齢90余年の古豪復活 現役路面電車の走る街 併用軌道区間でクルマはどう走る?

期間限定の復活!鉄道ファンのみならず地元民も魅了そして現代での使い勝手は?

 クラウドファンディングを受けて大規模修繕を無事に終えた161号車は9月に復活し、阪堺電気軌道では、「一般の方々へも広く修復した姿をご覧いただくため」として2021年12月2日から2022年2月28日までの期間で定期運行を全線で実施した。同社では、公式インスタグラムで毎日運行情報を発信、今日は運行される、今日は静養しているなどを掲載し、少しでも多く161号車と接する機会を設けようと更新を行っていた。また、南海電鉄の公式アプリでは、列車の位置情報を把握できるページがあり、阪堺電車も確認できるため、161号車がどこを走行しているか一目でわかるように工夫が施されており、鉄道ファンなどはそれを確認しながら撮影場所の選定をしていた。

古豪モ161形161号。昭和、平成、令和と走り続け、間もなく車齢100年を迎えようとしている。釣り掛け式と呼ばれる旧式の駆動方式が、加速時に独特の“んグォォォォォ~”という音を発する。これがまた魅力的なのだ
古豪モ161形161号。昭和、平成、令和と走り続け、間もなく車齢100年を迎えようとしている。釣り掛け式と呼ばれる旧式の駆動方式が、加速時に独特の“んグォォォォォ~”という音を発する。これがまた魅力的なのだ

 久々の定期運行に多くの鉄道ファンはこぞって歓喜し、沿線で写真や映像の撮影、また、乗車して楽しむ愛好家や、独特の吊り掛け式駆動の走行音などを収録する愛好家もいた。

 地元の利用客からは「久々の電車やな」「すごい古い電車が走っててビックリした」などの声が聞かれた。一方、ご高齢の方にとって、バリアフリーの概念がなかった時代に製造されたモ161形は、車両の段差が高く乗降に苦労するため、一本やり過ごして別の電車に乗る方や、他の乗客の手助けを受けて乗降する姿を筆者は何度も見かけた。また、「古い電車は乗り降りし辛いから難儀する。もっと工夫するか、走らさんといてほしい」などの意見が乗務員や会社に寄せられることもあるという。

阪堺電軌にはバリアフリーに完全対応した超低床車、1001形、1101形(写真左の車両)なども導入されている。右はモ601形
阪堺電軌にはバリアフリーに完全対応した超低床車、1001形、1101形(写真左の車両)なども導入されている。右はモ601形

路面電車の走る街 自動車での軌道敷通行ルールはどうなっている?

 自動車教習所で習ったものの、忘れてしまっているかもしれない、関係ない地域だからとおろそかになりがちな路面電車関連の交通ルール。ここではおさらいをしていこう。

東京の「都電」にも短区間ながら併用軌道の区間が残されている。レールの上を走る路面電車と自動車の共存には、独特のルールが定められている
東京の「都電」にも短区間ながら併用軌道の区間が残されている。レールの上を走る路面電車と自動車の共存には、独特のルールが定められている

 軌道敷内は原則として通行できないが、右左折や転回、横断、道路が工事やその他障害、道路の幅員が狭い、危険回避などにおいては通行が可能である。また、軌道敷内通行可という標識があれば、軌道敷内を走行することができる。

併用軌道区間では、原則として軌道敷内は自動車の通行が禁止されている
併用軌道区間では、原則として軌道敷内は自動車の通行が禁止されている
この標識は「軌道敷内通行可」を示すもの。この標識がある場合は軌道敷内を走行できるが、レールの上は滑りやすいので特に注意が必要。また、路面電車が接近してきたときは軌道敷外に出るなど、通行を妨げないようにしなければならない
この標識は「軌道敷内通行可」を示すもの。この標識がある場合は軌道敷内を走行できるが、レールの上は滑りやすいので特に注意が必要。また、路面電車が接近してきたときは軌道敷外に出るなど、通行を妨げないようにしなければならない
阪堺電軌の沿道にはこのような看板も設置されている。レールの上は、特に雨などで濡れていると滑りやすく危険。二輪車は転倒にもより注意が必要
阪堺電軌の沿道にはこのような看板も設置されている。レールの上は、特に雨などで濡れていると滑りやすく危険。二輪車は転倒にもより注意が必要

