ディーラー車検と整備工場 ユーザー代行車検の違いは何?

■昔からディーラーのメカニックは冷遇されてきた

国産ディーラーのメカニックは昔から待遇面で冷遇される傾向があった。各社には改善を要求したい問題だ(hedgehog94@Adobe Stock)
国産ディーラーのメカニックは昔から待遇面で冷遇される傾向があった。各社には改善を要求したい問題だ(hedgehog94@Adobe Stock)

 もともと、国産ディーラーのメカニックは冷遇される傾向が続いてきた。筆者は30年以上前、あるディーラーのメカニックの求人募集に応募しようと思ったことがある。

 しかし、そこで提示されていた初任給は10万円を切るほどの薄給であり、「これじゃクルマ買えないじゃん!」と思い、倍以上の給料が提示されていた同じディーラーの営業マンとして就職した経験がある。

 当時はメカニックでも数年務めると、一度営業職へと配置替えされるなど、整備よりも販売による収益を重視した傾向だった。

 その後、販売競争が激化したり、景気が低迷するなど新車販売での収益性が低下すると、車検や修理で収益を上げる構造へと変化していったが、それでもメカニックの待遇は営業やその他の職業に対して低めである傾向は変わっていないようだ。

 また、メカニックとして長く務めていても、やがて班長、工場長、グループ長といったように出世していくことで、メンテナンスの現場からは離れるようになってしまい、熟練メカニックの経験やノウハウなどが現場で活かされないという問題もある。

 そのため現場のメカニックという仕事にこだわりたい人は、独立して修理工場を開いたり、修理工場の工場長(プレーリングマネージャーのように、自分でもメカニック作業をこなす)に転職する人が少なくなかった。

 最近は人手不足と高齢化によって、40代以上のメカニックを募集する求人も珍しくないが、それでも同年代のサラリーマンの平均収入よりは収入は低めとなっているのが現実のようだ。若いメカニックからは給料が安い、辞めたいという声がネットにも多く上げられている。

 ディーラーのメカニックの待遇が改善されていかないのは、営業マンのように売り上げで歩合給などが加算されないことに加え、高価な診断機の導入など設備投資の負担が大きいことも影響している。

 しかも複雑な構造の車体側の電子制御系と診断機の連携は、常に完璧な成果を約束する訳ではなく、時には診断機の故障診断結果から、別の原因を推測して修理を進めるような難易度の高い修理も発生するのだ。

 だが、前述のように整備の経験豊富なメカニックはディーラーの現場にいないため、診断機で特定できないトラブルは解決できないケースも出てくる。

 そこで頼りになるのが熟練メカニックの居る整備工場だったりするのである。これは国産ディーラーに限った話ではなく、むしろより高級で複雑な輸入車の方が多く発生している印象がある。

 ともあれ、ディーラーのメカニックは、車検整備というクルマの安全性を支えているにも関わらず、他の職業に比べて恵まれているとは言い難い環境に置かれている。

 このままではスピード車検以外の整備でも問題が起こる可能性が高まるばかりだ。自動化やメンテナンスフリーにも限界があるのだから、欧米のようにブルーカラーでも特殊な(国家資格が必要など)職業はもっと待遇を改善すべきだろう。

■それでも現時点でのディーラー車検は安心できる

不正が行われず、ユーザーも時間と費用を惜しみさえしなければ、ディーラー車検はやはり安心できる(Kawee@Adobe Stock)
不正が行われず、ユーザーも時間と費用を惜しみさえしなければ、ディーラー車検はやはり安心できる(Kawee@Adobe Stock)

 ではディーラーでの車検は信用ならないのか、と言えば現時点ではそんなことはない。

 ほとんどのクルマにおいて診断機による故障診断は正しい結果を導き出してくれるし、全国のディーラーメカニックは車検整備(点検項目が非常に多い24ヶ月点検)をキチンと施してくれるから、安心してクルマを走らせることができるだろう。

 それにディーラーで車検整備を受けた場合、部品や整備内容について一定期間(6ヵ月が一般的なようだ)の保証が付くことも大きなメリットだろう。

 ではディーラー以外の整備業者を利用するメリットは何であるかといえば、それは完全に費用の安さしかないだろう。人によっては、ディーラーに車検に出すと、愛車の査定額を算出されて、新車への買い替えを勧められるのが煩わしいと思うかもしれない。

 ともあれディーラー以外の自動車整備業者を車検で利用するのはコストパフォーマンスの追求しかない。それでもメンテナンスフリー化の影響で、クルマに問題がない高年式低走行であれば、問題は少ないハズだ。

 ただしユーザー代行車検や格安車検を謳っている業者のなかには、普通に車検を取得するだけなら謳い文句の通り低価格でも、部品交換などの作業が必要になった場合に結構な費用がプラスされる場合もある。ブレーキパッドなどの通常の消耗品なら車検用や中古車店用に激安の社外品が出回っている。

 けれども、そうした激安品のブレーキパッドは、とりあえず使えるものの真っ黒いブレーキダストが出て、ホイールを汚したり、ブレーキペダルへの踏力に対してあまり反応してくれない利き味の鈍い特性だったりと、安全面や走りの質、美観の面で問題があるものも多いので注意することだ。

 部品代が安くても、洗車の必要性が増えれば、それだけでもメリットは少なくなる。

 初年度から7年目以降あたりからは、メンテナンスフリーの恩恵はなくなるので、そのまま車検をパスすることはないと思っていたほうがいい。そうなると、どこに車検に出しても工賃や部品代はかかってくる。

 車検はユーザー代行車検で取得しても、後からディーラーで修理するのであれば、最初からディーラーで車検整備を行なってもらった方が、修理の工賃が安くなるので(点検整備との重複作業分が差し引かれる)、良く考えて利用することだ。

 ガソリンスタンドでも車検を請負っているところも多い。ガソリンスタンドではガソリンの割引券を特典として用意しているところもある。最近の燃料の高騰も、車検と合わせて考えて対策する方法もあるのだ。

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