EVでもレトロさが受ける!?  FJクルーザーの再来 コンパクトクルーザーの期待値

EVでもレトロさが受ける!?  FJクルーザーの再来 コンパクトクルーザーの期待値

 トヨタは2021年12月、一気に16車種ものEVを発表したが、そのなかで、後方に置かれつつ注目度が高かったのが、「コンパクトクルーザー」だ。そのデザインは、生産が終了したFJクルーザーを彷彿とさせた。

 FJクルーザーは、ランクル40系をモチーフとしつつ、ランクルプラド(現行)をベースに、未来的かつオモチャ的なデザインにまとめたモデル。もともと北米向けだったが、日本でも逆輸入車人気が高まったことから、トヨタが国内への投入を決定。2010年から2018年まで販売されていた。

 FJクルーザーは、4リッターのV6エンジンを搭載していた。車両重量は1950kgあり、JC08モード燃費は8.0km/L。実燃費は5km/L強と厳しかったが、EV化さればゼロエミッション。もともとSUVタイプはEVに向いているし、実現性は十二分だ。

 いずれにせよ、コンパクトクルーザーのキモはデザインにあるわけだが、その評価はいかがなものか。

文/清水草一
写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】2018年に生産が終了したFJクルーザーの歴史を画像で振り返る(13枚)画像ギャラリー

■リーズナブルで個性的だったFJクルーザー その魅力と抱えていた課題

 まずFJクルーザーについてだが、確かに魅力たっぷりのデザインだった。

 ランクル40をモチーフにしただけに、顔つきは万人にアピールするレトロモダン調。フロントウィンドウの直立ぶりもレトロそのもので、テリー伊藤さんは「それだけで涙が出るよ!」と熱く語っていた。

FJクルーザー。2006年に北米で販売を開始、2010年に日本デビューした
FJクルーザー。2006年に北米で販売を開始、2010年に日本デビューした

 ドアはなんと観音開き。リヤドアは、RX-8などと同様の逆開きタイプだった。これは、異例に太いピラーによって、リヤドアの前後長を短くせざるを得なかったためだが、それによって、クロカンSUVとは思えない軽快なルックスを実現している。

 RX-8同様、リヤドアだけを開くことはできないため、乗降性は悪かったが、デザイン優先の結果であり、ファンは納得しただろう。

 とにかくFJクルーザーは、見るからに楽しいデザインだった。しかも価格は300万円台前半と、驚くほど安かった(ファイナルエディションで349万2700円)。

 ベースになったランクルプラドは、2.7リッターガソリンで最低366万円から(現在)なのだから、「何かの間違いじゃないか?」と思うような値付けだった。このデザインでこの中身でこの価格なら、爆発的に売れてもおかしくないところだが、FJクルーザーは、あまり人気にはならなかった。

 その主な原因は、結局デザインにあったのではないかと考えている。FJクルーザーのデザインは、あまりにも面白すぎた。自動車デザインにはある程度の遊びが必要だが、FJクルーザーの遊びは若干行き過ぎていて、やや機能から外れる部分があった。ファッションで言えば、芸能人だけが着こなせるような、個性の強い服である。

FJクルーザー”レッドカラーパッケージ”内装
FJクルーザー”レッドカラーパッケージ”内装

 FJクルーザーを絶賛していたテリー伊藤さんの服装に近いかもしれない。我々がテリーさんのファッションを見れば、個性的でカッコいいと感じるが、じゃ自分で着るかと問われれば、「結構です……」となってしまう。

 FJクルーザーは、一部で非常に人気があったが、日本での売れ行きは、コスパの高さを考えると、驚くほど悪かったのである。

 FJクルーザーに近い例として、ホンダのエレメントがある。同じく観音開きドアを持つ遊び感満点のMPVで、北米ではそれなりに好評だったが、日本ではサッパリ売れなかった。FJクルーザーやエレメントのような遊び感の強いデザインは、日本では「使いこなせそうにない」という連想を抱かせ、「欲しい!」と思うところまで行かないケースが多いのではないだろうか。

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