■タイヤの溝の役割
タイヤの溝にはいろいろな目的があるのだが、最も身近に感じられるのは排水性だろう。タイヤが濡れた路面を踏んだ時、水がタイヤの溝を伝って後方へ排水される。
タイヤの溝は、例えて言うなら道路の側溝のようなもので、雨が小降り程度なら問題なく側溝に水が流れていくが、大雨が降って側溝の排水性能の容量を超えてしまうと、水が道路にあふれ出して冠水してしまう。
これがタイヤでいうハイドロプレーニング現象だ。路面の水の量がタイヤの溝の排水能力を超えてしまうと、タイヤと路面の間に水の膜ができ、タイヤは水の上に浮き上がって滑ってしまう。
タイヤの溝が少ないというのは、側溝が浅く、すぐに冠水してしまうということなので、ちょっとした雨でもハイドロプレーニングを起こしてしまう危険性が高まってくるわけだ。
残溝量の判断は案外難しく、タイヤは均等に平らに摩耗するわけではない。わかりやすい例だと、ミニバンや軽自動車のトールワゴンなど重心の高いクルマだと、カーブでタイヤのショルダー部への負担が大きく、ショルダー部だけ先に減っていってしまう。
これは空気圧が少ない場合も起こり、逆に空気圧が高すぎると、タイヤの中央だけが摩耗が進み、ショルダー部だけ溝が残った減り方になる。
■タイヤ交換の目安は何ミリ?
このほか、駆動方式でもタイヤの前後の摩耗のしかたは変わってくる。FFなら前輪が摩耗しやすく、後輪駆動なら後輪が先に摩耗しやすくなる。
摩耗が進んだタイヤを残溝1.6mmギリギリまで使うのは、先に書いたようにハイドロプレーニングが簡単に起こりやすくなるのでお薦めできない。
筆者は、タイヤ交換の目安は一般的には5分山を過ぎたらそろそろ心と予算の準備を……と言うことが多いのだが、実際にハイドロプレーニング現象が起こりやすくなるのは残溝が4mmを下回って3mmあたりからとなる。
新品のサマータイヤの溝はだいたい8mmくらいだから、5分山を過ぎて4分山あたりからが危険領域だ。ここから急激にタイヤは水たまりに浮きやすくなる。
■ゴムそのものも劣化していく!
また、摩耗が進んでくるとタイヤの劣化も気になってくるところ。1年1万km走行と考えた場合、タイヤの摩耗は5000kmで1mm程度とすると、2年で4mmくらいが目安になると思う。
タイヤによっても、クルマの走らせ方によっても、またクルマの重さなどによっても変わってくるから一概には言えないが、タイヤのゴム自体も劣化が進んでくる頃だ。
排水性が足りていてもゴム自体のグリップ性能が悪くなってくると、排水性ではなくウェットグリップが低下してくる。タイヤ自体が路面をとらえる力が低くなってくるわけだ。ドライ路面だとほとんど気にならないが、雨が降って路面が濡れてくると、性能低下は顕著に表れてくる。
ハイドロプレーニングはハンドルが効かず、「ツーッ」と文字どおり慣性方向に滑って行ってしまうイメージだが、グリップが悪くなるとスパッと足元を掬われたように滑る。
そんなわけで、残溝1.6mmギリギリまでタイヤを使うのは危険なのだ。先にタイヤのローテーションにも触れたが、タイヤのローテーションを含め、タイヤの性能をなるべく落とさずに使う方法はある。
前後のローテーションを頻繁に……といっても年に1回、ある程度の距離を走る人でも2回で充分。これだけで前後のタイヤをほぼ均等に使い切ることができる。
コメント
コメントの使い方