■なぜ欧州ではCVTは普及しないのか?
一方、先にCVTを導入しはじめた欧州では、そもそもマニュアルシフト車が基本で、それは3ナンバーの普通車にもおよぶ。米国のように自動変速が8~9割というような習慣はなかった。
したがって欧州ではトルクコンバーター式の自動変速の普及は遅れたし、大衆車から普通車まで、マニュアルトランスミッションのほうが燃費もよく、運転も快適という意識が強く、CVTであっても自動変速を選ぶ理由がなかった。
自動変速の採用が広がりだしてからも、ロックアップの技術を利用したトルクコンバーター式が大きな車種で利用される、小型車ではマニュアルトランスミッションの変速機を活用したDCT(デュアル・クラッチ式トランスミッション)が普及した。
米国は、ガソリン価格が日欧の1/3ほどであったから、多少燃費が悪くても、トルクコンバーター式の自動変速機で不満がなかった。なぜガソリン価格がそれほど安いかといえば、クルマは必需品であり、貧富の差なく利用できるよう、税金がほとんどかかっていないためだ。
以上のような、技術的、あるいは国や地域でのクルマ社会の違いによって、日本車にCVTが増えるようになった。
副変速機や発進用の減速機構を併用することで、運転での違和感を抑え、変速の幅を広げたCVTは、大排気量エンジン用やチェーン式なども加わり、より高性能エンジン車への適応も可能になっていった。
したがって、スポーティな車種へもCVTが展開されるようになったのである。また変速の幅が広がることで、歯車式でいえば6~7速といった変速幅を持てるようになり、それを利用してマニュアル操作でステップ変速を疑似的に体験できる制御も組み込まれるようになった。
そして、トヨタのGRヤリスにもCVT車(発進用歯車付)の選択肢がある。SUBARUのガソリンターボエンジン車にCVT(チェーン方式)が採用されている。
いいCVTの指標とされる、レシオカバレッジ。最も低速のギア比を最も高速のギア比で割って求める値だが、この値が大きいほど、エンジンが低回転のままで走ることができる車速の幅が広いことになり、低燃費で静粛性に優れるということになる。レヴォーグとフォレスターの1.8Lターボのレシオカバレッジ8.098は8速ATと同等である。
■レシオカバレッジの高い主なCVT搭載車
・レヴォーグ1.8、フォレスターSPORT1.8/8.098
・レクサスUX、ハリアー、RAV4/7.555
・GRヤリス、ヤリス、ヤリスクロス/7.521
・スイフト1.3/7.284
・インプレッサスポーツ1.6/7.031
・シビックセダン/6.531
・ekスペースG、デイズルークスターボ/7.285
・ハスラーXターボ、ワゴンRスティングレイHV/7.284
・アルトX、アルトラパンX、ワゴンR HV/7.197
・タントXターボ/6.619
※レシオカバレッジは4速ATで4程度、6速ATで6程度、8速ATでは8程度、9速ATでは9.8、10速ATでは8.23となっている。CVTは一般に5.5~6程度。
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