電気自動車普及の大きな壁!? 高価なEVは誰が買っているのか?

■西側先進国では普及にさらに時間がかかるか

近年目立ってきた北京汽車のEVタクシーも電池脱着式を採用する。電池スタンドで充電済みの電池と交換するので、充電時間が不要となる
近年目立ってきた北京汽車のEVタクシーも電池脱着式を採用する。電池スタンドで充電済みの電池と交換するので、充電時間が不要となる

 今年春に開催された上海モーターショーでは、リチウムイオンなどの二次電池が脱着式のBEVが多く展示されていたとのこと。

 つまり、電池残量が少なくなったら、街なかの電池ステーションへ行き、満充電された電池と交換するというもの。これなら、30~40分ともいわれる充電時間を省くことができる。

 すでに中国の街なかには電池ステーションが目立ってきているとの話も聞く。中国の都市部を中心にタクシー車両のBEV化は進んでいるが、北京汽車のBEVタクシー車両が電池脱着式となっており、このタクシーが都市部では目立ってきている。

 ただし、日本ではこの脱着式電池のBEVは電池ステーションに多くのリチウムイオン電池が集まるのが危険ということで法令に触れるとのことで、現状では中国のように展開することはできない。

 中国のBEV普及において、やはり充電に時間がかかるということも少なからずネックになっているからこそ、脱着式が注目されているのであろう。

 中国のような、ある意味特別な政治体制下で物事がスピーディに進むとされる国においても、車両電動化はなかなか普及が進まない。そんなことでは、個々人の権利意識の高い西側先進国では、化石燃料で内燃機関のクルマを走らせることによる既得権益も絡み、さらに普及に時間がかかるのではないかともいわている。

■欧米でのEVの扱いはいまだに貴族のオモチャ

メルセデス・ベンツ EQS。高級4ドアセダンであるSクラスのEV版といった位置づけとなる。EVの普及対象が富裕層だという現れだろう
メルセデス・ベンツ EQS。高級4ドアセダンであるSクラスのEV版といった位置づけとなる。EVの普及対象が富裕層だという現れだろう

 先進国での車両電動化の急先鋒は西ヨーロッパ諸国で自動車産業の盛んな、ドイツやフランス、イギリスあたりとなる。

 イギリスやフランスは2030年までに電動車以外の販売を終了するとしているが、その欧州でも2030年時点での車両電動化は全体の3割ほどまで進めばいいほうともされている。アメリカではさらに電動化は進まず、そして日本はアメリカより進まないのではないかとする見方もある。

 中国はまだまだ自動車保有台数については“のびしろ”のある成長市場なので話は別となるが、すでに成熟市場となっている欧米や日本などでは、今後電動車の普及が進むなかで早晩“貧困問題”というものが普及にブレーキをかける可能性が高いと考えている。

 事実、電動車普及に積極的とされる欧州では、電動車が多くラインナップされるのは上流階級が乗るプレミアムブランドのほうがより積極的に見える。つまり現時点での普及対象のメインは富裕層となっている。

 100年ほど前に自動車そのものが発明された時、最初のステップでは、“貴族など上流階級のおもちゃ”的需要も普及に貢献したとされているのを見れば、電動車の普及も“いつか辿った道”を歩んでいるのかもしれない。

 一方で物資輸送など“はたらくクルマ”的需要も、自動車が世の中に出始めた当初では普及を進めたとされる。これは、前述した、中国での現状での電動車普及状況を見ると、同じ道をたどって電動車が普及しているようにも見える。

■自動車の歴史の節目節目で置き去りとなる低所得層

テスラ モデルS。現在のEV市場が富裕層をターゲットとしているのはアメリカも同様だ
テスラ モデルS。現在のEV市場が富裕層をターゲットとしているのはアメリカも同様だ

 アメリカでは、電動車のなかでBEVにフォーカスすれば、圧倒的にテスラがよく売れている。

 とくに電動車が普及している南カリフォルニアで見れば、富裕層のウイークデーでの街乗り用のクルマとして、テスラをはじめ高級BEVがフリーウェイをはじめ、街なかで多く見かけることができる。

 そして、複数保有が当たり前のアメリカでは、ウイークエンドのレジャーなどでは、郊外に出かけることも多いので、大排気量の内燃機関となるSUVなどで遠出するといった使い分けのなかでの電動車普及が進むとされているが、低所得層ではホイホイ複数保有することはできないだろう。

 80年年代に“日米貿易摩擦”問題が勃発した。日本から安価で性能の良い製品がアメリカへ大量に輸出され、アメリカ企業に大打撃を与えたのである。そこで真っ先にやり玉となったのが日本車である。排気量が少なく、燃費性能がよくガソリン代をセーブできるだけでなく、なおかつ壊れにくい。

 さらに当時の最新技術がふんだんに盛り込まれた日本車はアメリカで大人気となったが、それを新車で購入できるのは、中産階級以上などの富裕層がメインとなっていた。

 そして、年式の古い格安中古車しか買えない低所得層になればなるほど、排気量が7Lといった大排気量で燃費だけでなく、環境性能も悪い年式の古いアメリカンブランドの大型車に乗ることとなり、日々のガソリン代の負担も重くなっていた。

次ページは : ■低所得層へのアピールとして格安EVもアリか?

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