■日本のエネルギー政策はどこへ向かう?
日本を見るとどうか? これがサッパリわからない。そもそもカーボンニュートラルを実現しようとすれば、化石燃料に代わるエネルギー戦略が必要。西洋社会は太陽光や風力に代表されるクリーンエネルギーの比率をドンドン進めている。
我が国を見ると政治家や企業、地方自治体が利益誘導をしており、最新の目標を見ても2030年に原発で作る電力を現在の6%から20〜22%に高めようとしているのだった。現在残している原発をすべて動かさないと実現できない目標。
新型コロナ対応を見れば、カーボンニュートラル戦略も政治に期待するのはリスクが大きい。
最近西洋で論議されているのが「乗用車という道具を考えた時、最も効率のよいエネルギーは何か?」というもの。ここにはカーボンニュートラルという概念なし。純粋に物理的な効率が論議されているという。
興味深いことに、優勢意見は「乗用車なら電気自動車」。
根拠を聞くと、クルマを1km走らせるためのエネルギーコストは電力が最も安いという点にある。
電力、現在の我が国ですら1kWhあたり15円あれば作れる。電気自動車だと15円で7〜8km走れてしまう。
この距離、ガソリンで走らせるなら、効率のよいハイブリッドだったとしても0.3L程度消費する。ガソリンがリッターあたり50円以下になれば電気自動車より効率いいが、そんなこと考えられない。
しかも発電コストはさらに下げられ、電費だって向上の余地大きい。電気自動車の車両価格がエンジン車と同じになった時点でゲーム展開は大きく変わり始めるだろう。
■水素エンジンやe-fuelは2035年に間に合うか
地球環境を考え、要はCO2を排出しなければいい……という考え方もあり、内燃機関採用の切り札とも言えるのが水素エンジンとeフューエルだ。トヨタやポルシェなどが研究を進めるこれらが、2035年の実用化に間に合うのか。
EVに対するアンチテーゼとなっているのが、大気中から二酸化炭素を回収して液体燃料を作る広義の『eフューエル』と、燃焼させても水しか排出しない水素エンジンである。
eフューエルについて「広義」と書いたのは、大気中の二酸化炭素を化学合成して液体にする方法と、サトウキビやミドリムシなど藻類から作るアルコール系の液体燃料を含むためです。実際、植物由来のバイオエタノールはすでにブラジルやメキシコなどで昔から使われており、カーボンニュートラル。
F1やWRCではeフューエルを使うことが決まっており、技術的な問題はなし!
バイオエタノール燃料でカーボンフリーをするなら、1年後に販売しているクルマのすべてを切り替えられるだろう。したがってエタノール系のeフューエルでカーボンフリーをする場合、それほど大騒ぎする必要ないと思う。
ところが、である。欧州の情報を詳細に分析すると、どうやらeフューエルもダメらしい。もはやエンジンをなくせ、みたいな方向。
●水素エンジンは戦力外!?
実際、欧州系の自動車メーカーはエンジンの開発を凍結しているのだった。少なくとも乗用車や小型トラックくらいまではEVしか認めないという雰囲気。こうなると欧州についちゃeフューエルも水素エンジンも戦力外になってしまう。
アメリカと日本はどうだろう? 現時点では流動的。特にアメリカは大統領次第で相当動く。すでにE85というメタノール85%/ガソリン15%の燃料を売っており、価格もガソリンと大差なし。採用の可能性は充分にある。
●日本の一番のネックは?
我が国はどうか? 一番のネックになっているのがeフューエルの価格だ。農地が少ない日本の国土事情を鑑みると、バイオ系のアルコール燃料は安くならない。藻類由来のeフューエルは供給量だけでなく、コストダウンも難しい。
現在のガソリン価格(税抜きで1Lあたり50〜70円)まで落とすのは難しいと言われる。水素エンジンはカーボンニュートラルで条件的にはクリアできるものの、これまたコスト的にガソリンより高くなるそう。
電気はどうか。コストで圧倒的にガソリンより安価。政府さえホンキになれば、太陽光だけでなく地熱や風力から作れるため国内調達可能。現時点では車両価格がガソリン車より高いものの、技術革新や素材の進化でバッテリーコストが下がってくると、ガソリン車と同等の価格になるだろう。
EVが増えれば充電インフラだって整ってくる。なんせ目標は29年後2050年ですから。現状で「充電インフラが」と言ってるのはオタンコです。
●可能性はありえる
ということで日本や欧州において乗用車は電気が最も可能性の高いパワーユニットになると思う。ただ新興国やアメリカなど、バイオエタノール系のeフューエルが使われることは充分にありうる。はたまたスポーツカーやディーゼルエンジンの代替エネルギーとして水素エンジンが使われることだってあるだろう。
このあたり、まだまだ技術だって進む。豊田章男社長じゃないけれど、さまざまな可能性を考えたアプローチが重要。現時点で「これだ!」という決め打ちは、何の意味も持たない。
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