■転機は2011年! この先ユーザーのニーズはどう変わる?
プレミオ・アリオン、そしてプリウスαは、売る側にとっても扱いやすいクルマだった。特に2010年代の初め、3台の活躍には目を見張るものがある。
2010年から現在までの約10年間で、クルマに対するユーザーのニーズが大きく変わっていったように筆者は思う。性能の高さ、外観のカッコよさ、内装の豪華さなどを競った1990年代から、2000年以降はクルマ選びが堅実になったように感じるのだ。
ターニングポイントとなったのは東日本大震災。以降、被災地を中心にクルマを自由に選べない時期が続いた。ユーザーがクルマに対し、ステータス性を求めることなく、単純な移動手段としてクルマを確保しなければならない状況となる。
特に筆者は被災地・宮城で仕事をしていた。「好きなクルマではないけど、仕方なしにこのクルマを買ったんだ。」というユーザーを何人も知っており、クルマ選びの軸が変わったことを現場で強く感じていた。
一度捨ててしまったクルマへの想いは、簡単に回復できるものではない。その後も2010年代は全国で地震・台風などの被害が相次ぎ、クルマを失う方が多かったと思う。災害が発生する度に、なりふり構わず目の前にあるクルマを選ばなければならない瞬間がやってくるのである。
震災以降、新車・中古車を販売していると「クルマは乗れればいい、こだわりはない」と答える人が増えた。クルマは個人が持つステータスの対象ではなくなり、より身近なスマホなどのIT機器へステータスの象徴が変わってしまったのだろう。
近年、クルマにステータス性を求める動きは回復してきたように思うが、上級クラスのクルマに限定されているように感じる。ハリアー、アルファードなどにステータス性を求めるニーズはあるが、中間層のクルマに対してステータス性を重視する動きは小さい。
経済的な格差が広がっている現代社会で、クルマの売れ方にも、その影響は大きく感じられる。
移動手段として充分な、安くてそこそこなもの(コンパクトカーやスモールミニバン)と、権威性を強く感じるもの(ラージサイズのミニバンやSUV)に販売は二分化され、中間層のクルマたちが目立たなくなっているのだ。こうした傾向は、今後も続いていくと思う。
プレミオ・アリオンやプリウスαといった、今年消えたクルマは、こうした中間層の代表的車種だ。時代の変化によりユーザーの嗜好が大きく二つに分かれ、かつての人気車種は不要となってしまったのだろう。
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さまざまなことがあった2021年。一年を振り返るなかで年末は、消えていったクルマ達に思いを巡らす時間を取ってみてはどうだろうか。消滅したクルマを見ると、時代の動きが見えてくる。
プレミオ・アリオン・プリウスαが支えてきた自動車ユーザーを、次はどのクルマが支えていくのだろうか。今、その候補は非常に少なくなっている。
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