなくなってしまうと日常生活に支障を来すことも考えられます。
政府では現在、自動化レベル3の商品化を経て、近い将来に向けた無人小型バスなどMaaS(Mobility as a Service/サービスとしての移動体)領域での自動化レベル4技術の実用化を目指しています。
レベル4はインフラ整備が不可欠であることから実用化の難易度が高く、返納者が必要とする運行ルートが確保されるかどうかという課題も残りますが、こちらが実現すれば、運転免許証を返納された後の移動手段も徐々に確保されていくと考えられます。
さらにこの先は、こうした高齢ドライバーに対する講習のほかに、自動運転技術や運転支援技術の理解を深める教習制度の確立が必要であると筆者は考えています。
現行の教習制度で考えれば、自動運転技術の前段にあたる運転支援技術の教習追加が望まれます。その場合、技能/学科ともに第一段階から導入することが理想的です。
2014(平成26)年度からスタートした予防安全性能アセスメントの「衝突被害軽減ブレーキ」では、最終的に働く自律自動ブレーキ機能が真っ先に注目されたことから、“いつでも、どこでも、クルマが自動停止する”といった過信が未だに見受けられます。
また、実際に衝突被害軽減ブレーキが機能する前には危険を知らせる警報が発せられるわけで、その周知も依然として必要です。
その上で先進安全技術の類いが単独で昇華され、自動運転技術が形成される事実が広まれば、車載センサーの不得意分野を人が補う協調運転へと無理なく発展していくのではないでしょうか。
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