天才ゴードン・マーレイの作った3億5000万円の市販モデル T.50の全魅力【レースカーデザイナーが手掛けたスーパーカー】

スポーツカーの理想は変わらない? 30年後のリニューアル

 そんなF1の登場から約30年、マクラーレンを離れて自身の会社である「ゴードン・マーレイ オートモーティブ(GMA)」を設立したマーレイが作り上げたのが今回の主役・T.50だ。

 ゴードン・マーレイのキャリア50年と、通算50作目を記念したネーミングを持つT.50は、マーレイ自らがアナログスーパーカーと呼ぶマシンで、コンセプトや構造などは、初のロードゴーイングカーであったF1と多くの点で共通している。

 ドライバーシートはやはり車体の中央に着座し、その後ろに自然吸気式V12エンジンを搭載するのも同様だ。そのほかにも、リアにファンを搭載して車体下部の空気を引き抜き、ダウンフォースを発生させるシステムもマクラーレンF1のそれを踏襲している。だが、この30年の技術的進歩は、ゴードン・マーレイのプロデュースするマシンに多大な変革をもたらした。

 素材の大幅な進化により、最新T.50の重量は986kgに抑えられた。これはマクラーレンF1と比較して約150kgも軽いことになる。フォーミュラカーと同様のスタイルを採用したモノコックとボディはカーボンファイバー製で、必要十分な剛性を確保しつつ軽量化に成功。ライトウェイトはスポーツカーにとって重要な要素となるのは常識であり、これがT.50に抜群の加速力とコーナリング性能をもたらしている。

名車の意匠を引き継ぐ究極のアナログスーパーカー『T.50』―著名レーシングカーデザイナーが手がけたロードモデル―
キャビン中央にドライバーズシートが位置し、パッセンジャーシートは後方にオフセットされるかたちで両サイドに。このレイアウトはマクラーレンF1と同様だ

目的に応じた6つのモード。変幻自在の空力デバイス

 T.50のコーナリング性能を高める要素は軽量な車体だけではない。ボディ後部に搭載された直径400mmのファンによって発生するダウンフォースが車体を路面に押し付け、タイヤのグリップを大きく向上させている。加えてこのT.50では、6種類のエアロモードが選べるのも特徴となっている。それらのモードのうち、ハイダウンフォースモードでは、ファンの能力をフルに活用すると同時に後部スポイラーの角度が変化し、通常状態に比べて50%ものダウンフォースが得られる。

 反対にストリームラインモードで直線スピードを向上させ、ユニークなV-MAXブーストでは、ファンを駆動する48Vモーターの回転をドライブシャフトに伝えるとともにエンジンのラム圧をアップし、瞬間的には700psのパワーを発生させる。

名車の意匠を引き継ぐ究極のアナログスーパーカー『T.50』―著名レーシングカーデザイナーが手がけたロードモデル―
大型ファンで底部の空気を吸い出して車体を路面に押し付ける。1978年に実戦投入されるが、1戦1勝で退場したブラバムBT46B“ファンカー”がそのルーツ

 3.9リッターのコスワースGMA V12エンジンは、英国のレーシングエンジンコンストラクター・コスワース社がゴードン・マーレイ オートモーティブのために開発したもの。ターボチャージャーやハイブリッドシステムを使用しないピュア12気筒エンジンは、1万1500回転で663psを絞り出すパワフルなユニットだが、決してピークパワー追求型ではなく、日常使用でのドライバビリティも重視した特性に仕上げられている。最大トルクは467Nm(47.6kg-m)と強力で、大型のV12エンジンでありながら重量は178kgに抑えられる。これは他のスーパーカー用V12のどれと比べても群を抜いて軽い。

名車の意匠を引き継ぐ究極のアナログスーパーカー『T.50』―著名レーシングカーデザイナーが手がけたロードモデル―
レースで絶大な実績を誇るコスワース社が開発したT.50専用3.9Lリッター V12エンジン。十分な出力とスロットルフィーリングにもこだわって自然吸気方式を選択

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