CMのインパクトは抜群だった!?「日産 ラシーン」
ラウム同様に耳に残る車名の響きから、「覚えてますか?」と問われれば、思わず「イエス」と答えてしまいそうなのが日産のラシーンだ。船の行き先を示す日本語の「羅針盤」からの造語であるラシーンの車名は、販売当時の日本人に新鮮な印象を与えた。
さらに販売当初に展開されたCMには国民的人気キャラクターのドラえもんを起用し、キャッチコピーは「僕たちの、どこでもドア。」と新たな世代をいくモデルであることを強調して、ボディカラーがブルーのモデルには「ドラえもんブルー」と名付ける念の入れようだった。
このように、大胆な車名とプロモーションが先行してしまったラシーンとは、実際にどんなクルマだったのだろうか?
1994年に販売が開始されたラシーンは、7代目B13型系サニーをベースにした4WDモデル。現代ではSUVに分類されるクルマだが、当時はまだこの呼び方はメジャーではなく、メーカーでも「4WDプライベートビークル」と称していた。
見た目は本格的なクロスカントリーモデルに近かったものの、サニーがベースということもあって最低地上高も低く、激しい悪路走行は想定されていなかった。
とはいえクルマ自体の仕上がりは良く、実際の販売成績も好調だった。だが、ラシーン販売期間後半には日産とルノーの提携によって車種削減施策が開始され、2000年8月に一代限りでシリーズの終焉を迎えることになってしまった。
ラシーンの中古車人気は現在でも高く、状態の良い個体は販売当時の新車価格を超えるケースもあるという。もしかすると、ラシーンを「覚えてますか?」のくくりに入れてしまうのは、このクルマに対して少々失礼になるかもしれない。
覚えているならかなりのマニア?「三菱 カリスマ」
最後は“覚えてる度”の低そうなクルマに登場してもらおう。そのクルマとは、三菱自動車が1996~2001年に国内販売を行っていたカリスマだ。
カリスマは三菱のモデルでありつつも、その出自は少々ユニークだった。設計は三菱だが、製造はオランダにあるNed Carの工場で行われていた。このNed Carとは、三菱と当時提携関係にあったスウェーデンのボルボ、そしてオランダ政府が出資した合弁会社である。つまりカリスマは、欧州で生産された逆輸入車であった。
欧州で製造され、メイン市場も欧州となるカリスマは「リアルヨーロピアンコンフォート」を標榜したモデルであり、ボルボのS40&V40ともプラットフォームを共用していた。車格的には当時の三菱製ランサーとギャランの中間に位置し、サイズも5ナンバー枠に収まっていた。
国内販売モデルの搭載エンジンは1.8リッター直4 SOHCタイプで、途中からは直噴方式のGDIエンジンに変更されている。日本国内での駆動方式はFFのみだが、欧州モデルでは4WDもラインナップされていた。
ボルボの兄弟モデルだったカリスマは堅実な小型セダンであり、内容も決して悪くはなかった。しかし日本での訴求力は低く、GDIエンジンでのテコ入れもむなしく2001年に国内販売が打ち切られた。ヨーロッパでは日本ほど苦戦していなかったが、2004年には生産が終了した。
今回紹介した5台のモデルには、いずれも各車なりの特徴や魅力があった。だが、それが販売実績に結びつくことはなく、どちらもシリーズの継続はならなかった。クルマ好きの人が時折これらのクルマを思い出すことが、せめてもの供養になるだろうか。
【画像ギャラリー】出来も良かった、個性もあったクルマだったのに忘却の彼方に!?(15枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方