インドから発せられた閃光は日本で輝かず「スズキ バレーノ」
次に登場するのは、つい最近まで日本国内でも新車販売していたクルマなので、覚えている人もいるだろう。しかし存在感自体は希薄であり、その名を聞くと「あー、あったね、そんなクルマ」と言ってしまう人もまた多いはず。そのクルマとは、スズキが2016~2020年に国内販売を行っていたコンパクトハッチバックのバレーノだ。
インパクトのある響きを持つ車名はイタリア語で「閃光」を意味するが、まさかスズキの販売陣も、日本市場において車名どおり閃光のように駆け抜けてしまうとは思わなかったはず。実際、国内での販売は不振に終わったものの、決して出来の悪いクルマではなかった。
2015年のジュネーブモーターショーで発表されたコンセプトモデルのiK-2をベースにしたバレーノは、全世界で販売するすべての車両がインド工場で製造されているというのも特徴のひとつだった。これはスズキがインドのマーケットを強く意識していたから。
バレーノは、インドやヨーロッパではコンパクトカーに分類され、実際にプラットフォームはスイフトとも共通だったが、日本国内では3ナンバーとなってしまうサイズであり、これが販売する際のネックになったのも事実だ。
キャビンやラゲッジスペースには余裕があり、パワーもこのクラスでは十分。新車価格は1.2リッターガソリンNA車で141万8000円、1リッターターボでは161万7840円と、コスト面でも優秀なクルマだった。その証拠に、メインターゲットのインドでは月間1万台を超える販売実績を残している。しかし残念ながら、日本ではあまり評価されることはなく2020年で新車市場から姿を消すことになった。
製造拠点のインドをはじめ海外での販売は好調のため現役のモデルとして活躍していて、2022年にはモデルチェンジも行われた。だが、日本での販売はわずか4年で終了し、すでに「覚えてますか?」のカテゴリーに入ってしまった。
車名だけなら覚えてる?「トヨタ ラウム」
日本人にとっては、どこか柔らかさも感じられる車名を持ったクルマがトヨタのラウム。実際にはドイツ語で「空間」を意味する「Raum」にちなんだ車名であり、その車名どおり室内空間を重視したデザインが特徴のクルマだった。
初代ラウムの発売は1997年で、当時のトヨタ製スターレットやターセル&コルサ、カローラIIなどと共通のプラットフォームを使用する新たなコンセプトのモデルとして登場した。
コンパクトカーのプラットフォームを流用しつつも、左右後部ドアにはスライド式が採用され、後部のハイトも高いトールワゴン的なパッケージのラウムは、子ども連れの女性が便利に使えるというのもウリのひとつになっていた。
こうした内容も評価され、初代ラウムは市場にも受け入れられることとなり、2003年の2代目登場まで販売が続けられた。
2代目ラウムは2003年5月から販売が開始された。そのテーマは「クルマにおけるユニバーサルデザインの追求」で、後部スライドドアや横開き式バックドアなどの構造は初代から引き継がれるものの、プラットフォームには2代目ラウム専用品が用いられた。
乗降性を高めるために屋根側が下部より大きく開く前部ドアの構造も初代と同様だったが、前後ドアの間にセンターピラーのないパノラマオープンドアがこの2代目から採用され、使い勝手はさらに向上していた。
初代の良さを残しつつ、さらなる進化を果たした2代目ラウムも比較的息の長いモデルとなり、販売は2011年まで継続された。しかし、3代目ラウムは登場せず、翌年にはラウムの事実上の後継車となるスペイドがリリースされる。ラウムの名称はここで終了となり、残念ながら、その記憶も徐々に失われつつある。
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