■実は「チャラかったから」!? グラベルEXが消えた本当の理由
今日の視点で見るならば「なかなか悪くない、高性能ステーションワゴンをベースとするクロスオーバー車」と思えるスバル インプレッサ グラベルEXはなぜ、たったの1313台しか作られないまま廃番となったのでしょうか?
そして廃番となっただけでなく、「グラベルEX(笑)」的な嘲笑の対象あるいは黒歴史に、なってしまったのでしょうか?
「時代的に早すぎた」「アウトドアで使うには荷室が狭すぎた」「背面スペアタイヤのせいでリアゲートを開けるのがめちゃめちゃ面倒くさかった」など、さまざまな理由はあるかと思います。
しかし、根本的なことを言うなら「チャラかったから」だと、筆者は思っています。
同時期、というかインプレッサ グラベルEXよりほんの少し前に登場した「スバル レガシィ グランドワゴン」は、基本的な成り立ちはインプレッサ グラベルEXとほぼ同一でした。
すなわち、レガシィ ツーリングワゴンの車高と最低地上高を上げて悪路も走れるようにし、同時に、無骨なデザインの専用バンパーなどでオフローダーとしての“イメージ”も訴求した商品です。
そんなレガシィ グランドワゴンはその後「レガシィ ランカスター」へと正常進化し、さらには、今なお愛され続けている「レガシィ アウトバック」へと発展していったことは、皆さんよくご存じのとおりです。
そんなレガシィ グランドワゴンと――表層ではなく基本的な考え方は――ほぼ同じだったはずのインプレッサ グラベルEXが短命に終わった理由。それは、チャラさゼロで「本質」だけを目指したレガシィ グランドワゴンと違い、グラベルEXは「RVブームの表層」を志向し、軽薄に模倣してしまったからです。
余計で危険なグリルガードなど付けず、荷室が使いづらくなるだけの背面タイヤも採用せず、あくまでも本質的な「ステーションワゴンとオフローダーとのクロスオーバー」を志向したならば、その後の自動車の歴史は変わっていた可能性すらあります。
しかし当時のスバルは――誰が何を考えていたのかは知りませんが――柄にもない「時代への迎合」を行い、インプレッサ グラベルEXにチャラいRV風の架装をしてしまいました。
そのため、中身だけで見れば「世界初の本格スポーティクロスオーバー車」になったかもしれないインプレッサ グラベルEXは、「意味不明なRVもどき」として完全に笑いの対象となっている三菱 ギャランスポーツと同列の存在まで、堕ちてしまったのです。
判断ミスは誰にでも、どんな会社にもありますし、後からやいやい言うだけで済む筆者のような職業は、まぁ気楽なものです。
しかしそれでも、素材と根本的なコンセプトは悪くなかっただけに、残念でならないのです。
■スバル インプレッサ グラベルEX 主要諸元
・全長×全幅×全高:4595mm×1690mm×1470mm
・ホイールベース:2520mm
・車重:1310kg
・エンジン:水平対向4気筒DOHCターボ、1994cc
・最高出力:220ps/6000rpm
・最大トルク:28.5kgm/3500rpm
・燃費:10.2km/L(10・15モード)
・価格:234万9000円(1995年式 5MT)
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