■人の機能低下を技術が補う
まず、ドライバーの認知、判断、操作が正しく行なわれているかシステムが検出し、正しく行なわれていれば「ドライバーは正常である」と判断します。
そして万が一、ドライバーの認知、判断、操作が正しく行なわれていない場合には「ドライバーに緊急事態が発生した」とシステムが判断し、これまで実用化された先進安全技術を用いて安全に停止させる、これがシステムの概要です。
こうしたMazda Co-Pilot Conceptのような人を中心とした安全への考え方は、他社からも同じく発信されています。
トヨタでいえば「Toyota Teammate」、日産では「Nissan Intelligent Mobility」、ホンダでは「Safety for Everyone」、スバル「総合安全」などがそれにあたります。
海外の自動車メーカーからも、人と技術のバランス(割合)に差があるとはいえ目指す安全手法は同様です。いずれも人の状況をシステムが検出し、危険な状態に近づいてしまう場合に限り、安全側へ引き戻すという発想です。
そこで改めて「人中心」です。
日本は超高齢社会となって久しく、この先も65歳以上の高齢者、75歳以上の後期高齢者が運転免許証を保有し続けると予想されています。
人は等しく年を重ねることから、徐々に身体的機能が低下していきます。その低下には個人差があるものの、自然の摂理であり抗うことはできません。
一方、クルマの運転は身体全体で行なうことから、身体的機能の低下は安全な運転環境の継続と密接な関係があり、ここに自動運転技術がサポートする大きな意義が発生します。
高齢者の運転操作サポートに関して、国内外の自動車メーカーは急務と捉え技術開発に取り組んでいます。そのひとつであるホンダでは、高齢者の運転操作をサポートするためにどんな技術が必要なのか、行動心理学の上からも研究を行なっています。
「条件付自動運転車」と呼ばれる、世界初の自動化レベル3技術を含んだ「Honda SENSING Elite」の開発・実装を経たことで、この先は人の振る舞いに寄り添うレベル2技術の実現に期待が寄せられます。
「事故ゼロ社会の実現に向けた自動化技術の開発経験は、この先の先進安全技術を生み出す上でとても大きな財産になりました」と語るのは、Honda SENSING Eliteの開発責任者である杉本洋一氏。本連載では、第12回や第13回で詳細をレポートしています。
■「不要な急アクセル」を感知
トヨタでは、高齢ドライバーに多いとされるアクセルとブレーキの踏み間違いが元で発生した事故を抑制するため、2018年12月に「踏み間違い加速抑制システム」を発売しました。
まずは販売済みの(オーナーの手に渡っている)「プリウス」と「アクア」に後付け装着を可能とし、その後、水平展開しながら、現在はトヨタ以外の車種にも設定されるなど装着可能車が拡がっています。メーカー間の垣根を飛び越え有用な技術を採用するこうした考え方は、自動運転開発の協調領域と重なります。
さらにトヨタでは、2020年2月に「急アクセル時加速抑制機能」を発表、同年8月以降の新型車から順次導入しました。
新たな先進安全技術である急アクセル時加速抑制機能は、従来の踏み間違い加速抑制システムの弱点であった対象物が直近にない場合であっても働くため、事故の抑制可能なシーンが増えています。
具体的には、過去の走行データをもとに踏み間違い推定アルゴリズムに基づいた不要な急アクセルを検知して急加速を抑制し、暴走事故を防ぎます。
この「不要な急アクセル」を検出するアルゴリズムは、まさしく自動運転における要素技術です。その意味では、すでに自動運転技術が高齢者の安全運転をサポートしているともいえるでしょう。
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