115km/hの設定は、誤差を考慮したもの
2010年ごろまでの国産車は、冒頭でも触れたように大半がACC上限速度115km/hに設定されていましたが、これは国内メーカーの自主規制によるものであり、前述したスピードメーターの誤差を考慮したものでした。
ACCの上限速度を115km/hに設定した場合、先の誤差基準の式[10(V1-6)/11 ≦ V2(実際の車速) ≦ (100/94)V1]に当てはめると、スピードメーターの許容誤差範囲は、99.1km/h ≦ V2 ≦ 122.3km/h となります。すなわち、ACCを115km/hに設定すると、最大の誤差でギリギリ法定最高速度の100km/hを下回る。また多くの場合、実際の車速はACC上限速度115km/hより低いので、100km/hを大きく超える可能性は低い、許容範囲という判断をしていたのです。
以上は、国内に限った話なので、輸入車は対象外です。輸入車の多くは、上限速度が180km/hか、それ以上というのが一般的であり、世界標準に対して、日本車はACCの使える範囲が狭いという状況になっているのです。
高速道路の法定最高速度引き上げの動きに対応するもの
2020年12月には、新東名の静岡区間の一部で、そして2022年10月には東北道の一部区間で、最高速度が120km/hまで引き上げられるなど、日本でも高速道路の法定最高速度が引き上げられつつあります。
高速道路を120km/hで走行できるようになると、上限設定速度115km/hのままでは十分な機能が発揮できなくなります。昨今の新型車でACCの上限設定速度が135km/hのモデルが増えてきたのは、この高速道路の法定最高速度引き上げの動きに対応するもの。「135km/h」というのは、先の誤差基準式に準じて余裕も持たせた設定で、スバルの「レヴォーグ」や「WRX」、日産の「スカイライン」、軽でもホンダ「N-WGN」は、上限を135km/hまで引き上げています。
さらに、「レクサスLC」やトヨタ「カムリ」、マツダ「CX-8」は、上限を180km/hに設定しています。180km/hまで上げると、さすがに日本で使う機会はまずありませんが、日本車であってもほとんどのクルマは、海外への輸出を視野に入れて開発されています。そのため、海外のライバルメーカーに負けないような高速走行の性能を確保することは重要。海外のクルマの多くが、上限設定速度180km/hを超えている以上、使う機会がなくても日本車も同等以上にして、国際標準に合致させる、という自動車メーカーの考え方で決めているものと考えられます。
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たとえ法律で許されない性能が発揮できるとしても、機能として持つことは違法ではありません。カタログの最高速度が日本の法定最高速度を大きく上回るのも同じで、クルマに制限をかけるのではなく、ドライバーの自主性に任せる、最終的に責任を負うのはドライバー自身である、というのが一般的な考え方なのです。
【画像ギャラリー】なぜ180km/hまで設定できるの?? ACCが制限速度以上に設定できるワケ(7枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方今乗ってる車の設定が115Km/h(実速度110)までしかないので新東名では足りないけど足を休ませられるし絶対に速度違反しない利点が勝ってしまってそのままで使ってる。
そういう人もある程度はいるんだろうな。