■植物を原料とすることで温室効果ガスを削減
なんだ元は植物でも最終的にガソリンなら使えばCO2が出るじゃないか、と気づいた人もいるだろうが、それはその通り。木や草、藻がその成長過程でCO2を吸収し、ガソリン使用時に排出されるCO2と相殺し合うことから、温室効果ガスの削減に寄与するという考え方だ。
なので実のところはカーボン・ニュートラル(炭素・中立)というよりカーボン・オフセット(炭素・埋め合わせ)燃料と表現するほうがより近しいのだが、スーパーGTにおいては『原材料に化石燃料を一切使わない燃料をカーボンニュートラルフューエル(CNF)と呼ぶ』と定義している。
CNFの利点として他に挙げられるのは、動力源が水素や電気の場合と違い、いまある内燃機関をそのまま使えなおかつ既存のガソリンスタンドを供給場所として使えることだ。水素ステーションや高速充電機のインフラがまだ十分とは言えない日本において、CNFはかなり利便性の高い燃料となる可能性を秘めている。
ドイツに本社を置くハルターマン・カーレス社は160年以上の歴史を持つハイドロカーボン(炭化水素)の特殊品製造化学メーカー。
製品は医薬用、産業用、農薬用のみならず、2024年からはドイツ初のSAF(サスティナブル・アビエーション・フューエル、持続可能航空用燃料)メーカーに認定されるなど、常に安定した品質と圧倒的な信頼を背景に様々な分野で広く使用されている。
モータースポーツ用の再生可能燃料は『ETS』名のブランドで展開されており、品質もさることながら、レース主催者等の要望に添ったいわば『オートクチュール』なモノ作りにおいて先んじている。
スーパーGT用の燃料もJISのプレミアム規格に則って開発された再生可能レース燃料で、使用に際してどのメーカーのどの車両でも、多少の調整のみでエンジンの性能低下を招かずに使うことができる。
無鉛ハイオクと遜色ない性能を発揮するハルターマン・カーレス社の燃料は、来春の正式導入を控えてGT500クラス各メーカーのベンチ検証テストが続けられ、8月の第5戦鈴鹿後にはGT500、GT300両クラスの全車が参加した実走テストがを行われる。
1シーズン30万リットルの利用が見込まれるスーパーGT用燃料は、英国の工場で生産されて船舶で日本に輸送。同じロットで生産された同じ品質の燃料は大阪の倉庫に貯蔵され、レース事に取り出しサーキットへ運び込まれる予定だ。
気になる価格は、廃棄物である原材料費は安いのものの生産工程の多さによるコストがかさみ、化石燃料と比較すると割高になることは避けられない。だが既存燃料とのブレンドすることで単価を抑えることも可能だ。
「環境問題に対して、スーパーGTは10年後も音のあるレースをしたいと考えている」。
そう会見の冒頭に切り出した坂東会長は、「それを社会に認めてもらうために義務と責任を果たし、関係者が一丸となって環境対策を推進していく」と宣言。
再生可能燃料の導入とともに、エンジンは出力よりも燃費の向上、タイヤのロングライフ化などのレギュレーション見直し、ファンと共に推進するゴミ削減などの新たな目標を掲げ、環境対策とモータースポーツの共生へ、待ったなしの改革推進に舵を切る決意を新たにしていた。
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