日産の次世代エース、新型アリアを実際に乗って見えた日産の新たな課題と試練

気になった点もなくはないが…

 一方で、気になった点もある。前席での乗り心地は良いのだが、後席はやや硬めで、段差を乗り越えると跳ね上げられることがあった。また、長く続く下り坂などでは、Bレンジやe-PEDALの1つの減速度コントロールだけでやり過ごすのは難しく、減速度を段階的にコントロールできるような装備が欲しいと感じた。

 しかし、後席の乗り心地は、足周りが馴染んでゆけば解消されることがよくあり、大した課題ではなく、減速度コントロールにしても、筆者がホンダヴェゼルハイブリッドのパドルシフトで感動して「あったらいいな」と感じただけなので、こちらも大した課題ではない。前述したように、アリアの本領発揮はこれからだが、このエントリーグレードでも十分に魅力的なクルマだった。

アリアが日産のフラグシップになる!?

 日産はアリアを、「英知を宿したモンスター」と呼んでいる。キャッチーで「やっちゃえ日産」に匹敵するインパクトがある、いいフレーズだ。試乗したB6 2WDでは「英知を宿したモンスター」を味わうことはできなかったが、トップグレードの「B9 e-4ORCE」であれば、味わうことができるだろう。

 トップグレードは、e-4ORCEによる俊敏なハンドリングと、珠玉の完成度を誇る最新の運転支援技術(プロパイロット2.0)、加えて、最高出力290kW(394ps)にもなる強烈な加速。B6 2WDの最高出力が160kW(217ps)であることを考えると、B9 e-4ORCEは2倍近くにもなり、出力の世界観はガラッと変わる。アクセル全開で、頭がヘッドレストへ食い込むほどの強烈な加速を手に入れるはずだ。

 こうなるとアリアは、ジャガーI-PACE(最高出力400ps/最大トルク696Nm)やメルセデスEQC(408ps/765Nm)といった欧州ハイパフォーマンスバッテリーEVと対等に戦えるレベルになる。日産のラインアップのなかでも、性能・価格ともにトップレベルとなるアリアだが、こうなると疑問になるのは、「アリアは日産のフラグシップモデルになるのか」ということだ。

アリアと同じプラットフォームでフラグシップを!!

 先日、日産が「シーマ」と「フーガ」の生産を今夏に終了することが報じられた。フラグシップであるシーマが引退となると、その後を継ぐモデルがどれになるのか気になるところ(もちろん「フラグシップを設定しない」ということも考えられるが)。

 (フラグシップが設定されるのであれば)このアリアをフラグシップとするのか、セダンで現時点はかろうじて生き残っているスカイラインをフラッグシップへと上級移行するのか、スポーツカーであるフェアレディZフラッグシップとするのか、はたまた、新たなクルマを用意するのか。

 アリアの価格は、エントリーグレードのB6が、B9 e-4ORCE Limitedが790万円と、補助金があるとはいえ、フラグシップといってもいい高額車だ。しかし、ボディサイズ的には、アリアはミドルクラスのクロスオーバーSUVであり、アリアをフラグシップとよぶには、少々戸惑いがある。

 筆者は、シーマの引退後は、このアリアと同じプラットフォームを使用した「ラグジュアリーEVセダン」を、日産のかつてのフラッグシップセダン「プレジデント」として登場させ、フラグシップに据えるのが、もっともふさわしいと思う。

 フラグシップは台数が売れるモデルではなく、高品質な素材によるコストアップや、求められる性能も高いため開発費も膨らむが、これならば、存分にコストをかけても、回収できるだけの価格設定も可能だろう。アリアで使われているバッテリーEV専用プラットフォームは素晴らしい。ぜひこれを活かし、アリアよりも上級モデルをフラグシップとして登場させてほしいと思う。

 ただ、アリアやもうすぐ登場すると思われる軽バッテリーEVのように時間をかけすぎてはダメだ。アリアと軽バッテリーEVは、どちらも東京モーターショー2019で初披露され、アリアは2年半かかってようやくデリバリーが始まり、軽バッテリーEVにいたってはまだ正式発表もない(もうすぐ登場するようだが)。

 もちろん、コロナ禍という不運はあっただろうが、それはどのメーカーも同じ。シーマといれかわるくらいのスピード感で登場させることができれば、大いに話題になるだろう。アリアにつづく、今後の展開にも注目だ。

【画像ギャラリー】いよいよ納車開始!! 日産「アリア」の魅力を写真で詳しく!!(32枚)画像ギャラリー

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