一台のクルマには、縁あってオーナーになった人との歴史や思い出があり、物語になるほどのエピソードが生まれることもある。
そんなクルマと人との関わりを、オーナーさんに直接取材して、リアルな生の声を紹介していきたいと思います。はたして、どんな生の声が聞けるのでしょうか?
購入した動機から、愛車に対するこだわりのポイント、年間の維持費、故障箇所、愛車の主治医まで、これからそのクルマを購入しようと思っている人にも役に立つ情報満載でお届けします。
文・写真/松村透
■3代目のZ、1998年式フェアレディZ2シーターversion S(Z32型)に乗る26歳の女性オーナー
現在を含めて、これまでの愛車はすべてZ32という26歳の女性オーナー。3台目のZ32となるこの個体は「2シーター、ノーマルルーフ、NA、5速、最終モデル」というレアなモデル。1年以上かけてようやく見つけた念願のZ32だといいます。
その出会いからして、運命であり、必然だったのかもしれません。
【画像ギャラリー】Z32一筋の女性オーナーさんは、レア車を乗りこなす真のフェアレディだ!!
■プロフィール&愛車紹介
・お名前:いづみさん
・ご年齢:26歳
・ご職業:会社員
・所有しているクルマ(年式、グレード名):1998年式フェアレディZ2シーターversionS(最終モデル)
・購入時期:2019年2月
・所有年数;約2年半
・購入時の走行距離:約19万㎞
・現在の走行距離:約22万6000km
・購入時の金額:約120万円
■Z32を手に入れようと思ったきっかけを教えてください
両親の影響もあってもともと日産車が好きで、買うならS14型シルビアの前期か、親が好きだったブルーバードやパルサー、あとはラシーンも候補でした。高校生の時、ガソリンスタンドでアルバイトしていた最中にZ32を見かけて…ひと目惚れでした。それからいろいろ調べていくうちに「このクルマに乗りたい、所有したい! 」と強く思うようになっていったんです。
運転免許を取得したのは19才の時でした。この時点で「乗るならZ32」と決めていました。そして、初の愛車もZ32です。しかし事故に遭遇して廃車に…。その後2台目のZ32を購入。しかし学生の立場では維持が難しく、泣く泣く手放しました。
3度目ならぬ「3台目の正直」といいますか、今度こそ永く乗れる個体が欲しいと思い、社会人になってから1年近く探し続けやっと見つけたのが今の個体です。NAエンジンのメンテナンスしやすさや、ノーマルルーフのボディ、そして最終型であることが決め手となりました。
■愛車との濃いエピソードについて聞かせてください
「このZ32と出会った日」でしょうか。
1年以上希望の個体を探していたのですが、なかなか条件に合致するZ32が見つからなくて…。いつもお世話になっている専門店にで売り物が見つかった時も、他の方が契約してしまい…。
諦めかけていたある日、ふと中古車検索サイトを見たら、偶然現在の愛車を見つけたんです。しかも自宅から近い場所だったのですぐに観に行きました。これでダメならZ32を諦めて他のクルマにしよう。
この時「Z32自体を降りるか、乗り続けるか」という究極の選択を考えていたくらい、自分にとって大きな分岐点だったように思います。
現地に着いてからクルマの下に潜り、下回りもすべて見せていただきました。この時、お店の方がびっくりしたのを覚えています。もしや同業者じゃないかって(笑)。
でも、自分としてはこのZ32に乗りたいと思ったんですね。そこで、これまでZ32を2台乗り継ぎ、クルマのことも多少知っていることを伝えたところ誤解が解けて…。
実はお店の方も2シーターのZ32乗りで、知り合いである前オーナーさんから「家庭の事情で泣く泣く手放すことになったので、大切に乗ってくれる人に売りたい」と預かった個体だったそうです。私なら…ということで前オーナーさんをご紹介いただき「いづみさんであればぜひ!」とご快諾いただきました。
購入後も前オーナーさんからご連絡があり、これまで手をかけてきた箇所を細かく教えていただきました。この子は本当に素敵なつながりを連れてきてくれた子だと思っています。
泣く泣く手放すことになった前オーナーさんの想いを汲んで、これからも大切に乗っていこうと思っています。
■愛車に対するこだわりについて聞かせてください
内外装はあくまでも純正の雰囲気を残しつつ当時感を大切に、そして美しく維持すること。そしてメンテナンスは可能な限り調べたりするなど、自分で手をかけることにこだわっています。
直近では革シートのリペアに挑戦したりして、とても良い勉強になっています。前オーナーさんから引き継いだnavanのシフトノブや、MOMO製のCommand(初代モデル)のステアリング、レカロの限定モデルであるSR-ZEROも気に入っています。マフラーはアペックス製で、2シーター用としては最後の新品を入手できました(現在は絶版)。
それと…そのクルマが本来持っている匂いも好きなんです。具体的には工場で生産された当時の素材や生地、接着材とか…。そのため、香りの強い芳香剤は使わないようにしています。
■大まかな年間維持費(自動車税、オイル関係、ガソリン代などを含めた概算)を教えてください
クルマのローン、保険料、部品代、燃料代などを含めると年間70万円ほどです。燃費はリッター7km/L前後です。職場まではこのZ32で通勤しています。
■失礼ながら、これまで大小の故障はありましたか?
