売らない! みない! 気構えも重要
自動車のサービス提供には、金銭の授受があり、売り買いが発生する。そのため、買う側が強く売る側が弱い、買ってもらうためには下手に出て、買う側を乗せなければだめだという意見もあると思うが、筆者はそうは思わない。
筆者も前述のとおり、新人時代は顧客よりも弱い立場で営業をしていた。当時教育係をしてくれた先輩から「売れなかった」ではなく「売らなかった」という言葉をよく聞いたのだ。
話を聞けば、顧客の要求が過度すぎて、自分はこの先、付き合っていくことが難しいと感じたから「売らなかった」のだという。「俺は客だぞ」と強く出てくる人に対しては、売る側も拒否権を発動するべきだと、先輩営業マンは話してくれた。
仮に1台その人に売っても、一般的なお客様の3倍以上接遇に時間がかかるなら意味はない。だったらその人へは売らず、別の人を3人見つけて気持ちよく売ればいいというのだ。
この考え方で筆者の売り方も変わった。購入者側は、お店や営業マンの態度が気に入らなければ商品を買わない。であれば、売る側も、買い手が横暴で無理難題を押し付けてくるなら売らなければいい。すべてのお客様に、買ってもらわなければならない、売って差し上げなければならないというのは商売ではないと思う。顧客にも売り手にも、相手を選ぶ権利はあるのだ。
自動車販売、自動車整備を他には真似できない「高度な技術」にまで磨き上げ、サービスの安売りは絶対にしないという姿勢が、今のディーラーには必要だと思う。
クレームまがいの発言で、営業活動がストップしてしまうなら売らない。整備工場が立て込んでいるのを知りながら、無理に「みろ」とか、予約の時間を守らず過度な要求をしてくる人のクルマはみない。こうした判断が、店舗責任者から現場に降りてくるお店は、競争に負けないと思う。
目の前にある不本意な1台よりも、今後生まれる可能性がある気持ちよく販売できる1台を選ぶ、その目と判断力が営業マンには必要だ。自動車ディーラーで働くすべての人が、自身の立場は弱いものではないと認識し、自信と誇りをもって顧客に対して接してほしい。
そうすれば、世界一の接遇に、世界一の技術やスキルが加わる。日本のサービスや販売は、どこから見ても「世界一」である証明になるのではないだろうか。
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