コンセプトがわかりにくくて売れなかった名車
このタイプのトップバッターは1992年登場のCR-Xデルソルだ。CR-Xの初代と2代目モデルはシビックベースのピュアなFFスポーツというイメージが強かったが、3代目モデルとなるCR-Xデルソルは軟派な要素もあり、電動タイプも設定するタルガトップを持つオープン2シーターとなった。このコンセプトは今になるとルノーウィンドという類似したモデルがあったなど、比較的軽いノリがそれはそれでアリだった。
しかし、当時は2代目までのCR-Xからのあまりの変化や「オープンカーなら楽しめる幅が広い」という魅力を持つユーノスロードスターが強敵になったこともあり、CR-Xデルソルは失敗に終わり、CR-Xとしても最後のモデルとなってしまった。
同じように分かりにくさで売れなかったホンダ車としては独立したシートを前後二列に持つ2004年登場のエディックスや、ミニハマーのような雰囲気に加え3列シートを持つという今なら売れそうな要素が揃う2007年登場の2代目クロスロードも浮かぶ。
ホンダ社内の意見が割れて売れなかったモデル
1999年登場のアヴァンシアは「ミニバンのような快適なリアシートとステーションワゴンの広いラゲッジスペースを持つ」というモデルだった。アヴァンシアは乗ればラージセダンのように快適で、価格も2.3リッター4気筒エンジン搭載車で220万円台からリーズナブルないいクルマだった。しかし、当時200万円から250万円のホンダ車にはアコードワゴンや2代目オデッセイといったモデルがあったこともあり、アヴァンシアは分かりにくさや中途半端な感も否めなかった。アヴァンシアはマイナーチェンジで走りの質を高めたアブソルートを追加するなどのテコ入れも行ったものの、結局浮上せず初代限りとなってしまった。
アヴァンシアと同時期となる2000年に登場した7代目シビックの5ドアハッチバックも広いリアシートを持つなど、実用的ないいクルマだった。しかし、それまでのシビックのスポーティなイメージは7代目シビックでは3ドアハッチバックのタイプRだけとなってしまった。さらに悪いことに翌2001年にコンパクトカーながら広いリアシートとラゲッジスペースを持ち、燃費も良好で激安価格の初代フィットが登場したことで、シビックの存在意義が薄れてしまったためなのか、こちらもいいクルマなのに売れず、シビック低迷のきっかけのようになってしまった。
本当にいいクルマだったのに売れなかった名車
2000年のホンダ車にはいわゆる「いいクルマ」が少なくなかった。その代表が2004年登場のラージミニバンのエリシオンと、乗用車型ミドルミニバンで2006年登場の2代目ストリームである。
エリシオンはラージミニバンながらホンダのミニバンのDNAである低床低重心パッケージによる乗用車に極めて近いハンドリングと、良好な乗り心地と高い静粛性により、乗ればライバル車だった初代アルファードや2代目エルグランドを大幅に上回るクルマに仕上がっていた。2代目ストリームも5ナンバーサイズながら3列目もシッカリ使える広さを持つ点や、ボディ剛性の高さを基盤にした全体的な上質感が魅力だった。
しかし、エリシオンは初期モデルのフロントマスクがラージミニバンに求められる押し出しに欠けていた点や3列目シートの収納方法、2代目ストリームはストリームを徹底的に研究した初代ウィッシュのイメージの強さ、2代目ウィッシュの価格の安さが原因だったのか、どちらも実力ほどは売れなかった。
現在では軽ハイトワゴンのN-WGNが価格を含め内容は文句ないのに、スタイルが地味なのが原因なのか、実力ほど売れていないのは残念である。
コメント
コメントの使い方