自動車購入時に付属する取り扱い説明書。通称“取説”は、そのクルマに関する基本的な使用方法が記載されているものだが、この取説をきちんと読んでいない人は意外に多い。取説さえちゃんと読んでいれば防げたはずのトラブルもあるので、クルマを買ったらまずはその取説に目を通しておいてほしい。今回は、そんな取説に関するアレコレを紹介していこう。
文/長谷川 敦 写真/メルセデスベンツ、ホンダ、日産、トヨタ、スバル、マツダ、写真AC
【画像ギャラリー】愛車の取説チェックをしていますか?(13枚)画像ギャラリーABS搭載車は迷わずガツンと踏め!
皆さんのなかには「ポンピングブレーキ」という言葉に覚えのある人も多いはず。これはかつて自動車教習所で教えていたブレーキに関する技術で、一気に制動させたい時は、ブレーキを踏み続けるのではなく、踏力を繰り返し弱めるというもの。
実際、ブレーキを強く踏みつけてタイヤをロックさせてしまった場合、タイヤがソリのように滑ってしまって制動力が低下する。そこでタイヤがロックした瞬間に踏力を弱めてタイヤを回転させ、グリップ力が回復したら再びブレーキを強く踏み込む。この動作を複数回行って、結果的に制動距離を縮めるのがポンピングブレーキだ。
近年のクルマで標準装備となったのがABS(Antilock Braking System)と呼ばれるブレーキシステムで、これはポンピングブレーキを自動的に行うもの。これまでは運転者の技能によるところが大きかった制動距離が、ABSによって一律かつ確実に縮むことになった。これが事故防止に効果的なのは言うまでもない。
勘違いしている人も意外に多いのだが、タイヤのスリップを感知してブレーキの踏力制御をコンピューターで行うABSでは、運転手はただガツンとブレーキペダルを踏むだけよく、あとは車体側で最適な制動を行うように調整してくれる。しかし、途中でブレーキペダルの踏み加減を調整してしまうと、場合によっては運転手の操作が優先されてしまって適切な制動が行われなくなる。
これを防止するため、ABS搭載車で危険を察知して急制動を行うときは、昭和時代の教習所で教わったポンピングのことは忘れてとにかくしっかりとブレーキペダルを踏み込むことを心がけたい。つまり、肝心なのは運転手の技量ではなく確実にABSが作動するか点検の際に確認しておくことだ。
ABSについて記載している取説も多い。まずはそこをちゃんと読んで、安全なブレーキ操作を行いたい。
コメント
コメントの使い方