窃盗団か?買取業者か??旧車に挟まる「高価買取」の名刺やチラシの正体とは

■架空の業者はまさに「盗難目的」である

 中古車買い取りや販売の実績がある会社であっても、怪しい会社はたくさんあるし、前述のYさんのように愛車を盗まれそうになった人もいるわけだから、チラシに書かれた内容が全部ウソという架空の買い取り業者は、もはやほぼ盗難目的といっていいだろう。完全に架空の会社である場合も少なくない。住所をたどってみたら何もない空き地だったり、明らかに関係のない企業のビルだったり…。

 また、電話をして「チラシを見て電話をしているんですが」と伝えた瞬間に電話を切られたり、何も話さないうちに切られたりした人もいる。

 では、チラシや名刺をターゲットとなるクルマに挟んでいくことで、窃盗団はどうやって盗難につなげるのか。

「チラシを挟まれたことを知らず1か月クルマを動かさずにその後、盗まれたKさん(シルビアS15)」
「挟まれたチラシをその都度、取り除いていたが2か月くらいして盗まれたHさん(スカイラインR32)」

 など、実際に盗難の被害者となった方々に話を聞いたところ、意外な事実がわかってきた。窃盗団はチラシを挟むことで私たちが想像しているよりもはるかにたくさんの情報を仕入れているようだ。

 まずよく言われるのが、「チラシを挟んで、それがしばらくのあいだ除去されない=オーナーはクルマに乗っていない、また、近くにも住んでいない」だから、そのスキに盗んでしまおう…ということである。

 もしかすると10年くらい前まではその程度の情報収集だったのかもしれない。しかし今は違う。特に、海外での日本車ブームに関係して旧車の盗難が増えている今は盗み方や情報収集の仕方も異なってきている。

 箇条書きでまとめてみよう(すべてのチラシ盗難がこのケースに当てはまるというわけではないが、ご参考まで)。

(1)週ごとに違うチラシを挟んでクルマがどれくらい動いていないかを確認する
(2)2~3週間以上動かしていないクルマはセキュリティアラームも切れていることが多い
(3)狙いを定めたクルマはオーナーがどこに住んでいるかも確認する。そして、生活時間を調査。行動範囲もチェック
(4)チラシを挟みながらどのような防犯対策が行われているかを確認。ハンドルロックやバッテリーが外されていたら、サイズなどを確認して盗む日に専用道具を持参。
(5)チラシを挟むことで、通行人や警察にもし何か聞かれても「買取業者です」と言って逃げられる(チラシを挟む行為じたいはポストにチラシを投函するのと同じなので一般的には不法侵入を問われることはないそう)
(6)もしオーナーと鉢合わせしても、チラシを持っていればその場で買取金額を提示して交渉する。買取業者を装えばそれも不自然ではない(真っ当な買い取り業者には迷惑千万な話であるが、盗難目的のチラシ配布業者はもちろん実際に買い取る気はない)

 要するに、買取業者を装ってチラシを挟みながら、セキュリティ対策の様子や逃走経路などをこと細かにチェックしているのである。

■買取チラシを挟まれやすい地域は決まっている?

 北関東のとある警察署に買取チラシからの盗難について話を聞いた。そこでは少し意外な話を聞くことができた。

 それは「同じ県内でも買い取りチラシを挟まれやすい場所と、まったく挟まれない場所がある」ということである。そして、買い取りチラシで情報収集をして盗まれるのは圧倒的に旧車が多いということ。

「高級車はチラシなんて挟まず盗んでいきますよ。盗みますよ!という警告をする必要もないんでしょう」

 と言われて納得。というのもレクサスやランドクルーザーなどの高級車は、ほぼCANインベーダーかコードグラバー、もしくは一時期よりは激減したがリレーアタックという方法で「簡単に」盗むことができるからだ。

 テレビのニュース番組で高級車が盗難される防犯カメラの映像は、たいていバンパー近辺をゴソゴソやっている。これはCANインベーダーによる盗難の典型的な動きだ。

 その時間は(着手から)わずか5分程度。タイヤロックやハンドルロックをしていても数分で切られてしまう。また、メーカー純正のGPSも当然設置場所がわかっているので真っ先に外される。

 そうなればもう盗み放題だ。高級車の場合、ほとんどが自動車保険(車両保険)に入っているので、持ち主もあまり必死になって探すこともないそう。しかもCANインベーダーでエンジンをかければそのまま自走で逃走する。だからこそ、同じ窃盗団によって1年間で数百台が盗まれるような大規模自動車窃盗事件となるのである。

 いっぽう旧車はどうだろうか。スカイライン、シビック、スープラ、インプレッサ、シルビアなど1990年代~2000年代初頭の国産スポーツカーは前述したようにチラシを挟んで情報収集を行う。

どんなセキュリティがついているか、オーナーがどのような生活時間なのか、また、積載車に載せて運ぶこともあるので、その場合のルートなども下見の時にしっかり調べている。

 そしてチラシが挟まれやすい地域=逃走ルートが確保しやすい、ということもある。Nシステムがなく、「ヤード」に持ち込みやすい場所。これが旧車を盗むうえで重要な条件となる。

 たとえば盗難の多い茨城県でも、水戸周辺は旧車の盗難が少ないが、古河市、境町など千葉県野田市(ヤード数が非常に多く、また日本最大級の自動車オークション会社USS東京があるのも野田市)に近いエリアでの盗難が圧倒的に多い。

 いきなりフレンドリーに話しかけて友達になろうとする窃盗団もいる。仲良くなって居住地やクルマがある場所を聞くのが目的だ。大黒PAや走り屋が集まる道の駅、旧車が集まるイベント会場などで話しかけて来る外国人には特に気をつけてほしい。チラシを挟まれるのと同様、あなたのクルマが狙われていると思ったほうがいい。

 チラシが頻繁に挟まれたり、うっかり駐車場所を知られてしまったりした場合は、駐車監視モード付きのドラレコをつけるか、一時的に駐車場を変えるのも効果があるだろう。

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