ホンダ史上最高の完成度!! それでもクラリティPHEVが苦戦する理由

 国内と海外で同じクルマでも価格が異なるということはよくある。それはそれぞれの国の物価にあわせたり、生産や輸送のコストなどを反映した結果である。

 しかし、満を持して登場したホンダのクラリティPHEVはやや事情が特殊。なんと生産は日本国内にも関わらず、アメリカよりも日本市場のほうが約170万円も高いのだ。

 なぜそんな結果になっているのか!? そして肝心のクルマの完成度はどうだったのか? 国沢光宏氏が迫ります。

文:国沢光宏/編集:ベストカーWeb編集部/写真:平野陽
ベストカー2018年9月26日号


■関税を払ったアメリカ仕様よりも高い日本仕様

 クラリティPHEVは、アメリカだと上級グレードの『ツーリング』で約412万円(3万7495ドル。1ドル=110円換算)。日本が588万円なので176万円も安い!

 ホンダに聞いたら「日本仕様はチャデモの急速充電機能を付けたので」と苦しい答弁。

日本市場での利便性向上のためにチャデモ対応の急速充電装備をつけたクラリティPHEV。それとて170万円の価格差の説明には苦しいか!?

 そもそもクラリティPHEV、日本で生産してアメリカへ運び、その上で2.5%の関税まで払ってます。加えてチャデモ、どんなに高くたって10万円しない。運賃と関税ぶんでチャラになります。

 もう少し掘り込んでみたい。アウトランダーPHEVもアメリカで販売している。価格を調べてみたら、日本だと468万円する『Gプレミアム』と同等装備の上級グレード『GT』で約454万円(4万1290ドル)。

 チャデモはクラリティPHEVと同じく日本仕様だけ。あらら?  コチラは日本とアメリカで同じような価格設定をしている。というか、日本から輸出しているのだから、100歩譲ってアメリカでも同じような価格だと思う。

 なぜクラリティPHEVは日本で176万円も高いのだろう?  これまたホンダに聞くと「ハンドルの位置が違うので」。

 う〜ん!  クラリティPHEVのために右ハンドル仕様を作ったというなら少しだけ理解できるけれど、燃料電池仕様のクラリティFCVの時から右ハンドル存在します。

 カマロやキャデラックなどアメリカ車が日本で高いのも納得できないけれど、クラリティPHEVの価格差についちゃ完全にホンダの恣意的な問題だと考えます。

■最終的にはメーカーがクルマの価値を決める!?

 ここまで読んで「じゃ価格は自動車メーカーが好き勝手に決めるのね!」と思うだろう。こらもう「そのとおり!」であります。

 自動車にかぎらず商品の価格設定は売る側の自由。買うかどうかについちゃ、お客さんの価値観で決まる。

 わかりやすいのは、登録ずみ新車。私が買ったBMW330eは登録しただけの新車だったけれど、350万円でした。

 新車価格の633万円という価格は「高すぎる」とお客さんは判断したワケ。安ければ売れるし、高いと売れない。

 クラリティPHEVも同じ。588万円を妥当と考えるユーザーからすれば、アメリカより176万円高くたって何の問題もなし。

 しかし!  国際的に見ると、状況が変わってくる。いわゆる不当廉売(ダンピングと呼ばれる)という問題が出てくるのだった。

 アメリカで日本車の売れゆき好調という状況を不満に思っているトランプ大統領からすれば「日本の企業はアメリカで不当に安い価格を付けアメリカの企業の商売をジャマしている!」ですね。

 この発言を受け、クラリティPHEVと同じようなPHVである『ボルト』を販売しているGMが「不当廉売で被害を受けている」と訴えたら、なかなか厳しい状況になってしまう。現在の情勢だとどうなっても不思議じゃない。

 ホンダに聞くと「まったく問題ないです」と言うのでクラリティPHEVはセーフなんだと思う。

 となれば、日本と海外でどんな価格を付けてもOK。高ければ売れないだけです。

■走りも先進技術もホンダ史上最高か!?