・燃料ホースに亀裂が入り、エンジンルームが噴水状態
・プロペラシャフトのジョイントが固着してセンターベアリングを引きちぎっていた
・ヒーターレジスタが壊れて風量MAXしか出なくなった
生産されてから20年を超えていますので、普通では考えられない故障にも遭遇します。そんな故障さえも愛おしく、メンテナンスも楽しみながら接しています。
あまり壊さないようにと気を遣いながら乗るつもりはないんです。普通に使って、壊れたら直して…。普通のクルマとして扱ってあげたいんです。海や山にも行きますし。帰ってきたら洗えばいいんですから。どこか擦ったとか汚れが溜まった時は自分でやればいいと思っています。
あくまでも自分の生活のパートナーであり、一緒にいるのが当たり前の存在です。走ってなんぼだし、職場への通勤を含めた移動手段でもある。そこらへんのクルマ好きの男なんか目じゃないよってよく言われます(笑)。
■純正部品の入手に苦労していますか?欠品・製造廃止している部品などご存知でしたら教えてください
苦労していますね。特にZ32の生産台数は圧倒的に「ツインターボ・AT・2by2・Tバールーフ」が多いので、真逆のこの子はトランスミッションやプロペラシャフト、モール等々…製廃部品も多いです。
運良く見つかっても、価格が上がりすぎていて簡単には購入できません(最終型ヘッドライトは左右新品で50万越えとか…)。
■愛車の主治医どのようなお店ですか?
基本的に整備は自分でやることが多いですが、部品購入や重整備、アドバイスなどは、先代のZ32の頃から7年ほど相模原にあるZ32専門店の「Zone」さんにお世話になっています。整備の右も左もわからなかった頃から私自身の成長をずっと見守ってきてくださる大切なお店です。
自分では作業できない領域や分からないところ、今後、どういうところが壊れていくかといったノウハウは格段にZoneさんがお持ちですし、困ったときの駆け込み寺でもあります。
■これからも乗り続けるご予定ですか?
もちろん、乗れる限り、乗り続けるつもりです! エンジンが動く限り。エンジンが動かくても、直せる範囲なら修理して乗ります。
ただ、載せ換えは考えたくないです。これまで1回もオーバーホールしていないのに、オイル漏れが少ないんですよ。鉄ブロックとしてはとても状態のいいエンジンなので、できるだけこの心臓部のままで走っていきたいなっと思っています。
■未来のオーナーのために購入時のチェックポイントや愛車のウィークポイントを教えてください
Z32に限らず古いスポーツカーは、カスタムされているか、低走行かどうかに魅力を感じてしまいがちです。
しかし、 社外品は純正品とは異なる壊れ方をする場合もありますし、より部品の入手が難しいこともあります。また、低走行の個体は放置車両であった可能性も高く、内部が錆に攻撃されていることもあります。
まずはラジエーターキャップを空けて錆が浮いていないか確認してみてください。それと、下回りを見て錆とオイル漏れの状態を確認した上で、今後の維持にどのくらいの費用と時間がかかるかを総合的に判断して購入することをおすすめします。
■あなたにとって愛車はどんな存在ですか?
1週間かけて考えたのですが…答えは見つかりませんでした。
私にとってこの子は言葉にならないような存在です。相棒であり、友達でもあり、家族でもあるけど、機械でもあり、移動手段でもある。
一緒にいるのが当たり前でもありますが、いつか走らなくなってしまうという覚悟も持っています。そんな存在であることが、私にとっての愛車です。ただひとついえるのは、間違いなく「世界で1つのかけがえのない存在であるという事実」です。
■取材後記
「あなたにとって愛車はどんな存在ですか?」
割合即答できるオーナーさんが多いなか、答えに窮したといういづみさん。
本当に惚れ込んでいるモノに対して理由を伺っても、それは後付けなのかもしれません。
先日発表された新型フェアレディZについても「Z32以来の3リッター、ツインターボエンジンにとても興味がありますし、親近感がわいています。まだ所有することは考えられませんが…」とのこと。
前オーナーさんと同じか、それ以上の愛情を注ぎ込んでいるいづみさん。日本はもちろんのこと、世界的にもレアで貴重なZ32はこれからも大切にされていくに違いありません。














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