なぜLPガスだけ緩和対象に!? 燃料費高騰で苦しむ運輸業に見る不可思議な現状

■何のためにタクシー業界を優遇するのか

燃料の高騰に対して緩和策を設けていなかったLPG。タクシーを確保するための手段として、今回の支援策が設けられたようだ(beeboys@AdobeStock)
燃料の高騰に対して緩和策を設けていなかったLPG。タクシーを確保するための手段として、今回の支援策が設けられたようだ(beeboys@AdobeStock)

 冒頭でも書いたように、LPGだけが燃料の高騰に対して緩和策を設けていなかったことと、今後の景気対策と合わせてタクシーを確保するための手段として、今回の支援策が設けられたことになっている。

 この支援策、2021年暮れには国会で成立した予算に組み込まれていたが、目的をわかりやすく言えば、選挙対策、ということになるのではないだろうか。何しろタクシードライバーは、減ったとはいえ30万人規模だ。ドライバー以外の従業員やその家族も含めれば全国で100万人規模の選挙権に影響する。

 タクシー業界だけ、燃料費の高騰に対する軽減措置がなかったことに対して、不公平感を感じていることに対して補助金を出すことで与党自民党はイメージアップを図りたいのだろう。

 トラック業者や我々一般ドライバーに対しては、石油元売り会社へ補助金を支給することで価格上昇を抑制している、というのが政府側の見解のようだ。

 確かに最近、燃料価格の高騰は一服した印象はある。しかしガソリンスタンドを利用する者としては、ガソリンスタンドへの卸売価格は不透明で補助金の効果を実感しにくい。なのでやはりトリガー条項の凍結解除をして欲しいと思うのだ。

 ただ現在の補助金は最高で1Lあたり35円と、トリガー条項で軽減されるガソリン税や軽油引取税の相当分を超えたものになっている。実質的にはトリガー条項を発動させた状態と変わらないか、それよりも安い価格になっているのだ。

 であればトリガー条項を発動したほうがいいのではないか、と思われる読者も少なくないだろう。しかし、トリガー条項の凍結を解除して発動させるには、2つの大きな障害が存在するのだ。

 1つは、このトリガー条項そのものが、かつての民主党政権時代に制定されたものだということだ。民主党は、自民党から政権を奪取するために選挙公約にこれでもかと、国民が喜ぶような公約を並べ立てた。それにより、自民党を上回る票を得て政権与党の座についたのである。

 その中には高速道路の無料化やガソリン税の廃止なども含まれていた。しかし実際に政権を獲得してからは、理想と現実の狭間でなかなか公約の実現が果たせずグダグダの政権運営になってしまったのだった。

 その結果、生み出された妥協案がトリガー条項なのである。つまり今の自民党政権にとっては、苦渋を舐めさせられた黒歴史の象徴でもある訳だ。そんなかつての民主党政権の置き土産を、今がその状態だからと利用する気には到底なれない、というのが本音だろう。

 政治家には意地やプライドも大事だから、そんな気持ちも理解できなくはない。それでも、こうした政治家同士、政党同士のイザコザでとばっちりを受けるのは我々国民であるから、できればイザコザは勘弁してほしいものだ。

 そんなイザコザやプライドをかなぐり捨てても、トリガー条項の凍結を解除して欲しい、という思いを抱くドライバーも少なくないハズだ。

 しかしトリガー条項の凍結解除には、もう1つ問題がある。それは国会で審議を経て法改正しなければならないため、およそ半年程度の期間が必要となるらしい。その間に世界情勢が変化していると審議も混乱して改正案がまとまらなくなる可能性もある。

 それでも石油元売り会社への補助金をいつまでも続けるのは、産業界への不公平感もあって難しいのではないだろうか。なのに政府がトリガー条項の凍結解除に前向きではないのは、一度トリガー条項を発動させてしまったら、再び暫定税率分を徴収するのは難しい、と思っているからだろう。

 というのもこれから先、燃料価格が上がることはあっても、下がることは考えにくい。一時的には現在のレベルより下がることはあるかもしれないが、全体としてみれば燃料価格は上昇していくいっぽうになるだろう。であれば、高すぎるガソリン税を軽減することが絶対に必要だ。

 絵に描いた餅のようなトリガー条項ではなく、ガソリン税の暫定税率廃止を公約に掲げ、それを実行できると思えるような政治家に1票を投じることが、ドライバーにできるせめてもの抵抗となりそうだ。

【画像ギャラリー】自動車ユーザーに等しくかかる問題だ!! 続く燃料費高騰の影響(9枚)画像ギャラリー

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!