 試乗といきましょう。スタートボタン押すと、電気自動車のような手順でシステムが立ち上がる。

 ほぼ満充電状態だったが、EV航続距離は75km(カタログ値JC08モード=114.9km)と表示されている。

 Dレンジをプッシュしてアクセル踏みこむと、圧倒的に静か&快適だ。昔から高級なエンジンを「モーターのように静か」と例えてきたが、クラリティPHEVは正真正銘モーター。

ホンダ史上最高かもしれない、とまでの高評価を得たクラリティPHEV。走りも安全面も最高クラスだ

 最高出力184psながら、エンジンと違う出力特性を持つため、3000cc車と同等の走りを楽しめます。

 電気自動車としての航続距離だけれどエアコンなど使う極めて実用に近い走り方をするアメリカEPAモードで75km(奇しくも今回表示された航続距離と同じ)。

 大雑把なイメージとしてエアコン使って75km。使わなければ90kmくらいだと思う。これだけの航続距離あれば、ほとんど電気自動車として使えることだろう。

 参考までに書いておくと、電池カラッポから満充電までの電気料金は家庭用の夜間割引電力契約(東京電力は新規契約を行っていない)であれば150円程度。

 ガソリン1L分のエネルギーコストで75〜90km走るという理解でよいと思う。

 また、日当たりいい駐車場であれば、クラリティPHEVのガレージの屋根に太陽光発電パネルを置くことにより、年間5000km走らせる程度の電力になる。

 エネルギー自給自足も見えてくるから素晴らしい。こういったあたりに電動化技術の将来性&ポテンシャルを感じます。

 加えてホンダが今まで販売したクルマのなかでNo.1と思えるほどよい仕上がり。すべて快適です。

クラリティはFCV(燃料電池自動車)とPHEVでホンダのエコイメージを先導する役割があるが……

 採用されている技術は世界最先端と言ってよかろう。効率のいいモーター、発電用エンジン。

 さらに直流を交流に変える小型軽量インバーターや、耐久性も重視した水冷式リチウムイオンバッテリー等々、昨今重要視されている電動化のためのアイテムをすべて高いレベルで実用化してきた。

 安全関係も万全。ホンダの新しい世代の自動ブレーキシステムを採用している。環境と安全という現在クルマに必要とされている”性能”をフルに満たしているのだから魅力的だ。

■価格以外にも売れないと主張する理由がある

 そんな素晴らしいクラリティPHEVながら、日本では99%の確率で売れないだろうし、半年もすれば話題にもならないと思う。

 なぜだろう?  超が付くほどカッコ悪く、これまた超が付くほど高価だからだ。

 前者については「好き嫌いは人によって違う」というエクスキューズもあるだろうけれど、100歩譲ってまぁまぁのデザインだったとしても、4ドアってどの国や地域でも売れ筋じゃない。

 SUVボディを選ばなかった時点で「難しい」。価格は絶対的な金額だけでなく、気分からして悪い。なぜか?

 前述のように 同じ内容のクルマをアメリカでは180万円程度安い価格で販売しているからだ。

セダンボディで登場したクラリティPHEV。セダンの時点で優位性が薄れると国沢氏は指摘する

 個人的にはアウトランダーPHEVと同じ程度の価格がホンダという企業の『社是』にある適正な価格だと思う。

 そうそう。「国内営業部門の強いリクエストにより、急速充電器を付けたので」とホンダはいうが、クラリティPHEVに急速充電器は必要か?  

 ホンダの充電料金プログラムだと30分の急速充電に480円(16円/分)かかり、走行可能距離70km。

 同じ距離をハイブリッドモードで走ればガソリン代450円ほど。ユーザーにとってまったくメリットなし。

 そんなことから、クラリティPHEV、とってもよいクルマながら、残念なことに日本じゃたいした数は売れまい。

最新号

ベストカー最新号

ベストカー 10月10日号 スバル・ミドシップスポーツの真偽に迫る!

 毎月10日と26日に発売される自動車総合誌「ベストカー」の最新号が本日発売! 今号の巻頭スクープは衝撃情報の真偽を追跡。その衝撃情報とは、なんとスバルからミドシップスポーツが市販されるというもの。本誌スクープ班が総力をあげてその情報の核心…

カタログ