ショッピングモールへ出店する意味を問う! クルマは売れるのか?
消費者の自動車ディーラーに対する敷居は、依然として高い。国道や県道などの主要道路沿いに軒を連ねる各社の販売店だが、入りにくさは感じるだろう。取材などで行き来に慣れている筆者でも、初めて入るお店では、結構な気を遣うのだ。一般のユーザーは、これ以上に息苦しさを感じるのではないだろうか。
「入ったら、何か買わされる」「買う気もないのに、興味本位だけで入るのは失礼だよな」と、ディーラーを敬遠する動きは強くなり、さらにコロナによる接触機会を減らす動きが、ユーザーを遠ざける。販売店としては、顧客との接触機会を増やそうと、様々な策を練るが、こうした傾向が大きく改善するまでには至らない。
トヨタオートモールに関しては、「ことのついで」という心理をうまく使い、ユーザーとの接触機会を自然に増やすための効果的な動きをしているように見える。
車両販売やサービスの実績は、ほとんどが確率論だ。例えば、新車を買ってもらえる確率は2割ほど、自社客の車検入庫が8割、12カ月点検が6割5分、6カ月点検が5割もあれば御の字だろう。この数字に対して、どれだけの母数があるかが、結果(台数)を生み出す。
筆者の体感だが、一般的なディーラーでは一日の来店組数が50組前後、そのうち7割程度(35組)はサービス入庫で、車両販売に関する来店は15組程度だ(これでも多い方だと思う)。先ほどの確率に、この数字を当てはめると、このお店では月(営業日数25日)に75台のクルマが売れる。大型店舗で営業マンは10~15名程度と考えると、一人当たり毎月5台の販売だ。
先ほど紹介したトレッサ横浜の平均年間来場者数は1300万人を超える。組数にしても450万組以上だろう。このすべてがトヨタオートモールへ立ち寄るわけではないが、これだけの接触機会を持てるわけだから、車両販売もサービスも、数打てば当たる確率も高い。
さらにモール内のテナントであれば、一般的なディーラーに入るよりも敷居は下がるだろう。販売業にとって、集客力は生命線であり、大型商業施設という人が集まる場所へ、気軽に入れるお店をつくるのは、理にかなっている。トヨタオートモールは、自動車販売業が今抱える悩みを解消する、良い仕組みなのかもしれない。
ディーラー店舗以外でクルマは売れる?車両販売への影響は大きいぞ!
筆者も店舗外展示や販売会へ駆り出された経験がある。イベントでは、普段お店に来ないような客層と触れ合う機会があり、「じゃあ次はお店で会いましょうよ」と約束し、そのまま販売に繋がることも珍しくなかった。以前は、全国各地で地域内のトヨタチャネルが一堂に会し、「オールトヨタ○○フェア」といったものを開いていたものだ。
クルマと触れ合う、クルマを意識する機会が非日常化している今だからこそ、日常的に利用するショッピングモールで、クルマのサービスを行うことは、大きな意味があるだろう。これまでの「当たり前」に縛られないトヨタオートモールの動きは、販売店再編が叫ばれ改革が続く今、中心的な動きになる可能性を秘めている。
独立した「クルマを売る場所」ではなく、施設や地域に溶け込む形でクルマを届ける。トヨタらしさが前面に出た取り組みだ。こうした動きが一般化され、ユーザーの利便性と販売店の利益がともに高まることを期待したい。
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