■超高級スポーツカーメーカーとして3度目の復活。現在に至っていたが・・
華々しく復活したのは1998年のこと。当時VWグループを牽引したフェルディナント・ピエヒ(とその孫)の思いつきが、ブガッティという歴史あるブランドを史上最も高性能で高級なスーパーカーブランドとして三度復活せしめたというわけだ。
フランスに帰ってきたブガッティは、アルザスのモルスハイムにアトリエと呼ばれる工場を建設。そこでW16気筒エンジン搭載オーバー1000馬力、最高速400km/h以上を誇る正真正銘のハイパーカー、ヴェイロン、そして1500馬力を誇るシロンの生産を始めたのだった。
シロンのスペシャルモデルはなんと490km/h以上を達成している。客単価3億円以上のラインナップを揃える世界最高峰のブランドであり、先日納車されたシロンベースのワンオフモデルなどは件の黒い個体へのオマージュとして製作され、なんと16億円であったという。
そのオーナーの自動車平均所有台数は30台以上と言われるほどブガッティは何もかもが桁違いの高級車ブランドである。
以前、ブガッティのトップを務めた人間に面白い喩え話を聞いた。「ベントレーの客は愛車に乗って五つ星ホテルの三つ星レストランへ行く。ブガッティの客はヘリコプターを使って自ら所有するホテルへ行くか、シェフを自宅へ呼びつける」。
それを聞いた時、筆者は思わず「じゃ、ブガッティはいつ乗るの?」と聞き返したものだった。
■突如VW100%からポルシェと新興リマックの合弁会社の傘下になると発表
名実ともに世界最高峰の高性能&高級車ブランドであるブガッティ。そんなブランドをクロアチアの、一般的にはさほど有名とは言えないEVメーカーが買収したという衝撃的なニュースが先日、駆け巡った。
メーカーの名は「リマック」だ。世間的には知られていない名前かもしれないが、スーパーカー好きの間では高性能EVを開発するブランドとしてすでによく知られた存在である。
2018年にはポルシェがリマック・グループの株式を18%取得(のちに24%まで買い進めた。この時点でブガッティやランボルギーニといったVWグループ内の高性能ブランドを売却するつもりでは、と噂されていた)。
リマックはEVスーパーカーメーカーというよりも、韓国ヒュンデーをはじめ世界中のメーカー・サプライヤーとすでに取引のあるEV関連テクノロジーカンパニーである。といっても、創業からわずかに12年(2009年創業)。創業者であるマテ・リマックはまだ30代前半の若者である。
買収劇の骨子を簡単にまとめるとこうなる。
VWグループとリマック・グループが合弁会社を設立。その株式45%分をVWがグループ企業のポルシェに譲渡。リマックが新会社の株式の55%を握り、社名も新たに「ブガッティ・リマック」とする。同時にリマック・グループはEV関連の研究開発部門を「リマック・テクノロジー」として独立させ、こちらは世界のあらゆるメーカーとの取引を続ける。
ブガッティ・リマックの本社はクロアチアのザグレブだが、モルスハイムのブガッティ・アトリエは継続され、そこで残りのシロンやニューモデルの生産を続け、雇用(約130名)も守る。リマックの新型車ネヴェーラは引き続きクロアチアで生産される。
新会社ブガッティ・リマックのCEOはマテ。監査役会にポルシェ会長・副会長が名を連ねる。今後はブガッティの新型車開発に力を入れ、リマックはブガッティの販売網を活用してネヴェーラを販売、ポルシェは技術協力を主体に高性能EV界の覇権をもくろむ。まさにトライアングルハッピーを目指すというわけだ。
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