「人生100年時代」なんて言葉が当たり前のように聞かれるようになったこの頃。定年や還暦を迎えてからのカーライフはどんなものだろう? ということで、ベストカーweb謹製、60歳からのクルマ選びのポイントをまとめてみた。
……というと、『「安全に!」とか「負担のすくないように!」っていうクルマを勧めてくるんだろ?』などと(ちょっと嫌そうな顔で)言われてしまいそうだが、大丈夫。もちろんそこも押さえたうえで、現代のシニアの方々の時代背景を踏まえたクルマ選びを、自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏にお願いした。
ご自身はもちろん、親御さんへのクルマ選びの参考にもぜひお役立てください!(もちろん安全第一で!!)
※本稿は2018年3月のものです
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:Adobestock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年4月10日号
■シニア世代のクルマ選び、重要ポイント
一般的には、シニア世代のユーザーには運転のしやすいクルマが好ましい。注意力も衰えるから、ボディがコンパクトで視界がいいことも大切だ。ボディが小さければ駐車場での取りまわし性も向上する。腰痛を抱えるユーザーには、着座位置が若干高く、乗降時に腰の移動量が少ない車種のほうが乗り降りしやすい。
以上のような条件を想定すると、実用的なコンパクトカーが該当する。立体駐車場の利用性を重視するなら、全高が1550mmを下まわるノート、フィット、ヴィッツなどだろう。着座位置が適度で乗降性の優れた車種としては、ルーミー&タンクやソリオが考えられる。
運転ミスを防ぐ安全装備も必須条件で、この性能を考えると、ミリ波レーダーと単眼カメラを使うホンダセンシングを備えたフィットは推奨度が高い。フリードも同様の機能を備えて安心できる。
軽自動車という手もあるが、動力性能が不足すると運転しにくい場合がある。全幅が広がることで得られる走行安定性も含めて、コンパクトカーのバランスがいい。
■そんな建前論で今のシニアは納得しない!
理屈では以上のような具合だが、シニア世代の人たちは、これらの車種に本当に満足できるのか。
特に団塊の世代に該当する人たちは、1947〜1950年頃に生まれて今は70歳前後だ。人口の多い世代だから競争に揉まれて育ち、就職した後は1980年代のバブル経済を盛り上げた。スポーツ、音楽、ファッションに対しても若い頃から積極的に取り組んでいる。各種のサブカルチャーに精通した人も多い。
クルマに向けた関心も高く、1970年代の若い頃には、初代セリカやカローラレビンなどを運転してスポーティドライブを覚えた。働き盛りだった40〜50代の頃には、シーマやセルシオを乗りまわしたこともあるだろう。クルマに関する知識と経験が豊富な世代で、運転の上手な人も多い。
そういった人たちに対して、運転がしやすいことを理由に、フィットやルーミー&タンクを推奨するのは失礼な気がする。運転免許返納の前段階という流れを感じさせ、考え方が寂しい。
またセリカやセルシオを乗り継いだクルマ好きのユーザーに、フィットやルーミー&タンクを推奨しても相手にされないだろう。自分で考えてこれらの車種を選ぶならいいが、推奨されると腹が立つのではないか。
そして退職していれば、クルマは仕事ではなくプライベートで使うから運転の楽しさが重要だ。とはいえ仕事をしていないと、現実問題として価格や維持費の高いクルマは難しい。ボディが極端に大柄な車種も扱いにくい。
そうなると比較的コンパクトで運転が楽しく、しかも緊急自動ブレーキなどの安全装備が充実したクルマが注目される。
ちなみにスポーティモデルに力を入れるマツダの開発者によると、MT(マニュアルトランスミッション)の操作には、脳を活性化する働きもあるという。「クルマの運転が老化の防止に繋がるかもしれない」とのことだ。
MT車では急発進事故の話も聞かれないから、運転操作に不安がないのであれば、MT車はいい選択かも知れない。
またシニアは新しいデザインに対する関心も高い。例えば2010年に発売されたジュークは個性的な外観が注目されたが、発売直後のユーザー年齢構成比は50代が23%、60代が21%で中高年齢層が半数近くを占めた。
シニアにはコンパクトでスポーティなデザインを含めて楽しいクルマがふさわしい。
それでは、具体的な車種を見ていこう。
コメント
コメントの使い方