■登録済み未使用中古車にはデメリットも
ほぼ新車といえるような高いコンディションのクルマが大幅な値引きで買えることはユーザーにとっては魅力だが、デメリットもある。
登録済み未使用中古車のようなクルマが割安な価格で大量に市場に出回れば、当然残価が下がる。その結果中古車の販売価格が安くなるだけでなく、買い取り価格や下取り価格などが安くなるという副作用があるのだ。
また、これは当時ニュースにもなったが、東京23区にあるBMWのディーラーでは、ディーラーが販売台数の目標を達成することができなかったため、ディーラー権を剥奪されたという事例もあった。
その事例でも2013年ごろから、ディーラーに対して過剰なノルマを課すようになったと書かれている。ノルマは「計画台数」というもので、実際にユーザーに販売した台数と自社登録したクルマ(登録済み未使用)の台数を合計したもの。この計画台数が自動車業界での実績と見なされるのだ。
2013年以降はこの計画台数が異常といえるほど増えて、登録済み未使用車の台数を増やさないとノルマを達成できなくなった。もちろん、計画台数をクリアすると、日本法人からボーナスが出る。しかし、このボーナスがなければディーラーの経営は成り立たないという。
この事例では、自社登録したクルマ、つまり登録済み未使用車の比率が計画台数の約40%まで増えていったという。こんな状況ではたとえ計画台数をクリアし、ボーナスをもらっても登録済み未使用車に掛けた費用を賄えなくなっていたという。
したがって、この費用を埋めるために、登録済み未使用車を100万円引きなどの割安な価格でリリースして資金を確保する販売店が多くなっていたのだ。
このディーラーでは、徐々にノルマの達成率が下がり、ディーラー権を剥奪される直前になると、日本法人からプレッシャーをかけられるようになったという。月末になると連絡があり、非常に苦しめられたということだった。
新車の販売台数にこだわり、無謀とも言えるノルマをディーラーに課した結果、登録済み未使用車が多く出回り、BMWやメルセデス・ベンツはこれまで築いてきたブランドイメージを失墜させることになったのだ。そしてBMWジャパンには公正取引委員会の査察が入ったことは多くのメディアで取り上げられた。
この公正取引委員会の査察により、輸入車の登録済み未使用車は沈静化に向かう。新車の納期遅延が深刻化するなか、注目が集まる登録済み未使用車。つい数年前で輸入車ではこのようなディーラーが身を切るような登録済み未使用車発生のメカニズムがあったのだ。
しかし、現在は輸入車の登録済み未使用車の発生量は一時よりは減少している。そもそもコロナ禍により輸入車の納車も遅延しているので、登録済み未使用車があれば、すぐに売れてしまうはずだ。
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