かつてプレリュードのCMで大ヒットした4WS!! 最近採用車種が増えた理由とは?

■4WSのメリットとは?

1987年登場のホンダ プレリュード(3代目)。機械式4WSを採用し、逆位相制御と同位相制御の両方を備えていた
1987年登場のホンダ プレリュード(3代目)。機械式4WSを採用し、逆位相制御と同位相制御の両方を備えていた

 では、そもそも4WSとはどんな働きを持っているのでしょう。4WSの制御には、ハンドルを切ったのと反対に後輪が切れる逆位相制御と、ハンドルを切ったのと同じ方向に切れる同位相制御があります。

 2輪車で考えるとわかりやすいです。例えば前輪左に切ったとき、前輪の向きと直角の垂線と、後輪のタイヤの向きをと直角の垂線の交わるポイント(交点)が旋回半径になります。

 この状態で後輪が右(逆位相)に切れると、交点は近くなるので旋回半径が小さくなります。逆に後輪が左に切れる(同位相)と交点は遠くなるので旋回半径が大きくなります。

 つまり逆位相側に切るとクルマは小さくクイックに曲がり、同位相側に切ると曲がりにくくなる(安定する)わけです。

 HICASは同位相制御のみだったと書きましたが、ほとんどの電子制御4WDは逆位相と同位相を組み合わせています。車種にもよりますが、80km/h以下くらいまでの低速域では逆位相に切れ、それ以上の高速では同位相に切れます。

 ホンダの機械式4WSがユニークなのは、走行時の舵角に着目して、低速ではハンドルを大きく切るので、ハンドルをたくさん切ると小回りが利くように後輪は逆位相に切れ、高速走行時はハンドルをあまり切らないので、舵角の小さいところは同位相になるように設計されていました。

 ホンダではメンテナンス性なども考えて機械式を採用したようですが、ほかのメーカーの4WSは電子制御方式だったので、マイナーなシステムになってしまいました。

 ただ、雪上試乗会で試乗したとき、クルマが曲がらなくてハンドルをたくさん切ると4WSが逆位相になってクルマが曲がるのをアシストしてくれるという副次的効果がありました。

 クルマのセオリー(スリップアングルが大きくなってしまったらタイヤは曲がる力が小さくなってしまう)とは違ってしまうのですが、案外有効なセッティングだと感じたのを記憶しています。

 ところで後輪操舵を採用する目的ですが、軽快な小回り性能(俊敏性)と、安定性(スタビリティ)を両立させることです。80年台当時、ほとんどの自動車メーカーが抱えていた問題は、FF車は曲がりにくく、FR車はリヤのグリップが不足しているということでした。

プレリュードの機械式4WS
プレリュードの機械式4WS

 FF車はもともとフロントヘビーなため、前輪だけを太くしてグリップ性能を上げると、リヤの安定性が極端に悪くなってしまいます。そのためむやみに前後異サイズタイヤを履くのが難しいのです。

 FR車は前後異サイズタイヤを採用しているクルマがありますが、リヤタイヤだけを太くすると普段の走行でアンダーステアが強くなり過ぎてしまいます。

 限られたタイヤキャパシティの中でさらに操縦性を高めるために4WSは理論的にはとても魅力的なメカニズムなのです。

 そんなこともあって、百花繚乱と言いたくなるくらい様々なメーカーから4WSが登場したのです。ですから、これを契機にさらに進化していくのかと思いきや、花火のように一発ドーンと打ち上げただけで、ほとんどのメーカーは4WSをやめてしまいました。

 その理由で最も大きなものは運転に違和感があるということです。逆位相制御では、ハンドルを切った量よりもクルマが余計に曲がろうとしてしまう。同位相制御では、ハンドルを切るとクルマが内側に寄ってしまう。といった違和感を訴える声が多く聞かれました。

 この症状は、文字にするととても似た症状に見えますが、逆位相は鼻先がぐいぐい曲がっていく感じ、同位相は後輪もハンドルを切っている側にタイヤが切れるので、クルマ全体が内側に寄って行くような動きとなります。

 また、FR車では、リヤタイヤが滑ってカウンターステアを当てるような場面になると、後輪操舵によって起こる後輪のグリップの変化や制御の応答の遅れが、予想外の動きとなって表れ、コントロール性を悪くさせることになりました。

 もちろん制御の仕方次第なのですが、1980年台当時、電子制御パーツの精度がいまほど高くなかったことや、クルマのボディ剛性が高くなかったことなどが理由で、クルマの微細な動きからくる違和感や予想外の動きを消すことができなかったのでした。

次ページは : ■電子機器の進化で4WSがより実用的に

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