クルマ界の「まさか!」TOP3 こんなことが起きるなんて事件簿

クルマ界の「まさか!」TOP3 こんなことが起きるなんて事件簿

 クラウンSUV化やオデッセイ国内販売終了、C8コルベットのミドシップ化、F1参戦中止を発表したホンダの5連勝など、最近クルマ界の「まさか」が多いような気がします。

 こうした、まさかこんなことが起きるなんて、という2000年以降の出来事TOP3、またそれ以外にもクルマ業界を驚愕・震撼させた出来事を独断と偏見で選び、解説していく。

文/柳澤隆志
写真/VW、三菱、トヨタ、日産、ホンダ

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■第1位/フォルクスワーゲンによるディーゼル不正事件:自動車の歴史の分水嶺


■世界を代表する自動車メーカーの裏切り行為に世界が「まさか」

VWのディーゼル車排ガス不正事件当時(2015年)のVW会長、マルティン・ヴインターコルン氏。2021年3月、VW監査役会はヴインターコルン氏に対し、損害賠償請求を求めていたが、6月、約1000万ユーロ(約16億8000万円)をVW側に支払うことで合意した
VWのディーゼル車排ガス不正事件当時(2015年)のVW会長、マルティン・ヴインターコルン氏。2021年3月、VW監査役会はヴインターコルン氏に対し、損害賠償請求を求めていたが、6月、約1000万ユーロ(約16億8000万円)をVW側に支払うことで合意した

 2015年9月、フォルクスワーゲン(VW)が、同社のディーゼルエンジンが米国排ガス規制基準を満たすことが困難だったことから、実験室での規制基準試験が行われる特定の条件を検知し、その時だけ汚染物質排出量が実走行時の最大40分の1になるよう意図的に排ガス浄化デバイスを制御するようソフトウェアをプログラムしていたことが発覚したスキャンダル。

 ロンドンでの大気汚染による死亡者が年間3000人以上といわれているなど大気汚染問題が深刻な欧州で、当時の乗用車販売台数の半数以上が「環境に優しい」とされたディーゼル車だったこと、その「環境に優しいディーゼル車」という認識が覆されたこと、世界に名だたる自動車メーカーで会社ぐるみでの不正が行われていた事実に世界中で激震が走る。

 2009年から2015年までに生産された約1100万台のVWのクルマに不正なソフトウェア、いわゆる「ディフィートデバイス」が搭載。通常はディーゼルエンジンの燃費を向上させるためには汚染物質排出量が増加してしまうというトレードオフの関係があったが、ディフィートデバイスにより検査時のみ「ズル」することで「燃費も良くクリーンなディーゼル」と米国で認定され、グリーンカー補助金や税の免除を受けることができた。

 この発覚により当時のVWグループ会長、マルティン・ヴィンターコルン氏は辞任、ブランド開発責任者ノイサー氏、アウディとポルシェの研究開発責任者ハッケンベルク氏とハッツ氏は停職処分に。

 不正に関連してVWが支払った罰金と費用、金銭的和解や買い戻し費用などは米国での刑事罰の罰金28億ドルを含め3兆円を超える。現在も様々な訴訟が進行中。


■「クリーンディーゼル」から一転EVへ

欧州で昨年発売されたEV専用のブランド、ID.ブランド第一弾となるID.3
欧州で昨年発売されたEV専用のブランド、ID.ブランド第一弾となるID.3

 2015年当時、二酸化炭素排出量が少なく「大気汚染も少ない」とされていたディーゼルエンジン車は環境問題の解決策として欧州で本命視されていた。当時のEUでの新車乗用車販売のディーゼル車シェアは52%を占めていたが、このスキャンダルにより2020年には28%まで下落、年間販売台数は約300万台も減少した。

 このスキャンダルによりディーゼルエンジン車が排出する汚染物質が、実際の走行環境下では法定排出規制値を超えているという認識が広まり、「ディーゼルからEVへ」という環境規制の変化、メーカーの新車戦略の移行が決定的に。テスラ躍進の背景にもなった。

 一般に大企業が既存の事業をあきらめ新規事業に移行するのは非常に困難だが、このスキャンダルのせいでVWグループをはじめとする欧州自動車メーカーがEVへのシフトを決断したと考えると、ある意味自動車業界の時計の進み方を加速させた、まさに自動車の歴史の分水嶺となった事件だった。

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