ノートシリーズ月販目標1万2000台!? オーラ登場で強気に攻める日産は販売トップに立てるのか?

■リーマンやゴーンショックで国内販売台数は下降線。今や5位が定位置に

 それにしてもなぜ日産は、ノートと上級のノートオーラを用意して、大量な販売をねらうのか。この背景には、日産の国内販売が抱える切実な事情がある。

 国内におけるメーカーの販売ランキングを振り返ると、2007年頃まで、日産はトヨタに次いで安定的に2位だった。ところが2008年に発生したリーマンショックによる世界的な不況の影響で、2011年以降の日産は、国内に投入する新型車の数を大幅に減らした。2年に1車種程度まで落ち込んでしまう。

 その結果、設計の古い車種が増えて、国内販売も急速に減少した。2012年の国内販売ランキングは、1位:トヨタ、2位:ホンダ、3位:ダイハツ、4位:スズキ、5位:日産であった。2位から一気に5位まで転落している。

 この後、販売ランキングの2~4位は年に応じて入れ替わったが、5位は日産の定位置だ。15年ほど前まで2位だった日産が、いつまでも5位に留まるわけにはいかない。

 売れゆきと販売ランキング順位を高めるには好調に売れる商品が必要だが、前述のとおり日産の新車開発は冷え込んでいる。日本では5ナンバーサイズを中心にしたコンパクトな車種が売れ筋だが、日産では、堅調に売れていたティーダやキューブを廃止した。

日産はリバイバルプランの切り札として、サニーを改めティーダを発売。しかし思うように売れず、2代目ノートに「メダリスト」なるグレードを設定してティーダの後継とした
日産はリバイバルプランの切り札として、サニーを改めティーダを発売。しかし思うように売れず、2代目ノートに「メダリスト」なるグレードを設定してティーダの後継とした

 マーチは発売から10年以上を経過してサッパリ売れない。多額の投資をせずに、効率よく売れゆきを伸ばせる車種が求められていた。

■ノートは万能選手? メダリストに次いで、日産の車種統合意図のオーラが見える

 そこで生み出された戦略が、日産の小型/普通車で最も多く売られるノートの有効活用だ。例えば1カ月に1万台販売される人気車をベースに派生車種を開発すれば、その売れゆきがベース車の20%でも、2000台の上乗せになる。

不人気車をベースに派生車種を開発して、人気の回復を試みるのは危険だが、好調に売れるクルマの派生車種なら成功する可能性も高い。それがノートオーラだ。今の日産にとって、絶対に成功させねばならないプロジェクトに位置付けられる

 この意気込みは、ノートとノートオーラで、装備と価格の違いを比べるとよく分かる。ノートオーラG(261万300円)の価格は、ノートX(218万6800円)に比べて42万3500円高いが、ノートオーラGは装備も充実させた。

 ハイビーム時に対向車の眩惑を抑える機能を備えたLEDヘッドランプ、後方の並走車両を知らせる後側方車両検知警報、車両の周囲を上空から見たような映像で表示するインテリジェントアラウンドビューモニターなどは、ノートXではすべてオプション設定だが、ノートオーラでは全車に標準装着される。

オーラには単なるノートの上級版というよりは、アリアにも通じる新しい日産のアイデンティティを余すことなく投入したいという思いも感じる
オーラには単なるノートの上級版というよりは、アリアにも通じる新しい日産のアイデンティティを余すことなく投入したいという思いも感じる

 これらのノートオーラに標準装着される装備を価格に換算すると、総額は約26万円だ。そうなるとノートオーラで上級化された内外装、3ナンバーサイズのボディ、動力性能/走行安定性/静粛性の向上は、約42万円から26万円を差し引いた16万円で達成されている。

 そうなるとノートオーラは、ノートの上級モデルでありながら、価格はノートと同等かそれ以上に割安だ。前述のとおり大量に販売して、ノートシリーズで国内市場を支える必要があるから、ノートオーラは価格にも魅力を持たせた。

 それにしても、どのようなユーザーがノートオーラを購入しているのか。販売店に尋ねると以下のように返答された。

 「ノートオーラは、ノートでは物足りないと感じるお客様が買われている。コンパクトカーのお客様であれば、先代ノートに加えて、質感の高かったティーダやキューブからの乗り替えが多い。またシルフィやティアナなど、セダンのお客様も購入されている」。

 今の日産では、セダンの車種数も大幅に減った。シルフィはすでに生産を終えている。ノートオーラは5ドアハッチバックボディのコンパクトカーだが、上質な内外装により、セダンに近い価値を見い出しているユーザーもいるようだ。

ゴーン体制下の日本市場軽視が響き、新車は平均2年に1車種のスローペース。その影響で日産車全体の高齢化が進行。かつての売れっ子マーチも、タイ産となった現行型の販売は低調で、ノートが順調に売れれば退散か
ゴーン体制下の日本市場軽視が響き、新車は平均2年に1車種のスローペース。その影響で日産車全体の高齢化が進行。かつての売れっ子マーチも、タイ産となった現行型の販売は低調で、ノートが順調に売れれば退散か
先代ノートは写真上のマーチとプラットフォームを共有した兄弟車だった。しかし、ノートはもともとグローバルモデルであったこと、e-POWERで復活したことで、新型はプラットフォームも新世代に昇格。ライバルに対抗可能な戦闘力を身に付けた!
先代ノートは写真上のマーチとプラットフォームを共有した兄弟車だった。しかし、ノートはもともとグローバルモデルであったこと、e-POWERで復活したことで、新型はプラットフォームも新世代に昇格。ライバルに対抗可能な戦闘力を身に付けた!

 以上のようにノートオーラは、ティーダやキューブからティアナまで、日産が廃止したさまざまな車種の穴を埋められる商品に仕上げている。ノートをベースに開発できるコスト対応のしやすさも含め、ノートオーラは今の日産を救う商品だ。

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