「EVオンリー」なんてまだまだ不可能! 豊かな世界を残すためにいま私たちが考えるべきこと


■徹底研究 水素エンジン次世代パワーユニットの救世主となるのか⁉

 「内燃機関は××年以降販売禁止」という政策を、政府レベルで最初に打ち出したのは2017年のフランスとイギリスだった。

 ただ、この時は「2040年まで」という期限は区切ったものの、「内燃機関で走るクルマ」の定義はアイマイで、HEVやPHEVをどうするかという議論はまだ具体化していなかった。

 CO2問題はもちろん重要視されていたものの、欧州では都市部のNOX問題も深刻で、狭い意味での「大気汚染」対策という側面もあったように思う。

 ところが、それからわずか数年でクルマを取り巻く社会情勢は劇的に動いた。

 ご存じグレタ・トゥーンベリさんの国連地球温暖化サミット演説が話題になったのが2019年の9月。

 このへんが大きなターニングポイントで、これ以降は「ナニがナンでもクルマは電動化しなきゃいかん!」というムードが支配的となる。

 EV関連のニュースがTVや一般紙を賑わすようになるのも、これ以降と言っていい。

 そして、その波は去年ついに日本にも到達。

 政府として2050年にカーボンニュートラルを目指すという政策が発表され、自動車産業もそれに協力すべく脱内燃機関プログラムが動き出したというのが今の状況だ。

 その過程でわかったのは「世の中は理屈ではなく感情で動く」ということだ。

 “クルマは全部EVにしろ!”みたいな暴論に対して、自動車メーカーや我々専門誌メディアは「EVも発電所からCO2出ますよ」とか「内燃機関とEVにはそれぞれ一長一短があります」など意を尽くして説明を試みるのだが、そういう面倒臭い話はあまり聞いてもらえない。

 EVの「走行中のCO2排出ゼロ」というわかりやすさには勝てないのだ。

 CO2削減、それもひと目でわかるような劇的な効果を見せないと広く大衆に納得してもらうのは難しい。

 そういう意味では、EVの「走行中のCO2排出ゼロ」というわかりやすさに優るものはなく、「ウェル・トゥ・ホイール(WtoW)で考えよう」とか「ライフサイクルアセスメント(LCA)で見るべき」といった議論はほとんど一顧だにされない。

 日本の自動車メーカーは真面目だから、これまで一所懸命そういう説明を繰り返してきたのだが、それがまったく通用しないのにようやく気づいたのがここ最近。

 2021年は日本の自動車メーカーが「脱内燃機関」に向けて真剣に腹をくくった年、そう言っていいのではないかと思う。

■水素が脱炭素の切り札なのか⁉

 そこで、「だったらコレでどうだ!」と日本の自動車メーカーが切ったカードがFCV、それがボクの見立てだ。

 FCVは水素を燃料として「スタック」のなかで空気中の酸素と反応させ、それによって電気を起こして走る電動車の一種。

「EVオンリー」なんてまだまだ不可能! 豊かな世界を次世代に残すため私たちがいま考えるべきこと
水素燃料車として実用化されているのは燃料電池。水素と空気を反応させて電気を発生し、モーターを駆動して走るシステムだ。現行MIRAIは2代目

 水素と酸素の反応だから排出されるのは純水のみで、イメージ的にもこれ以上クリーンなエネルギー源はない。

 さらにバッテリーEVと同じ100%電動車ながら、水素ステーションさえあれば充電に時間を取られることなく、5分もあれば満タンになるのも魅力。

 この利便性を味わっちゃうと、常に電欠しないように気を遣うEVには戻りたくなくなる。

 これなら、グレタちゃんも満足してくれるんじゃないか。水素エネルギーには多くの人に共感してもらえるクリーンさがあると思う。

 ただし、水素燃料にも一長一短あって、燃料として貯蔵するには液体水素や圧縮水素としなければならず、これがそんなに容易じゃない。

 また、そもそも水素をどうやって製造するかも大きな課題で、化石燃料を改質するのが一番簡単だがこれでは精製過程でCO2が出てしまう。

「EVオンリー」なんてまだまだ不可能! 豊かな世界を次世代に残すため私たちがいま考えるべきこと
トヨタが静岡県裾野市に展開するウーブンシティでは、水素ステーションも整備される計画だ

 だから風力やソーラーなどの再生可能エネルギー、あるいは原子力発電を使って作られた水素でないと真にカーボンフリーとは言えず(これを『グリーン水素』として区別している)、クリーンエネルギーと言いつつも石炭火力発電と同じようなジレンマを抱えているのは否定できない。

 ただし、水素は「持ち運びできる」という点が最大の魅力で、クリーンエネルギーとしてFCVのほかにもさまざまな応用の可能性が広がっているのが重要なポイントだ。

次ページは : ■トヨタは水素エンジンに次世代パワーユニットとしての大いなる可能性をアピールする

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