毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ サイノス(1991-1999)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/TOYOTA
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■バブル末期の1991年、「こぶりな2ドアクーペ」として登場したサイノス
「クーペ」というボディ形状にまだ求心力があった1991年、当時のターセル/コルサのメカニズムを譲り受ける形で誕生。
デビュー時のCMに使われた「友達以上恋人未満。」というコピーはそれなりに人々の心をとらえ、1995年にはフルモデルチェンジを受けて2代目へと進化。
しかし日本のみならず北米でもユーザーの嗜好が変わってクーペが売れにくくなった1999年、その使命を終えて廃番となった小ぶりなFF2ドアクーペ。
それが、トヨタ サイノスです。
カローラ レビン&スプリンター トレノよりひと回り小さな2ドアクーペである「トヨタ サイノス」が日本で発売されたのは1991年1月のこと。
前述のとおりメカニズムの基本となったのは当時のターセル/コルサで、基本的には北米におけるセクレタリーカー(女性秘書に代表される職業婦人が通勤等のために使う車)として開発されたものでした。
メカ的なベースはターセル/コルサとはいえデザインはオリジナルで、搭載エンジンは2種類。
「α(アルファ)」には最高出力105psの5E-FE型1.5L直4DOHCが搭載され、上級グレードである「β(ベータ)」には、同じく1.5L直4DOHCながら、可変吸気システムやデュアル排気マニホールドを採用して最高出力115psをマークした5E-FHE型が搭載されました。
またβは4輪ともにディスクブレーキが採用され、オプションとして電子制御サスペンション「TEMS」を選ぶこともできたのも特徴です。
さらにβはチルトアップ機構付きのガラスルーフも設定されるなど、小さなボディながら、なかなか豪華な仕様でもありました。
1995年9月にはフルモデルチェンジが行われ、基本的にはキープコンセプトながらデザインをいちおう変更するとともに、αのエンジンを1.3Lの4E-FE型DOHCに変更。βには引き続き1.5Lの5E-HFE型DOHCが搭載されました。
1996年9月にはスタイリッシュなコンバーチブルも追加。
そして翌1997年12月にはマイナーチェンジで衝突安全ボディ「GOA」を採用し、1.3L車のマニュアルトランスミッションも4速から5速になるなどのテコ入れを行いましたが、低迷していたサイノスの売れ行きが特に改善されることはありませんでした。
そのためトヨタは1999年7月にサイノスの生産を終了。そして同年12月には販売のほうも終了し、トヨタ サイノスの名は2代限りで消滅しました。
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