営業利益過去最高の約3兆円達成も……「トヨタがコンパクトカーを値上げする日」

■コロナ禍と半導体不足で部品の需給関係が一変

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、サプライチェーンが混乱するなど様相が一変。部品メーカーのなかからは「原価低減の要求や原材料、輸送費の高騰だけでも苦しいのに、最近のトヨタは急に稼働を停止するため、余計な人件費や在庫の負担も強いられる」といった文句も出ている。

 そのうえ、値上げの要求を飲まないなら、その分供給量を減らすという部品メーカーも現われた。日本製鉄がそうだが、トヨタはそれに対してしぶしぶ鋼材の大幅な値上げを飲んだ。さらに日本製鉄の橋本英二社長は「出荷前には価格が決まらないと経営の見通しが立たない。交渉期間の短縮化と出荷前の交渉妥結について理解を求めたい」と話しているという。

 それは化学メーカーも同じで、「供給不足が続き、自動車向けで値上げが受け入れられないなら、ほかの産業に製品を回したい」という声も上がっている。また、需給の逼迫状況が続く半導体では、安い自動車向けを作るより単価の高いエンタテイメント向けのものを作ったほうがいいというスタンスだ。

■2022年度は営業利益が19.9%減、当期利益が20.7%減と厳しい見通し

 そのため、トヨタではグループで連携し、半導体を中心に在庫を厚めに持つようにしているという。トヨタは必要なときに必要な分だけ納入してもらう「ジャストインタイム」方式を導入して効率性を追求してきたが、それを変更せざるを得なくなった。在庫が何日で消化できたかを示す指標の「在庫回転日数」は、47日と2016年3月期比で約7割も延びた。

 その結果、2022年度の原材料高騰の影響が1兆4500億円の減益要因となり、今副社長も「過去に例がないレベルだ。2021年度の6400億円も過去で一番大きかったが、それを超える非常に大きな影響だ」と頭を抱えていた。

 1兆4500億円のうち、半分が海外の事業体の影響で、残りが日本の事業体になるそうで、「仕入れ先と一体となってどう対応していくかを考えないといけない。使用量を少なくしたり、安価な材料に変えたりする取り組みを進める」と今副社長は話す。

 また、山本正裕経理本部本部長は「収益体質を上げるために長期間やってきたことは続けていきたい。資材価格が上がった時にどういう資材を使ったらいいのか。新しい着眼点も出てくる。いろいろなところでチャンスが出てくると思う」と述べた。

 2022年度の業績見通しは、売上高が33兆円と前年度に比べて5.2%増加するものの、営業利益は19.9%減の2兆4000億円、当期利益が20.7%減の2兆2600億円と増収減益となっている。生産台数については、新型コロナウイルスの影響や半導体の調達状況を織り込み、1月に示した1100万台から970万台に見直した。

トヨタ自動車株式会社の2022年3月期決算説明会から連結決算見通しの要約
トヨタ自動車株式会社の2022年3月期決算説明会から連結決算見通しの要約
トヨタ自動車株式会社の2022年3月期決算説明会から連結営業利益の増減要因
トヨタ自動車株式会社の2022年3月期決算説明会から連結営業利益の増減要因

「いつも以上に2022年度は難しい。グローバル全体でコロナ禍からの回復はプラス要因になるが、資材高を含めたインフレや、それが生活に及ぼす影響などのマイナス要因がある。ウクライナ問題もいろいろな不安がある。さらに半導体の供給制約もあって、プラスマイナスありながら2022年度が進行していく」と長田准チーフ・コミュニケーション・オフィサー(CCO)は述べ、日本はプラスマイナスの要因がイーブンだが、欧州では2021年度実績を下回ると予想した。

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