新型Zのモチーフにもなった名車 Z32型フェアレディZの魅力と知られざる真実

■すべてが完璧なクルマでサーキットへ

 というわけで、スペックとデザイン、そして最小限の実用性を兼ね備えていたZ32は、ある意味完璧なスポーツカーだったのである。

 Z32が発売されたのは1989年7月。翌8月にはR32スカイラインGT-Rが発売されている。歴史に残る名車が、わずか1カ月間隔で発売されたのだから、当時の熱狂は、それはもう凄まじかった。

 個人的には、ZにするかGT-Rにするか一瞬迷ったが、最高出力は同じ280馬力だったので、デザインを優先してZを選んだ。

 当時の感覚では、Zはグラマラスな美人系で、ルックスは満点。対するGT-Rは武骨なマッチョ系だ。あとから振り返れば、性能的には圧倒的に32GT-Rだったわけだが、出てすぐの頃は、それほどの差があるとはわからなかったし、わかっていても自分は、やっぱり美人系のZを選んだだろう。

1998年最後のマイナーチェンジでは、エアロ一体型のフロントバンパーやリアスポイラーなどを装着している
1998年最後のマイナーチェンジでは、エアロ一体型のフロントバンパーやリアスポイラーなどを装着している

 サンニーZは、発売と同時に注文が殺到。一番人気は、私が注文したのと同じ2by2のツインターボ5速MTだった。

 納車されてしばらくは有頂天だった。280馬力のパワーも、マルチリンクサスの操縦性も最高。当時ワインメイクレースに出場し始めていたので、愛車の限界性能を試すため、ナラシが終わると早速、富士スピードウェイでの走行会に参加した。ピットアウトし、徐々にタイヤを温めて、ホームストレートから全開。まず1周目はブレーキをいたわろうと早めにブレーキペダルを踏んだ瞬間、背筋が凍った。

 ブレーキがなかったのだ。いきなりスコーンと抜けていた。正確には、床の寸前でギリギリ残っていたので、そこからポンピングしまくりながら減速し、なんとか1コーナーを曲がったが、1周目でもうブレーキがないってどういうことだ!?

■エンジンルームの問題を超える魅力

 原因はベーパーロックだった。1周でブレーキフルードが沸騰し、ブレーキホース内に気泡が発生したのだ。サンニーZのエンジンルームはギッシリで、冷却が非常に厳しかった。我が愛車の場合、個体差か、エンジンの熱がブレーキホースにもろに伝わってしまったらしい。

 まさか、総額500万円近く出して買ったばかりの愛車が、サーキットで1周も持たないとは……。あきらめ切れず、ブレーキを冷ましては走り、冷ましては走ったが、思い切って攻められるはずはない。ブレーキ性能に関しては、ローター径がスカイラインGT系と同じで、車両重量に見合っていなかったのも痛かった。公道では完璧に思えたコーナリングも、サーキットではかなりアンダーステアだった。

「こんなクルマだったのか……」そう思いつつも、やっぱりルックスは国産車最高。大枚はたいて手に入れた愛車を、そう簡単には見限れない。気休め的にブレーキを強化したり、ポルシェのグリーンにオールペンしてルックスを磨いたりしたが、エンジンルームの熱問題はどうにもならず、約2年で手放した。

2021年に発表された新型フェアレディZ(左)のリアコンビネーションランプは、Z32(右)のオマージュとも言えるデザインを採用
2021年に発表された新型フェアレディZ(左)のリアコンビネーションランプは、Z32(右)のオマージュとも言えるデザインを採用

 つまるところサンニーZは、カッコと馬力だけのスポーツカーだったということになる。しかし同車は、国産車として初めて、輸入車とガチで渡り合える、グラマラスな全幅とデザインを与えられたスポーツカーだ。スペックとルックスに対して、中身が追い付いていなかった部分も含め、いい意味でアメ車的な、魅力的なクルマだった。

 Z32型フェアレディZの現在の流通状況を見てみよう。執筆時点の流通台数は約90台、相場は150万円から550万円というところだ。R32スカイラインGT-Rが、500万~2000万円と暴騰しているのに比べれば圧倒的に安く、海外流出も少ないのでタマ数も多い。

 モータースポーツで使い物にならなかったため、酷使されたり、激しい改造を受けた個体は比較的少なく、MT車とAT車の価格差も小さいのが特徴だ。カッコと馬力のスポーツカーだったからこそ、現在でも比較的手に入れやすい状況が続いていると言える。

【画像ギャラリー】名車・Z32のワイドなスタイリングと歴代フェアレディZを一気に見る!(12枚)画像ギャラリー

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