■第3位/カルロス・ゴーン氏、日産代表取締役会長の在任中に逮捕→海外逃亡
■プライベートジェットで帰国直後に東京地検特捜部に逮捕、そして箱に隠れて海外逃亡というまるで映画のような「まさか」
2018年11月、当時日産の代表取締役会長だったカルロス・ゴーン氏が、実際受け取っていた報酬額よりも少ない金額を有価証券報告書に記載したとして東京地検特捜部に金融商品取引法違反の疑いで逮捕、起訴。その後、私的な損失を会社に肩代わりさせた疑いなどで特別背任容疑でも追起訴。日産と三菱自動車の会長職を解任され、ルノー会長職も辞任。
ゴーン氏の処遇がフランスのマクロン大統領と当時の安倍首相の日仏首脳会談でも取り上げられる中、15億円の保証金を払った2度目の保釈中である2019年12月に、元グリーンベレー隊員らの協力で楽器の箱に隠れて関西国際空港からプライベートジェットでトルコを経由してレバノンに脱出。
レバノンから日本の司法制度が不公平で差別的で人権侵害が行われており、自らは政治の犠牲者だと訴える声明を発表。現在もメディアで自らの主張を発信。
日本での裁判は本人が帰国しなければ公判を開くことができず、日本政府はレバノン政府に身柄引渡しの要請を行ったものの、両国間には犯罪人引き渡し条約がないことから公判維持は絶望的な状況。日本政府がICPO(国際刑事警察機構)に身柄拘束要請を行なったことからゴーン氏が現在深刻な財政危機にあるレバノンから出国することは困難となっている。
東京地検特捜部による逮捕にもかかわらず、海外からの「人質司法」批判に対して弱腰で、本来すべきでない保釈を決定したと法務省を批判する声も国内で上がる中で、自らの管轄の出入国在留管理の隙を突かれて国外脱出されたことで、法務省のメンツが全方向的に丸潰れとなったという意味でも「まさか」度高い。
■100年に一度の変革期にある自動車業界でアライアンスの混乱は痛すぎる
1990年代赤字続きで2兆円もの負債を抱え、倒産寸前だった日産。2万1千人という途方もないリストラや国内主力工場の閉鎖など痛みを伴う改革を断行するだけでなく「フェアレディZ」「GT-R」を復活させるなど社内の士気も高め、日産のV字回復を果たしたゴーン氏は、カリスマ経営者と高く評価された。
ゴーン氏を送り込んだのは瀕死の日産に6430億円を出資すると決断したルノーであり、ルノーが日産を救ったのは事実。
だが日産よりも規模が小さく、仏政府が大株主のルノーが日産の株の43%超を保有していることから日産とルノー、日本とフランスの摩擦は常に存在。それが日産の内部調査に痰を発するゴーン氏逮捕の背景の一部にあると指摘する声も。
会社は株主のものという資本の論理を優先するのか、経産省出身の社外取締役もいる「日産は日本の会社」という考えを優先するのかが見えない中で、100年に一度の変革期に迅速な経営判断ができない状況が続くと、日産は近い将来暗黒の90年代へ逆戻りしかねない。
■第4位以下の「まさか」ランキングはこちら
まだまだ、クルマ界の「まさか」をないのかという人には4位以下もどうぞ!
■第4位/2020年7月、テスラの時価総額がトヨタ超え
電動化や自動運転などの次世代技術を先取りしていると投資家から高い評価を集めるテスラの時価総額がトヨタを抜いて自動車メーカーで世界首位に。100年に一度といわれる自動車業界の変革を象徴する出来事。
■第5位/2017年6月、タカタ経営破綻
シートベルト、エアバッグ、チャイルドシートなど他社に先駆け自動車安全部品の開発・商品化を行なったタカタが、エアバッグ欠陥リコール問題を受け、負債1兆円を超える戦後最大級の経営破綻。
■第6位/2009~10年、トヨタの大規模リコール
2007年頃からアメリカでフロアマットにアクセルペダルがひっかかるなどしてトヨタ車の急加速による死傷事故が複数発生したとされ、2009年から2010年に750万台以上という市場稀に見る規模のクルマがリコール対象に。
のちに構造上の欠陥ではないと調査で実証されたが制裁金・和解金の支払い負担だけでなく売上減少、ブランドイメージ毀損を招いた。
■第7位/2017年8月、マツダがSKYACTIV-X発表
SPCCI(火花点火制御圧縮着火)という新技術で内燃機関のクルマとして非常に高いレベルの環境性能と走行性能を両立させたエンジンをマツダが開発。ガソリンのパワーと環境性能、ディーゼルの低燃費と高トルクのいいとこ取りという画期的なもので「内燃機関はオワコン」という常識に一石を投じた画期的な技術。
■第8位 2017年5月、佐藤琢磨が日本人で初めて米国の最も伝統ある自動車レースインディ500優勝の快挙を達成
(松山英樹選手のマスターズ優勝、大谷翔平選手の大リーグでの活躍に匹敵)
■第9位 2020年11月、日本を代表する高級車クラウンの次期型がSUVになると報道
(後継モデルはSUVと一部報道、クルマ界の世代交代を象徴)
■第10位 2021年7月、新車未登録の2002年式日産スカイラインGT-R V-SPEC Nur (BNR34)が6050万1円でオークションにて落札。R34GT-Rは中古車市場では1300万~3500万円で流通
(国内MTスポーツカーの新車販売がほぼなくなったことによる供給不足とコロナバブルによる需要の増大を象徴)
10位までに入れなかったが、以下の「まさか」な出来事も世の中が大きく変わるきっかけとなった。
■飲酒運転罰則強化につながった福岡市海の中道大橋での家族5人死傷事故(2006年8月)
■あおり運転厳罰化・ドライブレコーダーの急速な普及につながった東名高速でのあおり運転による4人死傷事故(2017年6月)、常磐道あおり運転殴打事件(2019年8月)
■F1史上に残るドライバーズチャンピオンを5回連続で獲得したミハエル・シューマッハがスキー事故で全身麻痺に(2013年12月)
■トヨタ、悲願のル・マン24時間レース初優勝(2018年6月)
■e-POWER搭載の新型ノートの売れ行き好調で日産車が30年ぶりに月間販売台数1位に輝く(2016年11月)
この記事を執筆している間にも、「EUで2035年にハイブリッドを含む内燃機関車の発売を実質禁止する」ことを含む温暖化ガス削減案が公表されるなど、「まさか」が続く自動車業界。あまりの変化の速さに目が回りそうだ。
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