リトラクタブルヘッドライト搭載の名車たち
・マツダ (サバンナ)RX-7
1978年登場のSA22型初代サバンナRX-7、2代目のFC3S型、そして3代目のFD3S型まですべてリトラクタブルヘッドライトを採用していた。多くの人が、リトラクタブル式の代表車種として挙げるのがRX-7だろう。
初代の低く構えたフロントノーズとウェッジシェイプデザインは、やはりリトラクタブルヘッドライトがなければ完成しない。RX-7の象徴的な装備であるが、2002年にRX-7が生産終了して以降、国産モデルではリトラクタブルライトの採用例がない。日本のリトラの歴史はRX-7が主役だったといって過言ではないだろう。
・トヨタ スープラ(A70型)
1986年登場のA70型スープラは、先代に相当するセリカXXのスペシャルティカー要素にスポーツの要素が加えられたモデルで、特に1999年8月にマイナーチェンジで追加された2.5GTツインターボは、走り屋の間で人気のグレードだった。
長いボンネットにリトラクタブルヘッドライトというスタイリングは、シンプルでスマートな本格スポーツカーという印象。まさに機能美と優雅さの融合、といったモデルだった。
・ホンダ 初代NSX(NA1/2型)
世界初のオールアルミモノコックボディーを持つスーパースポーツモデルとして1990年に登場したNSX。軽量なシャーシに3.0L V6DOHC VTECエンジンをミッドシップに搭載し、世界のライバルと渡り合える究極のハンドリングマシンを目指して開発された。
2001年のマイナーチェンジでヘッドライトが固定式に変更されたが、初代NSXと言えばリトラクタブル式のイメージが強い方は多いだろう。
・トヨタ 初代MR2(AW11)
日本の自動車メーカーで初となるミッドシップモデルとして、1984年に登場した「MR2」。5ナンバーサイズのコンパクトなボディにミッドシップレイアウト、直線基調のデザインに低いボンネットというスタイリングで、抜群にリトラクタブルヘッドライトが似合っている。
1989年登場の2代目もリトラクタブル式だったが、ボディが大きくなったせいかリトラクタブルの印象はやや薄く、個人的には、初代モデルのほうが好きだった。
技術の進化で、デメリットが目立つように
リトラクタブル式が採用されなくなった理由にはいくつかあるが、ひとつは、ヘッドライトの技術が進歩し、プロジェクター式やマルチリフレクター式が登場したため、形状・サイズの自由度が格段に向上し、格納式にしなくてもスポーツカーとしての機能性とデザイン性を両立できるようになった、ということがある。
リトラクタブル式は、メカニズムが複雑なため、装備することでボディ先端部の重量が増加してしまう。これはハンドリングの悪化につながるし、格納しているときはいいが、展開した時には空気抵抗が大きくなってしまう、というデメリットもある。もともとスポーツカー向けに採用されたリトラクタブル式だったが、技術の進化で、格納式を採用する技術的理由がなくなるばかりか、デメリットのほうが多くなってきたのだ。
また、自動車の安全基準も徐々に高くなり、歩行者衝突時になるべく衝撃を和らげるよう突起を極力少なくしたり、ボンネットに厚みを持たせる設計にしなければならなくなってきた。イザという時にポップアップしない、という故障のリスクも避ける必要がある。
こうして実用性という面でも安全性という面でも、リトラクタブル式は採用されることがなくなっていった。
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現代の自動車に求められる安全性能や車両の軽量化を考えると、リトラクタブル式が復活する可能性は限りなくゼロに近い。しかし、やはり「変形」するカッコ良さは格別だ。文中で触れたように、国産車最後のリトラ搭載モデルは、2002年のRX-7、すでに20年選手となる。憧れのリトラのクルマに乗るなら、今が最後のチャンスだ。
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