■コンパクトカーの価格で手に入るSUV
ライズが人気を高めた一番の理由は、先に述べたコンパクトSUVの特徴を明確に備えることだ。全長は3995mm、全幅が1695mmのボディは、SUVでは貴重な5ナンバー車になる。最小回転半径は4.9~5.0mに収まり、視界も優れているから、混雑した街中や駐車場でも運転しやすい。
価格も割安だ。直列3気筒1.2Lのノーマルエンジンを搭載する中級グレードのGは、価格が185万7000円(2WD)に収まる。ヤリス1.5Gに近い設定で、SUVをコンパクトカーに近い価格で手に入れられる。
また、エンジンで発電機を作動させ、駆動はモーターが受け持つ日産のe-POWERに近いハイブリッドも2021年11月に追加した。装備の近いZ同士で価格を比べると、ハイブリッドの価格アップは28万9000円だ。
ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差は、マイルドハイブリッドを除くと一般的に35~60万円だから、ライズは割安に設定している。そのためにライズの販売総数の内、約50%をハイブリッドが占める。ライズはSUVとしては価格が割安で、ハイブリッドの買い得度も強いため、息の長い人気を保っている。
■人気の秘密はSUVらしいルックス
このほか外観も人気の秘訣だ。ボディサイズが近いヤリスクロスは、フロントマスクやボディ側面の形状がワゴンに近い都会的なデザインだが、ライズは少し古典的でアウトドア指向を感じさせる。RAV4やカローラクロスに近い。
ちなみに、ロッキーのプロトタイプは発売直前に開催された「東京モーターショー2019」に出品された。
この時に説明を担当した開発者は「来場された多くのお客様から、『ロッキーにマニュアルトランスミッション車はないのか』と尋ねられた」と述べた。つまり、ロッキー&ライズの外観と雰囲気には、マニュアルトランスミッションも似合うわけだ。
特に最近は、ヤリスクロス、ヴェゼル、ハリアーのような都会的なSUVが増えた。その結果、SUV市場に原点回帰のアウトドア指向が見られる。前述のRAV4やカローラクロス、さらにジムニーやランドクルーザーの人気も従来以上に高い。
輸入車ではJEEPラングラーが堅調で、2021年の登録台数は、メルセデスベンツAクラスを上回ってVWポロに迫るものとなった。
前述のようにSUVでは居住性や積載性が優れていることも特徴で、それはライズにも当てはまる。
全長が4m以下のコンパクトSUVだが、身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先には握りコブシひとつ半の余裕がある。充分な広さとはいえないが、全長が4mを下回ることを考えると空間効率は高い。ファミリーカーとしても使いやすい。
■SUVとコンパクトカーのいいとこ取り
しかもSUVだから全高にも1620mmの余裕があり、後席の床と座面の間隔を十分に確保できた。そのために後席に座る乗員の足が前方へ投げ出されにくく、手前に引き寄せられる。前席の下側に足が収まりやすいこともあり、ボディサイズの割に後席の居住性が優れている。
荷室の使い勝手は、全長が短いからタップリとは積めないが、リアゲートの角度を立てたから比較的背の高い荷物も収まりやすい。
以上のようにライズは、貴重な5ナンバーサイズのSUVで運転がしやすく、外観にはSUVの本質を突いた野性味も感じられる。ボディサイズのわりに後席と荷室の広さにも余裕があり、ファミリーカーとしても機能する。価格はヤリスのようなコンパクトカーに近く買い得だから、好調な売れゆきに至った。
さらに販売面の優位性も見逃せない。トヨタは全国に約4600店舗を展開しており、今は全店が全車を売るから、ホンダの約2200店舗、日産の約2100店舗と比べて販売網は2倍以上だ。
しかも最近のホンダでは、国内で新車として売られるクルマの50%以上が軽自動車になった。日産の軽自動車比率も40%前後に達する。その点でトヨタは、一部のダイハツ製OEM車を除くと軽自動車は扱わず、小型/普通車のメーカーとされる。そのためにコンパクトSUVの需要がライズに集まった。
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