CX-3/5/8だけじゃダメ? マツダはなぜ似通ったSUVをラインナップしまくるのか?

■マツダはラージ群商品4車種で独自価値を進化させる

マツダは、直6エンジンやPHEV、マイルドハイブリッド、ロータリーエンジン発電技術などを「PHASE2」のマルチソリューションアーキテクチャーとしている。そして2025年以降、さらに「PHASE3」のEV専用アーキテクチャーを追加する戦略(2021年11月決算発表時の資料)
マツダは、直6エンジンやPHEV、マイルドハイブリッド、ロータリーエンジン発電技術などを「PHASE2」のマルチソリューションアーキテクチャーとしている。そして2025年以降、さらに「PHASE3」のEV専用アーキテクチャーを追加する戦略(2021年11月決算発表時の資料)

 ただ、現在ラインアップにあるCX-5と、これから登場するCX-50やCX-60とは、デザインも一貫性があり、大きさもさほど変わらない。クルマにあまり興味がない方にとっては、ほとんど同じクルマに見えるだろう。なぜマツダは、似たようなSUVでラインアップを拡充しようとしているのか。

 ラインアップ拡充は、王道の販売戦略だ。店舗やインターネット上で顧客が見たクルマに気がかりな点があった場合、すぐ横にある別のクルマと比べることができるため、他メーカーへ流れていくことをある程度防ぐことができる。

 既存のマツダ車オーナーに向けても、最新装備となった別のクルマが、新たな候補にあがりやすくもなる。規模の小さなマツダにとって、既存顧客が離脱することはもっとも恐ろしいこと。

 マツダ車販売店(若しくはホームページ)からの離脱を防ぎ、顧客をつなぎとめたい、というのがマツダの目的であり、食い合いを許してでも、ラインアップの拡充を図る、という考えなのだろう。トヨタが展開している「隙間が一切ないフルラインアップ」戦略と同様だ。

 そして、マツダの製造工場のしくみにも理由がある。マツダ車のメイン生産拠点は、広島県の本社工場(宇品第1、宇品第2)と三次事業所(エンジン製造)、山口県の防府工場の2カ所で、年間おおよそ100万台規模の車両製造をおこなっており、そのうち約5分の4が海外へ輸出されている。

 複数車種を同一ラインで組み立てる混流ラインとなっているため、車型が大きく異ならなければ、いろんな車種を効率的に製造する仕組みが整っている。

 また、ボディの基本骨格は同じとして、ホイールベースを少し伸ばして3列シートにしたり、トレッドを広げてボディ拡幅したり、といった小さな差別化であれば、開発車2台を並べて、走りの味付けを作り分けたりと、車両開発を同時進行しやすく、時間短縮(開発コスト削減も)にもなる。

 つまり、効率的に(小さな違いであっても)別のクルマとしてつくるしくみが整っているマツダにとって、似たようなクルマでラインアップを拡充することとは、販売を増やすためにもっとも効率的な方法であり、あえて新型車で用意することで「独自価値」を強めた商品として、差別化を図ろうとしているのだろう。

■「独自価値」の構築には忍耐力が必要か

CX-60に搭載される直6ディーゼルとマイルドハイブリッドを組み合わせたe-SKYACTIV D
CX-60に搭載される直6ディーゼルとマイルドハイブリッドを組み合わせたe-SKYACTIV D

 ここ10年のマツダ車のデザインや技術力は、誰もが認めるところだ。

 しかし、ラージ群商品4車種の目玉アイテムである「縦置きレイアウトの直6エンジン」は、すでにメルセデスやBMWといった欧州車メーカーが、何十年も前から行ってきた戦略である。

 そしてそうしたブランドに突如食い込める程、現在のマツダのブランドはまだ昇華していない。レクサスやトヨタであっても実現できていないハードルの高さだ。

 そのためマツダには「足場固め」として、2世代、3世代にわたりつくり続ける体力と、成功するまで諦めない忍耐力が重要だ。

 仮に、直6搭載の新型車が売れなくとも、1世代で諦めず、次モデルに向けて改善し、顧客へと訴え続ける「心意気」が、信頼関係を築きあげ、そしてそれがブランドをつくりあげる、ということに繋がる。

 1世代で「味見」したくらいで辞めてしまう程度の覚悟であれば、バッテリーEVへと戦略を全力で転換する方がよっぽどいい。

次ページは : ■まとめ

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!