 走行するにあたっても、軌道敷内を通行しているときに後方から路面電車が近づいてきたら、すみやかに軌道敷外に出るか充分な距離を取り、路面電車の通行を妨げてはならないとある。路面電車の通行を妨げた場合、軌道敷内通行禁止という違反になり、違反点数1点、反則金4000円(普通車等)となっている。右折レーンのない交差点で信号待ち中、軌道敷内で停車している車両をしばしば見かけるが、立派な違反なので右折待ちは軌道敷外の道路上で行いたい。

白いラインを黄色のラインで囲ったエリアが「安全地帯」を示す道路標示だ。当然ながら自動車の進入は厳禁である
白いラインを黄色のラインで囲ったエリアが「安全地帯」を示す道路標示だ。当然ながら自動車の進入は厳禁である

 次に、路面電車の電停(プラットホーム)に設置されている安全地帯という標識があるが、これは、車両は安全地帯への進入が禁止されている。また、安全地帯の左側と、その前後10m以内は駐停車禁止。歩行者のいる電停のそばを通行する際は徐行する、と規定される。標識以外にも白線と黄色線で囲まれたされた道路標示も存在する。これに違反すると、違反点数2点、反則金7000円(普通車等)と軌道敷内通行違反よりも重くなっている。

電停表示ポールに併設されている青地に白のV字の標識が道交法で規定される「安全地帯」の標識。自動車の進入は禁止される。また、路面電車の有無および乗降の状況にかかわらず、進行方向側の安全地帯に歩行者がいる場合には、徐行しなければならない
電停表示ポールに併設されている青地に白のV字の標識が道交法で規定される「安全地帯」の標識。自動車の進入は禁止される。また、路面電車の有無および乗降の状況にかかわらず、進行方向側の安全地帯に歩行者がいる場合には、徐行しなければならない

 最後に、通常の信号機の下に黄色の矢印信号が表示されるタイプのものを見たことがある方はいるだろうか。この黄色の矢印は路面電車へ向けて表示しているもの。歩行者や自動車はそれに従って走行することはできない。これに違反すると信号無視の違反となり、違反点数2点、反則金9000円(普通車等)となっている。

黄色で表示される矢印信号は併用軌道区間で路面電車に対して示される信号だ。自動車に向けたものではないので注意が必要
黄色で表示される矢印信号は併用軌道区間で路面電車に対して示される信号だ。自動車に向けたものではないので注意が必要

 2022年2月には広島で路面電車と自動車の事故が発生したが、路面電車が通る都市特有の事故も多い。大阪のような道路と線路が同居する併用軌道から線路だけの専用軌道に切り替わる場所は、進入禁止や点滅等などで注意喚起しているものの、併用軌道と同じように路面電車の後方を走行してそのまま専用軌道に入って走行不能になってしまった事故が特に夜間になると多い。また、渋滞時も線路側に寄りすぎてしまうと路面電車の進行の妨げや接触につながるケースもあるので注意して安全運転に努めたい。

併用軌道から専用軌道区間へと進行する161号。自動車の誤進入を防ぐため、専用軌道であることが大きく示されている
併用軌道から専用軌道区間へと進行する161号。自動車の誤進入を防ぐため、専用軌道であることが大きく示されている

 モ161形の161号車は百寿を目指して今後もさまざまな方から大事にされて活躍を続ける。偶然見かけたらラッキーなこの車両をぜひ探してみてはいかがだろうか。また、併用軌道を走行する際も含めてどうかご安全に!

大阪市内の併用軌道区間を行く阪堺電軌の161号。今後も貸し切り運転などでの運転されるほか、定期運転にも充当される可能性もある。末永い活躍を祈って止まない
大阪市内の併用軌道区間を行く阪堺電軌の161号。今後も貸し切り運転などでの運転されるほか、定期運転にも充当される可能性もある。末永い活躍を祈って止まない
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