■「放置」がフーガブランド失墜の大きな要因
現在は、1980年代や90年代のように、4~5年おきにフルモデルチェンジをする時代ではないが(軽自動車は別)、クラウンやレクサス、メルセデス、BMWといったライバル車は7~8年に一度はフルモデルチェンジをし、商品の鮮度を維持している。
また新型のハイブリッドシステムや、高級車向けクリーンディーゼルターボ、プラグインハイブリッドなど、新アイテムも投入し、リフレッシュをし続けている。
フーガも現行モデル登場から12年、もちろん何もやっていないわけではなく、2度のビッグマイナーチェンジでリフレッシュはされてきたが、パワートレインの変更や改良は行なわれず、ハイブリッドの燃費にしても12.8km/L(WLCTモード)という、競争力のないレベルのままだ。
もちろん、「やりたくてもできなかった」という事情はあったのだろうが、GT-Rのような少数生産のスポーツカーならまだしも、メーカーを代表するラグジュアリーセダンを、これほど長い間、小改良で延命させてきたのは、日産の(フーガというモデルやフーガファンに対する)大きな罪だ。
北米で販売されているフーガのインフィニティ版「Q70」は、2019年末に販売終了としている。Eセグメントの高級セダンが10年もモデルチェンジをせずに並べられていると、ブランド価値に悪影響を及ぼす、との判断からであろう。
■燃費にすぐれるハイブリッドが欲しかった
2015年には、販売が振るわなかった2代目フーガ(Y51)に、フェイスチェンジと同時に、INFINITI(インフィニティ)のエンブレムを与えた。
前年にデビューしたV37スカイラインと合わせてのことだったが、ごく一部の日産ファンが憧れていた、インフィニティバッヂにすることで、フーガにレクサスのようなステータス性をもたせ、販売台数の向上を図ったのだろう。
そんな日産の思惑はあえなく撃沈、2019年12月の改良により、再び日産エンブレムへと戻された。
フルモデルチェンジをする余裕がないなかでの苦肉の策だったのだろうが、ハイパフォーマンスな高級スポーツセダンであるフーガにとっては、かえってステータスに傷をつける出来事となってしまったように思う。
ただ、法人需要は一定数あるフーガなら、フルモデルチェンジまではできなくても、この夏登場する新型フェアレディZのように、型式はそのままで、全く別のクルマのように見せることはできたはずだ。
新型フェアレディZは、中身は現行Z34のまま。Z34の大改良版だ。フーガも、たとえば2代目登場から7年目の2016年ごろに、「大改良」をおこなっておけば、それでも結果は同じだったかもしれないが、最後の花道を用意することくらいにはなったかもしれない。
そして、それ以前に、2代目フーガの早い段階で、FR向けの進化したハイブリッドユニットを追加して欲しかった。
既存のハイブリッドユニットは、3.5Lエンジン+モーターという構成であり(V37スカイラインHEVも同じ)、加速パフォーマンスこそ高いが、燃費性能ではレクサスなどのライバルに置いてきぼりとなっている。
ダウンサイジングをした2.5Lエンジン+モーター、もしくは、エンジン縦置きe-POWERなどを投入できていれば、結果は違ったかもしれないが、日産としては、やりたくてもできなかったのだろう。
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